2021年2月12日更新
こんにちは。 大阪店の大崎です。 昨今はお洒落して出掛ける機会が少なくなってしまいましたが、 皆さんいかがお過ごしでしょうか。 我慢の時と頭ではわかっていてもうずうず.....自粛が明けた春に向けて“今年はなに作ろうかな~”とアイテムを考えるのですが、作りたいものがありすぎてなかなか決まらない大崎です(笑) また、店頭にお越しいただいたお客様に話を聞くと、もうスーツは着なくてよくなった、そもそも服を新しく買うことがなくなった(スーツ屋としては耳の痛い話。笑)けれどたまに出かける時くらい“お洒落したいから”、あるもので着回してきたけれどさすがに“へたってきたし買い替えたい”とおっしゃいます。 そこで今回は、皆さんが次回スーツをオーダーされる際にきっと役立つ<裏地の選び方>についてお話ししたいと思います。 裏地の素材や貼り方、そもそもどんな役割が裏地にはあるのか、縁の下の力「見えない部分」に注目してみましょう。 さて、早速ですがオーダースーツを仕立てる上での“こだわり”といえば皆さんはなにが浮かぶでしょうか。 色々あるとは思いますが....例えば。
これが決まらないと始まらない、オーダーする中で最もこだわりたい部分。 ハリコシのある丈夫な生地やドレープが美しく柔らかい生地etc...
“こういうふうに見せたい”と周りに与える印象に直結する部分。 ナチュラルな印象は肩のライン、腰高にみせるのであればウエストラインの絞る位置を調節したりと、スタッフの腕の見せ所ですね。
物をたくさん入れるからポケットはたくさん欲しい等実用面の願いを叶える部分でもあり、ジャケットの襟幅調節やネーム刺繍や釦穴の糸色を変えるetc... よりオーダーらしさをアピールするポイント。
このように様々な“こだわり”をサイズやディティールに反映できることはオーダーする上での醍醐味であり、楽しみでもありますよね! 裏地はその中の一つで表地と同じくらい色柄で悩まれる方もいれば、自分しか見えないしなんでもいいという方もいらっしゃいますが....今回のコラムを読んでいただければ裏地選びが楽しくなる?! 悩みに悩んで決めた表地を生かせるかはお客様次第かもしれません....。
ジャケットの裏側には芯地、表地の縫い代、ポケットの袋などの凹凸、特にコートの生地は厚く裏毛羽を長く残しているものも多い。 それらを覆い隠すように裏地をつけることで滑りやすくし、重ね着をしても身体がスムーズに動くようにサポートします。
裏地は表地に干渉せず色柄を引きたたせる役割、基本的には同色もしくはやや薄めの色がベスト。 特に白やベージュなどトーンの明るいものは裏地の色型が透けるので注意が必要です。
表地1枚では暖かい空気が外に逃げてしまうので、裏地をつけて逃げるのを防いで保温性をUP。 冬は暖かく快適に過ごすことができ、ヒートテックなどの重ね着が不要になって楽です。
表地が薄手のものや耐久性が低くデリケートな生地の場合、傷みが早くくたびれやすい。 衣服で摩擦が起きやすいのは常に身体に触れる内側(裏側)の部分のため“滑りの良い”裏地を使用し、表地が受ける力や変形(スカートの尻抜けやひざ抜け)を最小限に。
ヨシムラで主に使用する裏地は以下の3種類で、その他にはレーヨンやシルクといった素材の裏地もあります。 さて、滑りの良い裏地とはなんでしょうか?
腰裏やポケットの袋地として使用される丈夫な素材で、肌に優しい天然繊維から作られているので肌が敏感な人でも安心。 マットな生地感は滑りにくく着脱感はあまりよくないことがあります。(腰裏に使用することでシャツが抜けにくいメリットも)
強度に優れ弾力性や形態安定性があり皺になりにくい(入ったらとれにくい)。 安価であるため多くの既製服の繊維として幅広く使われ、洗い方によっては自宅での洗濯も可能。 当店ではウォッシャブル仕様の裏地にポリエステル素材のメッシュが使われます。 通水性・通気性でご着用中の汗の乾きもスピーディーです。
スーツやジャケットの裏地には高級感が求められることも.....最適なのがシルクや“キュプラ”。 シルクはレーヨンやキュプラなど再生繊維、ポリエステルなどの合成繊維が登場するまでは多用されていましたが、現在は和装(長襦袢)やハイブランドなど限られた分野で使用されています。 キュプラは、正式には[銅アンモニアレーヨン]という名称で、原料には綿の種(コットンシード)に付いた産毛部分のコットンリンターが使われています。 ポリエステルより耐久性は劣るものの吸放湿性や静電性にも優れた素材で、当店でもおおよそ7割のお客様が選ばれる素材です。 着脱のストレスが少ない滑りのいい裏地とは...キュプラです。
春夏物、秋冬物どちらであってもオススメはキュプラの総裏。 しかし「仕事は外回りが多く自転車にも乗る→耐久性重視のポリエステル混紡素材の表地」という方にはポリエステルで背抜き(または半裏)が最適。 表生地の種類や使い方によって合わせる素材と仕様は変えるのがベターです! また、春夏はブルー・グレー・ピンク等トーンは明るめで爽やかなな色が人気。 秋冬は少し渋い色合いのブラウン・ダークグリーン・レッドがよく選ばれます。
補色(反対色)を選ぶと表地とのコントラストが強く派手な印象に。 柄は大きいものでも低いトーンのものや、表地の色からかけ離れていない色がベースのものは割と大人しく映ります。
今の季節地味にストレスなのが静電気! 以下に繊維の帯電列を表示しますが、配列の離れている素材を摩擦しあうと帯電量は多くなる⇒バチッ!ドアノブ等に触れて一気に放電、静電気が起きるということになります。 スーツやコート生地の主な原材料はウールなので、ポリエステルよりキュプラ(原材料:綿) の方が性質が近いため帯電しにくく快適。 静電気の発生を抑えるということは、まとわりや>ホコリの付着をシャットアウト⇒ 表地の風合いを長持ちさせることに繋がります!
以上、裏地の素材と選び方についてお話いたしました。 お洒落にこだわる人は見えない部分にまでこだわるもの。 今月末には店頭もすべて2021年の春夏生地に入れ替わる予定ですので、 表地はもちろん裏地選びも楽しんでみてくださいね! 今年は果たしてどんな派手裏地が登場するのか...乞うご期待♪ ではまた、次回もお楽しみに。