オーダースーツのヨシムラ >> 新着情報 >> 裏地(うらじ)って何?
2016年3月9日更新
「今年の研修旅行はどこにしようかなぁ」
「そういえば、今年キュプラ裏地新しく仕入れたから、そこの工場なんてどう?」
そんな、会話から生まれたキュプラ裏地の工場見学を含めた社員研修旅行。
とても、勉強になり、是非とも皆さんにもお伝えしたく、この場をかりてご紹介させていただきます。
皆さん、「裏地(うらじ)」ってご存じですか?
「素敵な裏地ですね」なんて、女性に褒められると、嬉しい気分になることも。
そんな、裏地とは、このWEBページを見られている皆さんならご存じかと思いますが、読んで字のごとく「上着の裏に付ける生地」です。
私共のようなオーダースーツ・オーダーコート等取り扱っていると、スーツやジャケット、コートには裏地は付いているのが“当たり前”という認識なのですが、なんで付いているの?という疑問から、具体的にどんな効果があるの?や、どんな風に出来てるの? 等々,,,
裏地と一言で言っても、なかなか掘り下げてみると、色々とアリそうです。
それでは、どうぞご覧下さい。
そもそも裏地って必要なの?という疑問について、裏地の必要性についてご紹介させていただこうと思います。
さて、どんな効果があるのでしょうか?
(そんなの分かりきってるよ!なんて思う方もいらっしゃるかもしれませんが、以外に知らないことも多いかもしれません。)
>>>一番メジャーな答えがスベリの良さではないでしょうか?
そうです。
表の生地は基本的にスベリの良さを目的にはしておらず、機能性やデザイン、しなやかさ、ファッション性が目的です。その点、裏地の役割は、「着たり脱いだり」を楽にし、動く際にも表地の影響を受けません。
裏地が無いのと有るのでは、全く着心地が違うのです。
>>>こちらは、上記スベリの良さと同じような理由ですが、表の生地側から立ったモノの見方であり、裏地がなければ肌と表地との摩擦が大きくなるため、生地にも負担が掛かってしまいます。
人の感覚では、着心地の良さ(摩擦の少なさ)が、生地側としては、負担の少なさ(同じく摩擦の少なさ)になり、スベリの良さが良くなれば良くなるほど摩擦が減り、比例して両者(表の生地と裏地)にとってメリットになるのです。
>>>上記同様スベリの良さの関係で、裏地がなければ表の生地がいたるところで体に引っかかり、思い通りの形になってくれません。
着用した姿が美しくなるように、裏地が存在しているのです。
裏地の必要性を上記でご紹介させていただきましたが、実際にどんな素材が使われるの?という疑問が沸いてきます。
裏地うらじと言えど、素材によって大きく「特性・着心地・効果」が異なってきます。
最近使われている裏地には、大きく分けて素材の種類が2種類ございます。
それは、「合成繊維(主にポリエステル)」と「再生繊維(主にキュプラ裏地)」です。
昔は、もう一つ「天然繊維(アルパカやシルク)」等高級素材の裏地があったのでですが、最近では、もう殆ど使われておりません。
機能的な面を比較的安価な「合成繊維」と「再生繊維」で補えるようになったからです。
主に裏地に使用される合成繊維はポリエステルがメインです。
この合成繊維は、石油を原料とした高分子繊維のことを指し、ナイロンが世界初の合成繊維でした。
特徴としては、強度の面では優れているものの、吸湿性(水分・汗を吸い取ってくれる作用)に欠け、あまり肌触りも良くなく、そして静電気が発生するというデメリットがあります。
<良い点>
・耐久性がある
・メンテナンスフリー
・水洗濯性
<良くない点>
・吸湿性が著しく低い
・肌触りが悪い
・重い
・静電気を発生させる
(防静電気のポリエステルもありますが、天然繊維や再生繊維とは比べモノになりません。)
獣毛繊維として、アルパカが使用され、主にタテ糸に綿を使用しており、アルパカ100%の裏地はより高級な裏地とされていました。
また、シルクは、繭繊維としてカイコの繭(まゆ)を解いて糸にしており、今でも高級素材としては使用されていますが、耐久性が低く、取り扱いも非常にデリケートな為、最近は使用されることはほとんど無くなりました。
何れも、天然繊維は吸湿性があり、静電気を起こりにくくする効果があり、着心地はとても良いのですが。。。
<良い点>
・吸湿性が高い
・肌触りが良い
・静電気が起こりづらい。
<良くない点>
・価格が高い。
・現在では入手が困難。
この再生繊維とは、「天然繊維を溶かして再生した繊維」のことを指します。
たまに耳にするレーヨンは、植物繊維(セルロース)を溶かして作っています。
そして、最近では裏地として多く使用されている「キュプラ」という繊維は、綿花(コットン)の産毛を原料にして再生させた繊維のことです。
特徴は、天然繊維の特徴である、吸湿性・肌触り・軽さを引き継いでおり、静電気も天然繊維同様起きづらい素材であるため、最近ではこのキュプラ裏地がメインになってきております。
<良い点>
・吸湿性が高い
・肌触りが良い
・静電気が起こりづらい。
・発色が綺麗
・薄くて軽い
<良くない点>
・特に無いですが、ポリエステル等の合成繊維と比べると強度に劣ります。
と、この様に大きく分けて3つの種類があり、それぞれ特徴が異なっていますが、再生繊維である「キュプラ」の裏地は、とても高価である天然繊維の良い特徴を実現出来ているのがお分かり頂けると思います。
では、これから再生繊維のキュプラ裏地の出来上がるまで、をご紹介いたします。
コットンリンター(綿花のわた)を原料にしたセルロース繊維を糸にした状態です。旭化成せんいより入荷し、皆さまの上着の裏にお付けするキュプラ裏地の元となる状態です。ここから、糸を撚って、染めて、織って、仕上げて、検品して裏地の生地の状態まで進んでいきます。
糸を撚る(捻りを加えることにより、糸の強度を増す)工程です。1m辺り、タテ糸で650回、ヨコ糸で300回行っているようです。
糸を撚ることにより、耐久性を増しハリをもたせます。スーツでも、夏物の糸は、撚りを強くしハリを出すことにより「サラッとした清涼感のあるタッチ」になります。
撚った糸を染める工程。綺麗な色を出すためにもとても重要な工程です。
もちろん、使用している色の数だけ染色を行っており、ストライプの線の色の場合もその分だけ染めています。
生産管理も大変そうですね。。。
画像左が、染色開始直後の状態で、画像右が染色後乾燥させている状態です。
タテ糸を柄の通りに並べて、巻き取る工程。
タテ糸の数は、ストライプで5,844本、ジャカード織で7,000本の糸を一本一本柄に合わせて整えていきます。
一本でも間違うと柄が変わってきてしまうため、ミスが許されず、とても神経を使う工程です。
既に柄物のキュプラ裏地をオプションで頂いた方は、その裏地をもう一度ご覧ください。
職人が一本一本タテの糸を揃えているんです。
「皆さんに喜んでいただくのが何よりの喜びです。」と仏のような顔が忘れられません。
並んでいるタテ糸を間違いの無いよう織機に載せ、ヨコ糸をセットし織る。
ストライプで50m/1日、ジャカードで25~30m/1日の速度で織っています。
こちらも全くミスが許されない工程です。
しかも、ここの工場では只今発注が多く、織機3台を24時間体制で動かし続けています。
この道うん十年の職人さん曰く、「夜に織機が止まると音が少し変わるから、すぐ起きちゃうんですよねぇ」と工場の隣に自宅がある職人さんならではのお悩みを笑顔で話されていましたが、熱意ある目が印象的でした。
織り上がった生地を最終的に柔らかく、しなやかにし、生地を整えるために仕上げを行います。
熱をかけたり、ロールで巻き取ったりととても大きな工場でとてもびっくりしました。
ここでは、これまでの工程を最終的に完成させる工程であるため、傷一つ付けられません。
さまざまなブランドで使用されている裏地の仕上げをこの工場でになっています。
生地に傷や汚れがないか、最終チェックする工程です。
皆さんご存じでしたか?
生地の検品は、自動化するのが難しく「人の目」によって検査を行っているのです。
私たちも後ろでその光景を見ていたのですが、何も見えないような所まで、糸のズレを発見し印を付けていくその姿は、とても人間業とは思えませんでした。。。
裏地の性質によって変わる!?ジャケットやコートの汚れ方!!
みなさん、ご存じの方は少ないのかもしれませんが、、、
上記■2.裏地の種類■にて繊維の種類の特徴でご紹介させていただ「静電気」は、表の生地(コートやジャケット)の汚れ方にとっても関係が深いんです。
静電気は、2種類のモノが摩擦(こする)した際に生じ、帯電されます。
よくドアノブを握ろうとしたときに「パチッ」と痛みを生じることもありますよね。
あれは、帯電された静電気が放電される現象です。
その帯電された状態では、空気中の埃やゴミを引きつけて洋服に付着してしまうため、静電気を発生させやすい裏地は、必然的にゴミがつきやすく、静電気を発生しずらい裏地はゴミがくっつきづらくなることから、長く綺麗にご着用されたい場合は、キュプラ裏地にした方が良いということです。