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ブランド? 縫製(生産国)? 素材?...色んな価値判断があるかと思います。 それぞれ一長一短がありますが、ここでは特に生地に的を絞って良い生地の見分け方を紹介します。 生地を取り扱って110年の当社だからこそ是非皆さんにご紹介したいことです。 さて、 生地の善し悪しを判断するとき皆さんは何を基準にしますか? 一般的に皆さんは次の3つで判断されるのではないでしょうか? 1) 生地メーカーのブランド 2) 質感・触感 3) 光沢感 どれも全て正解です。 ですが、それぞれ長所・短所や落とし穴がありますので以下を参考にしてください。 |
■ 生地ブランドの落とし穴 ■
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スーツにはよく内側にブランドタグが付きます。 一般的にタグは、縫製したお店やブランドのタグと(生地の)メーカータグですが、生地メーカーと言ってもいくつかのカテゴリに分かれますので知っておかれた方が良いでしょう。 < タグの色々 > 主としてインポート物ですが、ブランドタグを付けるメーカーには次の2つがあります。 ● ミル系メーカー >>> ミルとは生地そのものを自社にて直接織っているメーカーのこと。 著名なブランドではゼニアやロロピアーナ、ハリスツイードなどが良い例でしょう。 こういったメーカーはもともとが生地織りを主体にした会社ですので素材に対しては非常にシビアで良い商品を提供します。 反面、個別企業の特徴や地域性が現れすぎて総合的な生地の展開が出来ないのが弱点です。
● マーチャント系メーカー >>> マーチャントとはいわゆる「商社」 つまり自社では直接生地を製造しない代わりに商社として世界中から良い素材を集める力がある会社。 具体的には、英・仏ドーメル社、スキャバル社、伊ドラッパーズなどが挙げられます。 この種のメーカー(企業)は素材への愛着や思い入れは低くなりますが、広範囲な生地を世界中から集められるのでバリュエーションが魅力的です。 弱点は、(またあくまで一般論ですが...)マーチャント系の素材の方が中間マージンが掛かるだけやや割高になりますので同じ価格でミル系メーカーと比べると質はやや劣ることが多いようです。 ● ライセンスだけのメーカー >>> 昔は直接生地を織っていたのに...いつの間にか後継者難からか?直接織らずライセンスを他社に供与してブランドだけで生きているメーカーもあります。 こういったメーカーはブランドポリシーはきちんと守りますのでイメージが大きく変わることがない反面、逆に素材への愛着が薄れあまり良い素材にならないことが多いです。
● その他...間違えやすいこと >>> ブランド物には大抵タグが付いていますが、概してそのタグからはブランドメーカーが直接生地を織っているのか、それともスーツ全体をデザインしただけなのか分からないことがあります。 この辺は残念ながら個別に調べるほかありません。 このため、スーツの善し悪しにおいて、素材は重要なファクターであるにも関わらず、有名ブランドの名前だけで買い求められるとメーカーが分からず実は素材はあまり良くないということもありますのでご注意下さい。 |
■ 質感・触感 ■
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>>> 私達が商品を仕入れるに当たってはこの質感・触感を第1に考えていますが、質感・触感は皆さんも経験があろうかと思いますが、直接着心地に大きく影響します。 その上で触感・質感を左右するファクターは何だと思われますか? SUPER***'Sという表示や糸番手でしょうか?もちろん原材料も影響します。 ここではそれぞれのファクターについて簡単に紹介します。 < 生地の織り方 > 素材の善し悪しは原材料でも決まりますが、実は織り方によっても随分変わります。 起毛感を出した生地、ツルッとした光沢感のある生地、打ち込みが甘くフワッとした生地。 色んな風合いの生地がありますが一概に善し悪しは決められません。 例えば・・・ 打ち込みの甘さは良い生地? 生地は基本的には縦糸横糸が交差して織られます。 それではその縦横の間隔をわざと大きくしたら? 肌触りは甘くなり、原材料の使用も少なくて済みます。 果たしてこれが良い生地と呼べるでしょうか? 硬い・重量感ある生地はダメ? 英国系メーカーに多いですが3プライの生地などどっしりとした重量感ある生地もありますよね。 果たしてこれは生地として良くないのでしょうか? いえ、良い素材をたっぷり使用しているのだったら正反対でしょう。 皆さんの中に冬物素材でSUPER***'Sだから...と思って買ったら意外と寒かったというような記憶はありませんか? < SUPER表示 > よくSUPER100'S等の表示をした素材があろうかと思いますが、このSUPER***というのは重さ1キロの原毛から何キロの長さの糸を引くことが出来るかという基準です。 従って数値が大きくなればなるほど原毛1本当たりの太さは細く、長さは長くなりますのでデリケートな素材になると言うことです。 ただ、ここで間違いやすいことを2点 1つはSUPER***'Sと表示されていてもその生地全体の糸がSUPER***'Sで出来ているとは限らないと言うこと。 残念ながら昨今の世界的なコスト削減の影響はこういったところに出ていて、SUPER***'Sの割にあまりしなやかでないな?という素材は概してSUPER***'S糸の使用量が少ないものが多いです。 2つ目はSUPER***'sといっても実際重さ1キロの原毛のものを***Kmの糸にしている訳ではないと言うこと。 もしこんなコトしたら着ている内に糸はブツブツ切れてしまいます。(笑) そして、肌触りの善し悪しの基準といえば皆さんはSUPER***'Sなど糸の太さや糸番手についてご存じかと思います。 SUPER100'Sを越えるとヌメッとした触感と共に素人目にも糸や生地組織の緻密さ(しなやかさ)ハッキリ分かるようになりますがこれだけが全てではありません。 < 柔らかい生地ばかりが良い生地ではありません。 > 肌にヌメッと吸い付くような柔らかな生地。 冬物ではだれでもこれを楽しみにスーツを買われていると言っても過言ではないでしょう。 でも、柔らかい生地ばかりが良い生地とは限りません。 例えば、夏物の生地などはヌメッとした触感は肌にぴたっとくっついてしまい嫌がられることもあります。 このような時期は逆にサラッとした触感のモヘヤがもてはやされますし、独特の湿った触感が好まれるシルクなどもやはり高級素材です。 大切なのは素材、それぞれの特徴をしっかり見極めることではないでしょうか? 生地のことをもっと知りたい人はこちらへどうぞ!
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■ 光沢感・ドレープ感 ■
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>>> 何とも言えないドレープ感のあるスーツ。 機能上自然とシワがよる腕や袖、立ち振る舞いの際に出来るスーツの凹凸、こういった場所には生地のしなやかさから来るドレープ感や光沢感が映えます。 触感や素材感はスーツを着る本人しか分からないことですが、このドレープ感・光沢感は第三者がパッとスーツを見たときにすぐ分かります。 この光沢感・ドレープ感は、まず第1には原材料素材の善し悪しにより大きく左右されますが、時として同じSuper***'Sというそこそこの素材なのにメーカーが違うだけで片方に光沢感があり、片方には光沢感がない時があります。 そのような時は、普通の人には分かりにくいですがメーカーによる、糸から生地に織る段階の最終工程(フィニッシング)での技術に差が結果となって現れていることがあります。 例えば、伊ロロピアーナ社のFourSeasonsのシリーズなどは素材こそSuper110'S〜120'S程度(!)ですがその光沢感はその辺のSuper120'Sと比較するのは可愛そうです。 ただ、この辺は良く解らないメーカーの技術のウンチクを覚える前に、生地や製品を触って凹凸を付けたり、肩に当ててちょっと動いてみることの方が百聞は一見に如かずで良く解るのではないでしょうか? |
■ 最後に・・・ ■
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お読みいただくとお分かりになられたかと思いますが、良い生地の見分け方というきちんとしたルールはありません。
分からないことを気軽に聞けて、場合によっては反対の意見も言ってもらえる。。。 別にそれはテーラーでなくても、既製服のお店でも良いでしょう。 大切なのは皆さんのスーツに求める物イメージ(雰囲気)を具現化するためのアドバイザーではないでしょうか? 当店はこういったことを気軽に聞けるようなお店になりたいと考えています。 |