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オーダースーツのヨシムラ
新着レポート

 オーダーいろいろフル・イージー・パターン?

 今回の新着情報では皆さんが知っているようで知らないオーダースーツのあれこれをご紹介します。
オーダースーツには一般に「フルオーダー」「イージーオーダー」「パターンオーダー」と3種類があるんですが違いをご存じですか?
「最近よく聞くのがパターンオーダーだね!」
「イージーは仮縫いなしだから・・・」
「フルオーダーは高いよね。」
なんていえる方は通な方ですね。
でも違いとなるとやはり専門的になりますから業界人でないとわからないと思います。
簡単に3つのオーダーについて書きますと次の通りです。

 1.フルオーダー・・・お値段15万円位〜

 フルオーダーは字の通り何から何まで指定が出来る最高級のオーダーメイドスーツです。何から何までというのは例えば生地はもちろんのことボタン・糸・裏地・芯地といった材料からデザインの型紙まで全てがオリジナルの一点ものです。
1着のスーツを作るのにお客様と希望のデザインの打ち合わせをして、採寸をして、型紙を起こし、仮縫いをして、もう一度最終チェックをして最後に仕上げの縫製をするといった作業をほとんど全て手作業で行う、職人芸です。
ですから希望のデザイン等があればそれがどんなに斬新でも作り上げる技術を持ってます。
写真は仮縫い段階のスーツですが、このように白い糸を付けて(これをしつけ糸といいます)だいたいのシルエットを作り最終的に何処をどれぐらい詰めて(または減らして)と完璧なまでのこだわりスーツを作ります。
ですからお値段も1着最低でも15万円位は頂かないと割にありませんし、正直なところ職人さんがオーナーを兼ねているお店でないと職人の確保などなかなか経営が難しいのが実情で今はごく一部の本当の技術を持つ人のみがお店をやられています。
 また誤解をまねくことをあえて承知の上で私見を言うのであれば、(あくまで私個人の考えですよ)全てが古くさく見えるのがフルオーダーの一番悪いところだと思います。

ではいったい何が悪いか?

  1. 職人の技術に頼りすぎ、伝統を重んじるあまりデザインの潮流の勉強不足
  2. 体型にぴったりと合うスーツが一番と思いすぎ時としてゆったりとしたスーツを求める人にこれがフルオーダーだといわんばかりにピチピチのスーツを作りたがる。
  3. 職人の技術の差が出来上がりに大きく左右しすぎ、安心して仕事をお願いするまでに信頼関係を築くには時間がかかりすぎる。

 当社(生地の卸売り屋)にとってこんなことを書くことはお客様(テーラーさん)を敵に回すことにもなりかねませんが、業界の発展のためあえて辛言しますと、天下国家を言うことばかりで何も動かない・出来ない人が多いです。勉強不足というのもこんなところからきています。
さて、話がずれましたので本題に戻りますと

 2.イージーオーダー・・・お値段(一般に)5万円位〜

 個別の体型にフィットするといったフルオーダーの良いところと基本形を持つという既製服の良いところを組み合わせたのが「イージーオーダー」です。
当社のお仕立てもこのイージーオーダーを利用していますがこれの良いところは消費者の求めるニーズの90%を満たしながら工場生産のラインに乗せることでフルオーダーの価格の半分以下にコストを抑えることができることです。
 確かに一人一人型紙を起こすフルオーダーが無限大の可能性があるとすれば、イージーオーダーは基本の型紙(トラッドスタイル・ソフトスタイル・ブリティッシュスタイルなど)がある程度限られてしまいますが選択肢は狭いかもしれません。
それでも現在イージーオーダーが出来る工場では各社4〜5種の型紙は持っていますので、当社のようにそのような工場と4〜5社取引をしていれば4×5=20通りの基本デザインの展開が出来ますので、これでほとんどのオーダーのニーズを満たすことが出来ます。
 例えば9月の「お客様いらっしゃ〜い」でご紹介したHirostoneさんの「カブラ」もイージーオーダーの出来る工場4社にヒアリングしましたが出来るのは1社だけでした。
でも1社出来れば十分なのです。

 3.パターンオーダー・・・お値段4万円位〜

 最近流行なのがパターンオーダーなるものです。
こちらはオーダーという名は付いていますがどちらかというと既製服に近いコンセプトから作ったものです。
皆さんもご存じの通り最近の既製服は非常に優れていて、我々オーダー屋も見習うべきところがたくさんあります。また既製服は大量生産大量販売のため安価に縫製することも可能です。
そこで「基本のデザインの形までは既製服のラインで作ってしまいこまかなディテールの部分だけ個別のオーダーを伺おう」としたのがこのパターンオーダーでいわば決まったパターンにオプションを付けていくのがこのオーダーの特徴です。
ですから最近流行りの「本切羽」「チェンジポケット」「ハッキングポケット」「ステッチ」などの比較的簡単なオプションはパターンオーダーで十分こなせますので、パーツとしてのオーダーを求める方はこちらが良いと思います。
 ただ、このパターンオーダーでは体型を補正することは全く出来ませんので、基本の体型はAB体とかA5といった既製服体型から選ぶことになりますので、標準体の方にはおすすめですが、既製服が合わない方にはやはり不向きです。
 またこのパターンオーダーの良いところは前述2オーダーが約3週間ぐらいの時間がかかるのに対しわずか1週間で出来上がるので早くそして、(主として中国・韓国縫製のため)安価に提供できるのも強みです。
 お気軽にオーダーを楽しむオーダーの初心者の方または標準体型でオーダーする必要のない人にはとても良い選択だと思います。


最後に一言・・・
 あんまり批判的なことを書くと後で業界でいじめられるんですが・・・
皆さんがオーダーでスーツを作るときはそこのお店が1.2.3 のどれで作るかを必ず聞くようにしてください。そうすればどんなに高くてもフルオーダーなら手間暇がかかっているのですから納得できるでしょうし、安いならある程度は妥協が出来ると思います。
 私たちの業界で一番たちが悪いのは1.の振りをして2.で仕立てている方たちが多いとことです。
 昔よく「松坂を少しでも通れば松坂牛!」ということがありましたが、こんな感じで技術のない2代目テーラーさんがフルオーダーの振りをしてイージーオーダーにしているケースがとても多いです。
 当社ははっきり申し上げて、フルオーダーの縫製技術は持ち合わせておりません。しかし工業化の中でフルオーダーより早く・安く生産でき、フルオーダーのニーズの90%を網羅しているイージーオーダーを採用して、このおかげでフルオーダーで20万かかるものを高くても6万円位で提供しています。
これはこれで良いことではないのではないでしょうか?
いけないのはやはりお客様に嘘を付くことだと思います。