皆さん、スーツのクリーニングってどうされていますか? 一般的には、クリーニング屋さんで行うドライクリーニングですよね。 でも、それがどのような物かご存じでしょうか? なかなか教えてくれる物ではありませんのでまずはそこからご案内
普段私達が何の気なく利用しているドライクリーニング、これは石油系の溶剤を使って洗浄しています。 このため、洗剤が石油系(つまり油)ですから、油脂系の汚れには効果的で食用油・機械油・ペンキ・口紅・ボールペン・マジックインキ・靴墨などは良く落ちます。 でも、この↑具体例↑ 皆さんの生活の中で頻繁に付く汚れでしょうか? ビジネスマンにとってはボールペンの跡などは良くありがちですが、それでも薄グレーのスーツならいざ知らず濃紺スーツにはあまり意味がないのではないでしょうか? 水洗いで落ちる汚れについては後述しますが、このようにクリーニングではそれぞれの方法の違いにより落とせる汚れと落とせない汚れがあることを知る必要があります。 また、ドライクリーニングは既に説明したように石油系溶剤で汚れを落としますが、その溶剤は一回ごと使い切りでしょうか? いえいえ、実は何度も使い回しています。 イメージすると、天ぷら油や健康ランドの循環湯システムです。 つまり、フィルターを使って濾過して何回も繰り返し使うことでコストを下げているのです。 日曜日の夕方の健康ランドのお湯はどこかドロっとしていますがあんな感じです。 以前、クリーニング専業者さんに直接伺いましたが、悪質なクリーニング屋の場合はその溶剤がコーラのような色をしているそうです。 また、この様なクリーニング屋では白のセーターをクリーニングすると逆に薄汚れて帰ってくるそうですよ。 (若干、ドライクリーニング業界を悪く言っておりますが、業界関係者の方悪しからずご容赦ください。)
それでは汚れにはどんな物があるのでしょうか? 今回はドライと水洗いの比較が重要ですので、分けて表にしてみました。
ドライクリーニングと水洗いではここが違う
食用油・機械油・ペンキ・口紅・ボールペン・マジックインキ・靴墨
回数を重ねると服地が目詰まりし風合いを損ねることがある。
型崩れが少なくプレスしやすい。
汁・お小水・食べこぼし・お茶・コーヒー・果汁・醤油・ソース・血液
服地の風合いを損なわず天然素材が甦る。
プレスに技術と手間を要する。
いかがでしょうか? どちらかというと、私達の日常生活では水洗いで落とせる汚れの方が、ありがちな汚れではないでしょうか? ふと、考えてみるとこんな経験をしたことありませんか? 長く使っていたスーツで、脇の辺りに汗ジミが出来てドライクリーニングで落ちない××× ...これは上記の表に当てはめるとごくごく当たり前のことなんですね。 水溶性の汚れですから...
汚れの種類を考えてみると水洗いの方がドライより落とす汚れとしては日常生活に近いのに、それでは何故水洗いが普及しないのでしょうか?
洗剤の問題?
・・・確かにこれは家庭用洗剤では心もとないですが、最近は花王のエマールなど良い物も出ておりますのでそういった専用洗剤を使えば、これはそれほど問題ではありません。
一番の問題は?
...それはプレス技術の問題と裏地等の縮みの問題です。 これに充分対処するためには高度な技術力と時間を要するためなかなか一般に普及しないのです。 それでは具体的に2つの問題はどんなことかと言いますと・・・
当たり前のことですが、水洗いは洗い上がって干した後はシワだらけになりますから、これをプレスするのが大変なんです。 このことは、ドライクリーニングでも、ご家庭でも言えることです。 そして、ドライの方はクリーニング屋さんは洗濯もプレスもプロですのでご家庭でやるよりは段違いで安定したプレスができます。 しかし、残念なことにクリーニング専業店ではスーツの構造や作り方などへはあまり関心が向かないため良いプレスが出来ないのです。 この点、仕立屋のプレスならスーツの作り方からアイロン掛けの方向までキチンと理解しているためオリジナルに近い状態まで持っていくことが出来るのです。 例えばこんな事はありませんでしたか? 3つボタン中掛けデザインのスーツをクリーニングに出したら 3つボタン上2つ掛けになってしまった××× ...これは上記の表に当てはめるとごくごく当たり前のことなんですね。 水溶性の汚れですから... 『襟のプレスを柔らかくして欲しい』と言ったケド、 理解して貰えなかった××× これでは折角のスーツもオリジナルの原型が分からなくなってしまいます。 その点、仕立屋のするプレスは「洗うこと」のみならず『スーツのメンテナンス』の位置づけですから元通り復元することに主眼が置かれているのです。
スーツの水洗いで意外と見落とされがちなのは『縮みの問題』です。 それでは水洗いによる縮みとはどんな物なのでしょうか? ・・・実は、これは生地(表地)の問題もさることながらむしろ裏地の問題です。 表地の方は、仕立てる前には「地のし(地直し)」という作業を行い、縮む要素のある生地は充分縮ませてからお仕立てに取りかかるのでステッチ糸の縮みに関する事以外ではあまりこのような事は起こりません。 ですが、裏地の方は一般には何もしないままお仕立てします。 (これは当店でもそうですし、他店でも同じと思います。) 何故?と思われるかも知れませんが、特にキュプラの裏地などは地のしによって当初の光沢感が薄れてしまう傾向がありこれを嫌がっての事です。(あるいは面倒なだけか...) このため、スーツを水洗いすると(特にキュプラの裏地を使った物は)少なからず裏地が縮んでしまい、そのまま乾燥、プレスをするとスーツの裏地側(内側)が短くなるため、裾が内側にロールしてしまいます。 それではどうすればキチンと収まるのか? ××× それは面倒ですが一度裏地を解いて縫い代を出してやるしか手だてがありません。 既製服はどうか分かりませんが、例えば当店の仕立てではスーツの裾裏の裏地は縫い代を多少多めに取り後々の補修に対処できるようにしています。 ですから補修の際にはこの縫い代をうまく利用するのです。 さすがにここまではご家庭では無理です。 これが仕立屋による補修の凄いところです。 読者の皆さんはなかなかイメージが沸かないと思いますが、補修というのは大変な作業で、一度出来ている物を解いて、それを補修して、また縫製する訳ですから、意外とコストが掛かるのもうなずける話です。
長々とドライクリーニングと比較したり、問題点を説明してみましたが、それではどんな仕上がりになるのでしょうか? 仕上がりというのは風合いが問題になりますのでなかなか画像では表現できませんが、こんな感じです。
実際に、水洗いを行いその後縫製工場にて最終プレス。 作業はリフォーム工場(三久服装)、直営のイージーオーダー工場にて行います。 最終的なプレスは、イージーオーダーの縫製工場が行なうこのメンテナンス。 ここには日本のテーラリングの技術が残っています。 毎回の水洗いは必要ありませんが、少しくたびれてきたかな?と思ったとき是非当店のスーツのメンテナンスを思い出してみてください。
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