2021年3月12日更新
こんにちは。 大阪店の大崎です。 3月半ばに差し掛かり、かなり余寒も薄らいできましたね。 皆さんは如何お過ごしでしょうか。 春めいた日差しが心地いい日もあれば、風向きが変わって雨具が手放せない日もあり、体調管理には要注意の季節です。 しかし年度末のご多忙の折、体調なんかに気をつかってられない!と、お忙しくされていらっしゃると存じますので、このコラムも落ち着かれてからゆっくりとご覧いただければ幸いです。 (せかしたりしませんので是非。笑)
さて、私事ではありますが前の家から引っ越してからちょうど1年が経ちました。 家族4人での家探しの苦労話は面白くないのでカットしますが、今1つだけとても不満に思っていることが..... 引っ越しの際「一軒家に収まっていた荷物を全部持っていくのは無理」と分かっていながらこれだけはと持ってきた母の桐箪笥五棹。 大丈夫!あんたの部屋には置かんから、という言葉に嘘はなかったんだと安心しきっていたところ。 先日、いつも通り会社から帰宅するとなにやらとんでもない異彩を放つものが。 一棹の桐箪笥が私の部屋に置かれていましたが、明らかに邪魔で圧迫感しか感じない(笑) でも引っ越してすぐに海のような深くて広~い心を手に入れた私は、桐箪笥の“良いところ”にだけ意識を置くことに成功し母を責めることなく受け入れられました。 そんな私の家では邪魔者扱いされている桐箪笥。 皆さんの家にもありますか? もし処分を検討中......なんて方がいらっしゃれば、今回のコラムを読んでその価値と魅力に気付きとっておこうかなとなるかも??しれません。
「娘が生まれたら桐を植えよ」 かつてはそういわれ、その意味は曲がりのない通直な木にするのには、芽かきや草刈り等こまめな手入れが必要で“手塩にかけて”育てよとういう意味もあったそう。 桐箪笥は、女性が結婚するのにあたりその後の結婚生活で困らないように女性の親や本人が嫁入り道具として持っていくことが当たり前だったそうです。 生長は早く15年前後。 ただ良い桐箪笥の材料に使用するのには20~30年くらいの成熟期が必要で、丸太を板に製材、アク抜きしてから2.3年かけて天日や雨露にさらして木性を落ち着かせて天然乾燥。 桐箪笥の製作となるとおおよそ22工程....高価なのも納得がいきます(汗) 1661年~1673年頃に大阪で生産されたのが箪笥の始まりだといわれ、桐箪笥が一般家庭で使われるようになったのは江戸時代後期(1711年頃~)と意外と浅い。 当時は箱膳(食器を収納する箱)のように移動して使うことを考えて作られており、女性一人で持ち運べる軽さと丈夫さが特徴で、火事や風水害の時、大事な着物等を箪笥ごと持ち出して逃げられるということも、普及に繋がったと言われています。 最も生産されたのは大正に入ってからですが、1939年~1945年の第二次世界大戦後、外国文化の影響で洋式家具に押され需要は減ってしまいます。 しかし、確かな品質と職人技の伝統工芸が次第に見直され、厳しい時代を乗り切り、近年では最近の住宅事情に合わせたもの、洋室にも合うインテリアとして様々なデザインでのオーダーが可能。
桐は日本のあらゆる木の中で一番軽い木。 ⇒桐のタンスは引き出しをスムーズに開け閉めすることができ、部屋の模様替えをしたい時や引っ越しの際にも移動がしやすい。
ほとんど全ての木(材木)は、酸性の性質ですが桐の木はアルカリ性。 ⇒“虫食い”の原因小さな虫はすべて酸性の性質を好むため虫食い被害を抑えられる。
桐にはタンニン、パウロニン、セサミンという成分が含まれており、ノミ、ダニなどの虫がつきにくく抗菌性に優れている。 ⇒衣類を守るだけでなくアトピー喘息等の原因を抑え、空気が綺麗な空間で健康に暮らせる。 また、これらの成分が含まれいるおかげで、桐自体を腐敗から守り腐りにくくし長期使用が可能。
桐材は多孔質(ミクロの小部屋がたくさんある)で、湿度に反応して湿気を吸ったり吐いたりする性を持ってる。 桐箪笥は気密性が高いため年間を通して内部の湿度があまり変動せず、高温多湿の日本でもずカビがはえにくい。 ⇒虫が好む環境(温度:15~25℃、湿度:60~80%)を作り出しにくく虫食い防止に繋がる。
桐は他の木材に比べ、*着火点が高い(杉は180℃、桐は270℃)ため燃えにくい。 火事にあっても吸湿性の高い桐は消化水を吸収することで膨張し、内部への熱を遮断する。 ⇒万が一火がついたとしても大事な箪笥の中身まで燃えにくい。 *木材に火がつく温度
生命力が強く生長も早いので森林資源・環境問題の面からも効率の良い優しい資源。 ⇒狂いや伸縮が少ないため、例え古くなり汚れてきても表面を削ることによってまた新しく生まれ変わり、親子3代で使用できるといわれている。
桐自体からマイナスイオンが放射されていて、桐箪笥の開け閉め等で木が擦れるときに マイナスイオンが発生。 ⇒天然木の持つ自然の香りもプラスされ、精神的にリラックスをもたらす。
これだけのメリットがあると“桐箪笥があれば完璧やん!” と、思われると思いますがそうではないんですよね.... 集合住宅は一戸建てよりもより気密性が高く湿度が高くなりやすいので、カビやシミ、ダニが発生する環境を作りやすいのが弱点。 寒い日も窓を開けて換気!....はできればしたくないですから、普段から扇風機やサーキュレーターでクローゼットの中の空気を流し湿気を逃がしてあげると良いです。 人工的に衣類にとって良い環境を作ってあげましょう。
服に卵を産み付け飛び去っていくのは甲虫類の仲間「カツオブシムシ」と蛾の仲間「イガ」。 これらの虫は花の蜜等を主食としてしていますが、産卵期(4.5月)なると服にくっついて卵を産み落とします(汗) 因みに、服を食べるのは幼虫期間でカツオブシムシ類は10ヶ月、イガ類は時期により異なり1ヶ月~4ヶ月程度。 目で確認はしにくいためそのまま長期収納してしまうと、卵が孵化し繊維がエサになってしまうのです。 しかもどれが美味しいのか虫は知っています。 基本良いヤツ(カシミア、ウール等の天然繊維)しか食べません(笑)
衣類の間隔をほんの少しでもあけるより良い。
クリーニングも頻繁には出せないスーツやコート<現代の晴れ着>には、やっぱり普段の*ブラッシングが一番大事。 着物は着た後に汚れていない場合、汗をを抜いてから綺麗に畳んでたとう紙に入れ箪笥にしまう、という流れですがスーツも同じです。 ブラッシングした後は、ベランダの日陰もしくは室内でも風通しの良い場所で1日置いてから不織布をかぶせてクローゼットへ収納しましょう。 不織布はシーズン中は被せなくても、長期保管の前には被せておくといいと思います。
*2020/2/7のコラムでもブラッシングの仕方について紹介しています。
桐箪笥もウール(スーツ)と同じ呼吸をしているので手入れは必要ですが、再び“嫁入り道具”として注目される時は近い!?かもしれません。 しかし今の住宅事情的に天然の力だけで風合いを保つのは難しく、人工的“人の手”でできるケアというのは本当に大切。 大事な晴れ着を守るためにも、虫さんを育て上げないためにも、しっかりとブラッシングを頑張っていきましょうね! それではまた、次回もお楽しみに。