2020年8月7日更新
こんにちは。 大阪店の大崎です。 今年は花火もなければ甲子園もない....なんだか調子が狂いますね。 皆さんいかがお過ごしでしょうか。 兎にも角にも“あの”せいでお盆休みも予定を立てられなかったり、田舎に帰りたくても帰れない「元気にやっとるよ」と電話するのが精一杯という方も多いことでしょう。 しかし帰れないとはいえ日頃の疲れを癒したり、リフレッシュしたい! そんな時は自然豊かな場所に行きたくなる....果物狩りなんかいいと思いませんか?
8月は果物が美味しい季節。 梨や桃、葡萄や無花果など、品種にもよりますが各地で収穫最盛期を迎えています。 因みに私が好きなのは.........桃!!!白桃です。 一口に白桃といってもたくさんの種類があって、昨年は岡山の清水白桃、今年は和歌山の白鳳、来年は山梨の蟠桃...かなぁなんて。(頭の中が食べ物のことでいっぱいなのがそろそろバレてしまいそう...)
地域によって様々な品種があり呼び方も違うのですが、オーダー業界でも同じようなことが、例えば.....スーツ。 ほとんどの方が「仕事用のスーツを~、結婚式に着ていくスーツを~」とご注文いただきますが、たまにこれを“背広”とおっしゃる方や、ジャケット単品のことを“替え上着”と呼んだりと様々な呼び方で呼ばれています。
中でもその種類が多いのは≪ズボン≫。 パンツ・トラウザーズ・替えズボン・組下・替え下etc... なぜこんなに色々な呼び方があるのでしょうか。
なにがどう違うのか、どのデザイン・シルエットがその呼び方がイメージに合うのか。 今回はそんな≪ズボンを表す色々な呼び方≫次回のオーダーにも役立てていただけるようお話ししてまいりたいと思います。
※ズボンの定義は広範囲。 両足を別々に入れる履物全てズボンという。
では早速ですが、皆さん。 ≪パンツ≫と聞くと、スーツのパンツを浮かべますか?それとも下着のパンツ? 文字だけだと分かりにくいですが、“パ”にアクセントをつけて呼ぶと下着に聞こえますし、アクセントを付けずに呼ぶとスーツの「ズボン」のイメージに変わります。 小さい子どもに対して「ズボン」「スカート」「パンツ」とボトムスを分かりやすく区別して教えるように、私達もその頃からのイメージのまま、パンツ=下着、ズボン=ボトムスといった認識の方が強いかもしれませんね。 この≪ズボン≫という呼び方の由来は諸説あるのですが、フランス語のJupon(ペチコート)の聞き間違えから始まったという説、襦袢(和装用の下着)からきた説や履く際のズボンという音からという説等があります。 ほんとに?と少し疑いたくなるような感じの始まり方ですが(笑) 日本独自の呼び方が≪ズボン≫。 男性用にも女性用にも使用されますが、もちろん海外では通じないので注意が必要ですね。
次は≪パンツ≫。 先ほど日本では下着の意味になると言いましたが、これはアメリカ英語。 Pantaloonsを略した単語Pantsが由来とされており、スーツのパンツはSuit pantsやDress pantsという呼び方をします。 欧州に比べて多民族国家のアメリカは、圧倒的な経済発展も後押しとなりスーツのビジネスウエアとしての役割がいち早く定着します。 様々な体型に合わせるため細かいサイズ展開よりも“効率”が重視され、既製品主導でどんどん生産スピードもUPしていきました。 チェストはやや大きくジャケットの胸ダーツも無い仕様に。 多少サイズが大きくてもベルトで調節できるベルトループがポピュラーになり、持ち出しは無しのプレーンフロントが多く普及しました。 因みに....≪スラックス≫はパンツ同様アメリカ英語ですが、スラックスの語源となるSlackには“ゆるみ・たるみ”といった意味があり、ゆったりと履く単品の長ズボンのことを指します。
次に≪トラウザーズ≫ですが、これはあまり聞き慣れないない方もいっらしゃると思います。 イギリス英語でかちっとしたドレッシーな長ズボンのことを指した、紳士用ズボンの総称です。 オフィシャルな場所で履くというイメージがあっているかと思います。 プリーツを入れる場合は圧倒的にフォワードプリーツ(インタック)で、ブレーシス(サスペンダー)で吊ることでプリーツの立ち上がりの見栄えが美しく維持できるように。 サイドポケットは縦で縫い線に沿って入れて目立たないようににしたりと、シルエットを美しく魅せるための工夫は細かいディティールにも現われています。
最後にイタリアの≪パンタローニ≫。 イギリスほど宿命や機能美に囚われるわけでもなく、アメリカほど経済的戦略性が問われる状況になかったため、単純に軽快で柔らかい着心地と履き心地を目指し「どうすればカッコよく見えるか」を専心しました。 その結果、ジャケットは身体のラインが出るようにチェストやショルダーラインをソフトに、パンツはヒップを強調するように腰のダーツは2本。 プリーツはフォワードプリーツではなく、上から下へと直線的にすっきりと落ちるのが特徴のリバースプリーツが定着しました。 色々とイタリア人のイメージがそのままというか...それがディティールに現れるところも面白いですよね(笑)
それぞれの背景や特徴は全く異なりますが、様々な文化が入り混じる・取り入れられる日本だからこそ“オーダーの楽しさ”が増すといえます。 まだまだシャツとパンツが主役の季節。 細身のプレーンフロントのパンツばかりでマンネリ化していませんか?
夏は色鮮やかなイタリアの生地で色気を表現、リバースプリーツにするだけで印象が変わります。 ベストを仕込む秋冬になればイギリスの生地でクラシカルにまとめましょう。 股上深めのフォワードプリーツのベルトレスのパンツ、時計やバッグも雰囲気を合わせて持ちたいところ。 ジャケットを着ていると目立たないパンツのディティールかもしれませんが“脱いだ時に初めてわかる”そんなお洒落も是非楽しんでみてくださいね! それではまた、次回もお楽しみに。