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『遂に完成!! 裏面も洒落感満載Wジャケット』


こんにちは。東京店の富田です。
朝夕はめっきり涼しくなりジャケットや羽織物が必要な陽気になりましたが皆さんは如何お過ごしでしょうか。

今回のレディースコラムは、
先月ご紹介した『ジャケットの裏側にときめく仕掛けを施したWジャケット』が遂に完成しましたので、Sさんにお披露目して頂きます。
今回Sさんのお仕立てのテーマは、『裏面にときめきを』それを実現させるための重要なポイントは…。

  1. ジャケットの内側にポケットを付けたい
  2. 見返し端にときめく配色のパイピングを付けたい

Sさんの理想を叶えるためには、実はレディースパターンでは不可能でした。
内ポケットをお付けする事は可能ですが、パイピング仕様はレディースパターンにないため叶えることができません。
そこで思いついたのは... 《メンズパターンを使用する》ことでした。
更にご希望いただいている、配色パイピングを、よりときめかせるために、レディースにはない『お台場仕立て』仕様を取り入れることに。

さて、今回のSさんのジャケット、一見して分かりやすい《ときめく裏側》にフォーカスしてしまいがちですが、実は今回のお仕立てで、もう一つクリアしなければならない重要なポイントがあります。 それは、、、女性が《メンズパターン》を使用することです。

どういうことかと言いますと、女性と男性では体つきが大きく違いますよね? メンズパターンは、体つきのしっかりとした男性をよりたくましく見せることを想定しているので、胸に厚みのある芯を入れ立体感を演出し、肩回りもパットを入れてしっかり作りこみ、着る人を力強くみせてくれるのが特徴です。

ですが、今回はメンズパターンを使用して、女性が着るジャケットを目指していますから、男性的なたくましさ、力強い表現は、体がごつく大きく見えてしまうことになり、むしろ女性にとっては、マイナス表現になってしまいます。

そこで今回は、メンズパターンを女性的に見せるために、普通に着ていると目立たないところまで、色々な工夫を凝らしていますので、その点にも是非注目していただければと思います。

さて、気になるその仕上がりは?
早速、Sさんにお披露目していただきましょう。、、、の前に、
ここまでの経緯を振り返っていただくと、よりSさんとのストーリーが楽しめますので、【2023/9/22裏側もときめくWジャケット】をもう一度ご覧いただくのもオススメです。

『裏側もときめくWジャケット』

それでは、内ポケットやパイピングの出来映え、そしてメンズパターンでの仕上りや着用感はどうなったでしょうか?
先ずは、仕上りの写真をご覧ください。

裏側もときめくWジャケット お披露目画像

生地 P23-5801 葛利毛織 濃紺無地
基本デザイン ダブル6×2ジャケット
衿型 ピーク衿
ベント型 サイド
腰PK アウト
袖口 メタルボタン、三つボタン+本切羽
肩まわり マニカカミーチャ仕様(パット、タレワタ無し)
その他指示 女性仕立て右上前、芯地全てレディース用、ゴージカット
裏仕様 総裏+お台場仕立て(配色パイピング)

早速まずは、今回のお仕立てのこだわりポイント『ときめく裏側』から、
Sさんにご試着頂きながらご紹介していこうと思います。

お台場仕立ての内ポケット・パイピング

お台場仕立てとは、ラペルから内側の内ポケット回りまでを1枚の生地で大きく囲う仕様です。見返しが弧を描くように切替えられており、なんとも美しい裏仕様です。  

そして、お台場回りを囲うように付けるパイピングは、裏地をバイアス裁断(斜め)のテープ状にカットして、それを繋いでカーブさせて付けていきます。両方共手間がかかり凝った仕様となっています。

Sさん: 裏側凄いね~!お台場の存在感もあるわね。
欲しかったパイピングもイメージ通りだし、裏地とパイピンクカラーのバランスもクラシック感があって素敵~!!
赤の裏地にブラウンのパイピングいいわね~。
内ポケット口端の左右の押さえステッチも赤にしてくれて、統一感があって素敵だわ。
富田: ホントに素敵ですね。お台場仕立てのカーブした見返しは高級感もありますし、何と言っても裏側なのに存在感がありますね。
内ポケットの口端のステッチ(Dカン)カラーも指示できるので、統一感もあり楽しめますね。
それから、ポケット口はしっかりしたお仕立てがお好きでしょうから、ポケット口端の生地は通常裏地使いですが表地にすることで、ポケット口を丈夫に仕上げました。
肝心な着心地はどうですか?
Sさん: 少し胸の厚みも感じるけど、これはお台場まわりの生地の重なり部分よね。
まっ、これも想定内ね。
羽織って着るイメージだし、フロント釦も殆ど留めないから胸の厚みも気にならないわ。

【メンズパターンを女性的に見せるための一工夫】

さて、ここからは今回のお仕立てのもう一つの重要なポイントでもある、女性が着るメンズパターンをどのようにして作り上げていったかをご紹介したいと思います。

カッチリとたくましい男性的なジャケットで、いかに女性的な柔らかさや優しさを表現したのか?その秘密をご覧ください。

芯地の変更

芯地は生地の裏側に接着されるため見えない部分ですが、メンズとレディースの仕立てでは、表現の違いもあり芯地の選定も異なります。
メンズは大きく立体的な胸周り表現するため、芯地は厚みと張り感のあるものを使いますが、レディースは身体の凹凸を綺麗に表現するため、芯地はソフトで柔らかなものを使用します。

今回は、Sさんのご要望を叶えるためにメンズパターンを使用しました。
ですが、メンズのようなかっちりした仕立てでは、女性らしい柔らかな雰囲気や、綺麗な体のラインを表現することは出来ないので、メンズのような厚みと張り感のない、柔らかなレディース芯を使用し、メンズパターンでも女性的に見えるよう一工夫しました。

また、Sさんは、羽織り感覚で着ることを目的としていたので、ジャケットを軽く仕立てることはマストでもありました。

富田: 表側からは見えませんが、生地の裏に貼る芯地を、薄手でソフトな物に変えました。
女性的な柔らかさや体のラインを綺麗に表現してみましたがいかがですか?
羽織り感覚で着る事も踏まえて、芯から軽くしてみました。
Sさん: そうなの!?
富田: 芯はソフトにしましたけど、生地がしっかりしているので仕立て映えしますよね。
ここでメンズ芯を使うと、もっと重さや立体的な雰囲気が出てしまいますので、
芯地をソフトな物に変更したことによって、柔らかい印象に仕上がりました。

ゴージカット+ゴージカット芯

女性と男性で身体の大きな違いは胸です。
女性はバストトップがあり丸みがあります。
一方、男性の胸は、女性に比べると厚みはありますが、平面的で、女性のような胸の高さはありません。

女性的で美しいバストラインをメンズパターンで表現するために、《ゴージカット》という胸周りを立体的にする体型補正をジャケットに入れました。

ゴージカットは本来は、胸筋のある方や鳩胸の方にいれる体型補正です。
胸のふくらみや厚みのある方がスーツを着たとき、特にボタンを留めた時に、衿のV開き箇所が「く」の字に折れてしまうのを見たことがありませんか?

これを解消するために、身頃のラペルをめくった辺りの衿下から、バストトップの方向にダーツ(平面的な布を立体的に見せること)を入れることで胸の丸みをつけていきます。
女性のアイテムで例えるなら、タイトスカートの腰回りをイメージすると分かりやすいかと思います。
腰回りの丸みを綺麗に見せるために、ダーツが入っていますよね。
女性特有のバストラインの丸みを美しく表現するために、ゴージカットの役割は大きいのです。

更に胸の丸みをつけるために、専用のゴージカット芯を使用し、表地だけではなく芯地から丸みをつけることでより女性らしい柔らかなバストを作りこみます。
ゴージカットをしたとしてもフラットな芯を貼るところが一般的に多いのですが、当社では、芯地までカットしたゴージカット芯を貼るため、更に女性らしいバストラインを表現することができます。

女性が着るメンズパターンのジャケットですから、ここまでしないと、レディース的な雰囲気を演出することはできないのです。
レディース芯との合わせ技でより女性的な雰囲気を作りだしています。

富田: Sさん、メンズパターンを使用しながらも女性的な雰囲気を出すために、
ある工夫をしているんですよ。
Sさん: えっ?ある工夫って何かしら~。
富田: 衿のラペル裏を見てください。ダーツが入っていますよね...。
(ここからは、皆さんに先にご案内した、ゴージカットとゴージカット芯のご説明を致しました)
Sさん: なるほどね~。簡単にメンズパターンで作れると思っていたけど、
見えないところまで色々してくれてるのね。

マニカカミーチャ仕様

メンズパターンを女性的に見せるために、ここまでは見えない中の部分の工夫をご紹介しましたが、続いては、ここも大きなポイント、見た目の部分の工夫をご紹介します。

レディースとメンズのジャケットの大きな違い、それはショルダーラインの作りです。
肩回りが華奢な女性に、構築的でたくましい男性的な肩の作りはアンバランスですよね。
そもそも、肩回りの作りがしっかりしていると、大きく見えてしまう事から、ほとんどの女性は、よほど狙っていない限り、ごつすぎる。。。と感じてしまうでしょう。

また、Sさんのご要望は羽織り感覚で着たいとのことでしたので、より肩回りを柔らかく、そして軽く仕上げることは、重要な課題でした。

そこで、今回採用したのは、肩パットを抜き、肩回りの表情をソフトに仕上げるマニカカミーチャを採用しました。
通常の肩まわりとマニカカミーチャの画像をご覧ください。

通常の肩回り
マニカカミーチャ仕様

一般的なスーツの肩の作りは、肩パットを入れて構築的なショルダーラインを作るため、肩先の上にふっくらと丸みがある表情になり、きちっとした肩回りになります。

一方、マニカカミーチャは、肩パットを抜いてシャツ袖のように肩の先から袖が落ちている表情に変更して、肩先の丸みをなくし、ソフトで軽い肩回りを作り出します。
そうすることで、女性的で柔らかなショルダーラインを演出しました。

富田: Sさん、肩回りの感じは如何ですか?
Sさん: 肩まわり軽いわね~。
肩パットを抜いただけでは、こんな表情にはならないわよね。
きちんとした雰囲気も残しつつ、柔らかい感じも良いわね~。
富田: そうなんです。パットを抜くだけではなく、肩回りの作りを変更して、きちっと見えしながらも遊び心と抜け感もあり、ソフトな肩回りですので、羽織り感覚で着られますね。

内ポケットとゆとり

通常レディースのパターンには、内ポケットが付かないことが標準仕様です。
今回のリクエストは、内ポケットを沢山お付けする事でした。
シルエットを崩さないために考えた事は、ウエストのゆとり量を少し大きめに設定したことでした。
ウエストを絞り過ぎますと、ポケットの袋地の厚みも気になる事を考慮して、今回お腹周りを絞り過ぎずメンズそのもののパターンを活かし、少しゆとりを意識してお作りしました。

富田: Sさん、ウエストにゆとりを少し入れましたけど如何ですか?
Sさん: お台場仕立ての生地の厚みも少し感じるけど、羽織り感覚で着るイメージだし、
釦も殆ど留めないから気にならないわ。

Sさんの求めていた羽織感覚で着るイメージと袋地の厚みのことが気になっておりましたが、いい意味で合致して良かったです。

以上、
『ジャケットの裏側にときめく仕掛けを施したWジャケット』は如何でしたでしょうか。
内ポケットも通常のポケットより、お台場仕立てにすることで、高級感と存在感を増すのが、オーダーの良さですね。
またメンズパターンを使用して女性的な雰囲気を出すことも可能です。
これでますます、お仕立てのバリエーションも広がり更にオーダーを楽しめますね。
ご興味のある方はご遠慮なくお問合わせ下さい。

Sさん、今回はご協力頂きましてありがとうございました。
このジャケットを着て心ときめく1日を過ごしてくださいね。

それでは次回もお楽しみに。


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