2023年9月22日更新
こんにちは。東京店の富田です。 9月も2/3が過ぎ、そして一年も2/3が既に経過し、時間の速さに驚きと、ため息が出そうですが、皆さん如何お過ごしでしょうか。 時間は皆平等、意識して過ごしたいところですね。
さて、今回のレディースコラムは、レディースのオーダーでは、<初>となる試み、『メンズパターンで作る、内ポケットが沢山付いたパイピング仕立てのWジャケットのご注文』を頂きましたSさんのご紹介です。 今回のご注文はSさんとのこんな会話から始まりました。
今回Sさんのご要望としては、
レディースのパターンでは、内ポケットをお付けする事は可能ですが、パイピング仕様はレディースパターンにないため、叶えることができません。 ですが、何とかSさんのご要望に応えたい。そこで思いついたのは...
レディースパターンで用意できなければメンズで。 メンズパターンの『ある仕様』を取り入れば、ご要望にある内ポケットを更にしっかり付ける事も出来ますし、パイピングもゴージャスに付けることが可能です。 そのある仕様とは、『お台場仕立て』です。
ラペルから内側の内ポケット回りまでを1枚の生地で大きく囲う事を言います。 見返しが、弧を描くように切替えられており、なんとも美しく高級感があります。 通常の見返し巾より表地を広く使っているため、ラペルの返りもふっくらする点も魅力です。 そんな魅力的な仕様ですが、レディースには<お台場仕立て>がありません。 なぜでしょうか? それは、胸の厚みが増すためです。身頃と見返しの生地が広く重なることで生地に厚みが増し、女性の身体の凹凸を綺麗に表現することを、邪魔してしまうからです。
と、Sさんに前代未聞な提案をしましたが、躊躇なくこの提案に賛同して頂きました。 それでは、生地、デザイン、そして肝心な裏側と、どんなご注文を頂いたのか、ご紹介していきたいと思います。
気兼ねなく着用できて安心感もあって、きちんと品よく見える素材がいいとのことで、葛利毛織に決まりました。 羽織る感じに着たいということもあり、Wジャケットなら今らしくこなれ感を出して着れますので、今回はWジャケットに挑戦することにしました。 そして何より濃紺無地なら、お手持ちの服と合わせやすく幅広くコーディネートでき、いつでもお気に入りのジャケットを着る事が出来ますね。
ダブル仕立ての6×2のデザイン。 羽織感覚で着たいとのことで、肩まわりは軽く仕上げ、肩パットとタレワタを抜いたマニカカミーチャ仕様で、軽さに加えカジュアル感を表現しました。
《マニカカミーチャ仕様》
そして芯地を変更することも忘れてはいけません。 メンズは、大きく立体的な胸周り表現するため、芯地は厚みと張り感のあるものを使いますが、レディースは身体の凹凸を綺麗に表現するため、芯地はソフトで柔らかなものを使用します。 このように基本的な見せ方の違いも芯地で変わりますので、ここはレディース芯を選びました。
通常レディースのパターンには、内ポケットが付かないことが標準仕様です。 (ご希望であれば、付ける事も可能です) 何故ならば、女性の身体のシルエットを崩さないためです。 仮に内ポケットに沢山物を詰め込んだら、明らかに身体が大きく見えてしまい、シルエットも崩れて不格好に見えますよね。ですから多くは内ポケットがつきません。 またウエストのゆとり量も少し大きめに設定しました。 ウエストを絞り過ぎますと、ポケットの袋地の厚みも気になる事を考慮して、今回お腹周りを絞り過ぎずメンズそのもののパターンを活かし、少しゆとりを意識してお作りすることにしました。
さて、 今回はレディースの前代未聞のご注文で、メンズパターンによる、内ポケットが沢山付いた、洒落た裏側のジャケットをご紹介しました。果たしてどのような仕上りになるのか、Sさん以上に私も楽しみです。 次回、仕上りをお披露目しますので楽しみにお待ちくださいね。