HOME > レディース > 『裏側もときめくWジャケット』

『裏側もときめくWジャケット』


こんにちは。東京店の富田です。
9月も2/3が過ぎ、そして一年も2/3が既に経過し、時間の速さに驚きと、ため息が出そうですが、皆さん如何お過ごしでしょうか。
時間は皆平等、意識して過ごしたいところですね。


さて、今回のレディースコラムは、レディースのオーダーでは、<初>となる試み『メンズパターンで作る、内ポケットが沢山付いたパイピング仕立てのWジャケットのご注文』を頂きましたSさんのご紹介です。

今回のご注文はSさんとのこんな会話から始まりました。

Sさん: 着なくなったスーツやジャケットでも、捨てられないものってあるのよね。
内ポケットが付いてたり、見返しの内側にパイピングだっけ?細い配色のテープが挟んであるやつ。着るときチラッと見えたりして、テンションあがるのよね。
内ポケットやパイピングが付いてると、何だかしっかり仕立てられてる感があって好きなの。
富田: 確かに、女性のジャケットには内ポケットが基本無い事が殆どで、
まして裏側の見えない部分の見返しの縁をパイピングしてるのは、粋ですね。
Sさん: そうなの。
でもね、既製品でも内ポケット付きがあるのもたまに見るけど、デザインが好みでなかったり、サイズがあわなかったりするし。折角のパイピングカラーも微妙な配色で、決してときめく色ではなく、結果残念だったりするのよね。
富田: 既製付属品のパイピングのカラーバリエーションでは、割と無難な色展開しかないと思いますし、せっかくのパイピングカラーにときめきがないと残念ですよね。

今回Sさんのご要望としては、

  • ジャケットの内側にポケットを付けたい
  • ときめく配色のパイピングを付けたい

レディースのパターンでは、内ポケットをお付けする事は可能ですが、パイピング仕様はレディースパターンにないため、叶えることができません。
ですが、何とかSさんのご要望に応えたい。そこで思いついたのは...

メ ン ズ パ タ ー ン を 使 う 事

レディースパターンで用意できなければメンズで。
メンズパターンの『ある仕様』を取り入れば、ご要望にある内ポケットを更にしっかり付ける事も出来ますし、パイピングもゴージャスに付けることが可能です。
そのある仕様とは、『お台場仕立て』です。

お台場仕立てとは

お台場仕立て
お台場なし

ラペルから内側の内ポケット回りまでを1枚の生地で大きく囲う事を言います。

見返しが、弧を描くように切替えられており、なんとも美しく高級感があります。
通常の見返し巾より表地を広く使っているため、ラペルの返りもふっくらする点も魅力です。
そんな魅力的な仕様ですが、レディースには<お台場仕立て>がありません。
なぜでしょうか?
それは、胸の厚みが増すためです。身頃と見返しの生地が広く重なることで生地に厚みが増し、女性の身体の凹凸を綺麗に表現することを、邪魔してしまうからです。

富田: メンズパターンを使い『お台場仕立て』を取り入れれば、Sさんのご要望頂いている内ポケットも表地で補強できると同時に、高級感もあってよりしっかり感のある仕上がりになります。

パイピングはお台場回りを囲うように付けるので、裏地をバイアス裁断(斜め)のテープ状にカットして、それを繋いでカーブさせて付けていくので大変手間がかかる作業です。
パイピングに使う裏地も、当店で取り扱う全ての裏地から選るのも魅力です。
更に、胴裏とパイピングの裏地をそれぞれ変えられることができるので、きっと満足頂けますよ。
Sさん: えっ?そんなこともできるの?その仕様にしてみたい!

と、Sさんに前代未聞な提案をしましたが、躊躇なくこの提案に賛同して頂きました。
それでは、生地、デザイン、そして肝心な裏側と、どんなご注文を頂いたのか、ご紹介していきたいと思います。

裏側もときめくWジャケット

基本デザイン ダブル6×2ジャケット
衿型 ピーク衿
ベント型 サイド
腰PK アウト
袖口 メタルボタン、三つボタン+本明き
肩まわり マニカカミーチャ仕様(パット、タレワタ無し)
その他指示 女性仕立て右上前、芯地全てレディース用、ゴージカット
裏仕様 総裏+お台場仕立て(配色パイピング)

生地について

葛利毛織 P23-5801 濃紺無地

気兼ねなく着用できて安心感もあって、きちんと品よく見える素材がいいとのことで、葛利毛織に決まりました。
羽織る感じに着たいということもあり、Wジャケットなら今らしくこなれ感を出して着れますので、今回はWジャケットに挑戦することにしました。
そして何より濃紺無地なら、お手持ちの服と合わせやすく幅広くコーディネートでき、いつでもお気に入りのジャケットを着る事が出来ますね。

デザイン+仕様について

ダブル仕立ての6×2のデザイン。
羽織感覚で着たいとのことで、肩まわりは軽く仕上げ、肩パットとタレワタを抜いたマニカカミーチャ仕様で、軽さに加えカジュアル感を表現しました。

《マニカカミーチャ仕様》

そして芯地を変更することも忘れてはいけません。
メンズは、大きく立体的な胸周り表現するため、芯地は厚みと張り感のあるものを使いますが、レディースは身体の凹凸を綺麗に表現するため、芯地はソフトで柔らかなものを使用します。
このように基本的な見せ方の違いも芯地で変わりますので、ここはレディース芯を選びました。

内ポケットとゆとりについて

通常レディースのパターンには、内ポケットが付かないことが標準仕様です。
(ご希望であれば、付ける事も可能です)
何故ならば、女性の身体のシルエットを崩さないためです。
仮に内ポケットに沢山物を詰め込んだら、明らかに身体が大きく見えてしまい、シルエットも崩れて不格好に見えますよね。ですから多くは内ポケットがつきません。

またウエストのゆとり量も少し大きめに設定しました。
ウエストを絞り過ぎますと、ポケットの袋地の厚みも気になる事を考慮して、今回お腹周りを絞り過ぎずメンズそのもののパターンを活かし、少しゆとりを意識してお作りすることにしました。

ときめきを感じるパイピング

富田: Sさん、次に裏側部分の裏地とパイピング(ヘリ取り)を決めたいと思いますが、
どんなイメージですか?
Sさん: シンプルに高級感を出したいから胴裏は無地の赤にして、
パイピングは配色でブラウンにしようかな。
富田: いいですね~。イメージ通りの高級感とクラシック感もあって、
表地とのバランスもいいですね。

さて、
今回はレディースの前代未聞のご注文で、メンズパターンによる、内ポケットが沢山付いた、洒落た裏側のジャケットをご紹介しました。果たしてどのような仕上りになるのか、Sさん以上に私も楽しみです。
次回、仕上りをお披露目しますので楽しみにお待ちくださいね。


back number

過去のback number