こんにちは、東京店の富田です。
6月に入り、じめじめした梅雨入りも、間もなくといったところですが、皆さん如何お過ごしでしょうか。先月には早くも夏日が続き、これから暑さに負けない身体作りも心掛けたいですね。
それとあわせて、皆さん夏服の準備はもうお済ですか?
夏服の準備は急にはできませんから、早めのご用意をオススメします。
そこで今回は、夏服をいち早くお仕立て頂きたいと思い、春夏素材の代表候補ともいえる《機能性素材》を中心とした『春夏素材で作る全身コーディネート』を
ご注文頂いたYさんをご紹介します。
今回は、Yさんからこんなリクエストを頂いたところから始まりました。
なるほど、今回はベストがポイントになりそう。
Yさんが言う《他店だとメンズの型紙を使用》については、男性と女性とでは《胸の膨らみ》だけを取り上げても身体は全然違いますから、ベストの打ち合いを変えただけでは、身体に合うベストにはなりません。
富田からの返信:
そして来店当日、Yさんはキリッとスリーピースでご来店されました。
シャツの衿元にはアスコットタイを結び、袖口はダブルカフス&カフスボタン。
なかなかレディースの方でここまでキメてる方はいらっしゃらないのでかなりのスーツ好きとお見受けしました。(お写真を撮らせてもらえばよかった)
Yさんのご注文までのストーリーをご覧頂く前に、先ず皆さんに、メンズのベストとレディースのベストについての違いをご説明します。
メンズパターン | レディースパターン |
袖ぐりも広いまま |
二の腕に対して綺麗に袖ぐりに収まる |
脇から腕が覗く |
袖ぐりが脇にフィットし脇から胸が見えない |
釦位置が合わない | 胸の高さに合わせて釦位置を調整できる |
身体に沿わない | 身体にそったシルエットになる |
男性と女性とでは、胸の膨らみはもちろん、骨格も全然違います。
腕も太いので袖ぐりも広くなります。
身長差もあることから、ウエストのくびれ位置も変わってしまいますので、とにかく身体にそわせることが大切なベストは、メンズパターンを使っては綺麗に仕上がりません。
ここでYOSHIMURA&SONSで取り扱っているレディースベストについてご紹介します。
ベストのモデルもなんと《2型》。正直驚く方もいらっしゃると思いますが、正直2型も型紙を用意している店舗は他にないと思います。
それぞれの特徴がありますので、これからベストをご検討されるてる方は、是非比較しながらご検討頂ければ嬉しいです
以上が、YOSHIMURA&SONSで取り扱うレディースベストの概要ですが、ここで特にお伝えしたいポイントは《前下がり》です。
ベストはボタン数の違いでも雰囲気が変わりますが、レディースは、スカートやパンツと選べる分、アイテム別やお好みに合わせて前裾の違いを選べるのもポイントです。
『女性には女性用のベストパターン(型紙)』を使い、Yさんのべストのお悩みは、解決できそうです。
さて、解決の糸口が見えたところで、次に生地について話を進めていきました。
Yさん: | 「ベストが安心してオーダーできそうだから、ベストと組み合わせてスカートも着れる生地で何かオススメないですか。 エレガントに見えて、軽くて涼しくて柔らかそうな生地がいいかな。」 |
富田: | 「ちょうど、軽くて涼しくて柔らかなご希望に近い良い生地がありますよ。」 |
そこでご提案したのは、今季初めて当店でリリースされた機能性素材の中から超軽量の《Dot Airサッカー》#グレー。
なんと目付101gと驚くべき軽さ。この《エアリーな軽さ》を活かせば、ベストとスカートのシルエットをキレイに、軽く、夏らしく見せることができそうです。
また、機能面でも、軽い、涼しい、シワになり難い、そして家庭洗濯ができる事も非常に頼りがいのある生地です。
私たち女性目線から見ると、もちろん機能面(特に洗えるって助かる)も大切ですが、生地の風合いや軽さから影響するベストの雰囲気やスカートのシルエットは大事なポイントです。
Yさん: | 「この軽い生地なら《フレアースカート》のシルエットも綺麗に出そう、これにしよう!」 |
《エアリーな軽さ》を活かして、これならベストの雰囲気も優しく見え、《フレアースカート》のシルエットもふんわりと表現できます。
機能性素材と言えば、やはり《機能面》(ストレッチ性、防シワ、洗濯) だけに注目しがちですが、このエアリーな軽さでフレアースカートのシルエットがどう表現されるのか?大変興味深いところですね。
また、このエアリーな雰囲気はどう作られるのか?
機能性素材は基本化繊が中心ですが、ある素材が入ったことで、軽さ、柔らかくなり、それが今回の、これから後程ご紹介するのコーディネートの
肝だったりしますので、忘れないでくださいね。
さて、生地とスカートが決まったところで、次にYさんが選んだベストについてのご紹介です。
Yさんが選んだベストのモデルは、Vゾーンや前下がりが標準的なL1の〝クラシックモデル〟を選ばれました。
理由としては、2型共、第一ボタンの距離は動かせますが、こちらのモデルの方が動かせる距離が広く、そのため胸元の開き加減や、バストの高さに合わせて釦位置を指定できるからです。
この《バストの高さに合わせて釦位置を指定できる》ことが、胸をベストに収まりよく綺麗に見せるための、非常に重要なポイントです。
ベストもパターンも生地も決まり、早速採寸に入ろうとしたときに、
Yさん: | 「ベストとスカートが決まったけど、せっかくだからそれに合わせて夏用のジャケットも作りたいなぁ」 |
富田: | 「そうですね!夏のフルコーディネートとしてジャケットもいきましょうか」 |
Dot Airサッカーのベスト&スカートに合わせるジャケットとしてどの素材で提案しようか、機能性には機能性素材で揃えようかな。
それとも、異素材との組み合わせは難しいかなぁと提案に迷い始めていたところ、
富田: | 「そうだ、こちらの生地は如何ですか?」 |
提案したのは《ロロピアーナ・サマータイム》の濃いローズ系ピンク。
ロロピアーナのサマータイムと言えば、春夏のエレガントなジャケット素材として代表する生地です。その魅力はウール、シルク、リネンの三者混素材。
ドレッシーなウール素材をベースに、エレガントさを与えるシルク、通気性に優れた清涼感のあるリネンを混紡することにより独特な風合いを表現しております。
異素材との合わせ技は難しいかなと思っていましたが、先にご紹介したDotAirサッカーの素材はポリエステルを中心とした機能性素材には珍しく、
コットンが23%入っています。
《Dot Air》という名の通り軽いのはもちろんですが、柔らかさを感じる正体は《コットン》です。
《軽くて柔らか》、機能性素材は一般的にポリエステル100%が多く、無機質な表情になりがちで、カジュアルやスポーティーにも見えますが、それを完全にカバーし、天然素材と化繊素材の組合せがマッチしました。
それでは、Yさんがテイストの違う2種類の素材をどう料理したのか、ここからはデザインを見ていきましょう。
基本デザイン | ダブル仕立て4×2ボタン |
---|---|
衿型 | ピーク衿 |
ベンツ型 | サイド |
腰ポケット | 普通 |
胸ポケット | 箱 |
袖口仕様 | 3ケボタ+本明き |
裏仕様 | 総裏 |
★肩パット | 無し、マニカカミーチャ仕様 |
裏地 | プリント裏地UR23-101(GARDEN #グレー) |
★オプション指示 | 内ポケット+タバコポケット左右付 |
★肩パット無し:マニカカミーチャ仕様
肩先がシャツ袖のように似せた、軽さとカジュアル感のある袖の作りです。
今回仕立てる生地のイメージの軽さや雰囲気にピッタリです。
★内ポケット+タバコポケット左右付き
基本レディースの標準の仕立てには内ポケットがありません。
それは物をいれるとシルエットが崩れるためですが、Yさんは使い勝手を優先してポケットを全て(計4個)付けました。
内ポケットは胸裏辺りに付き、丁度胸の膨らみと重なります。
タバコポケットは腰ポケット裏辺りに付きます。
それでは、お待たせいたしました。Yさんの仕上りはこちらです。
見るだけでも<軽い>印象が伝わってきますね。
またコットンが23%入っているため、化繊だけでは表現できない柔らかい雰囲気も感じます。
今回キーアイテムである《ベスト》は釦位置を細かく設定した事で胸の高さとV明きのバランスが良く、Yさんの身体に合った女性らしいベストに仕上がりました。
胸の高さに合わせて釦位置を調整することができるのは、オーダーだからこそ出来る事です。
本来ベストはカチッとした印象になりますが、超軽量の《エアリーな軽さ》を活かした柔らかい雰囲気を演出しフレアースカートの揺れ加減とフレアー感を綺麗に表現出来ました。
また、Yさんはスカートの膨らみを効果的に演出するため、スカートの下にパニエかドロワーズを穿かれていたので、よりスカートのシルエットに華を添えました。
そして最後は、夏のコーディネートの色どりを加えているエレガントな、サマータイムのジャケットをご覧ください。
艶やかな色出しのジャケットに目が釘付けになりそうですね。
上品でありながら存在感もあり、またロロピアーナらしい天然素材の美しさを最大限に活かした美しく発色の良い生地は、メンズライクなWジャケットを女性らしく華やかに魅せてくれています。
以上、今回は《春夏素材で作るベストをポイントとした全身コーディネート》をご紹介しましたが如何でしたか。
機能性素材と天然素材の組み合わせも、素材の特性を活かせばよく合いますよね。
そしてコーディネートに合わせたアスコットタイやインナーも上手く取り入れることで、自分らしさも更に表現されてYさんの着こなしはとっても参考になります。
Yさん、この度はご協力ありがとうございました。
これからまだまだ暑くなる夏、自分らしくお仕立てして、楽しく夏を乗り切りたいですね。
それでは、次回もお楽しみに。