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ボレロをテーラリングの言葉で ― Summer Jacket のご提案


こんにちは。大阪店の西脇です。
梅雨入りも、もうまもなくとなりました。梅雨の時期は湿度が高くて、やはり少し憂鬱な気分になってしまいます。でもそんな時こそ、梅雨が明けたあとの強い陽射しを思いながら、爽やかな夏のジャケットについて考えるのはいかがでしょうか。
今回のレディースコラムでは、私が夏のジャケットとしてお仕立てした、ボレロのようなジャケットについてご紹介させていただきます。
そして、大阪店公式のinstagramでは既にご紹介しておりますが、DIPLOMAT(サンプル帳)には掲載されていない夏のジャケット生地についても、改めてご紹介しますので、是非最後までお付き合いください。

1. ボレロのようなジャケット

今回、私がサマージャケットとしてお仕立てしたのは、ノーカラー、前釦なし、ショート丈のジャケットです。
袖釦も腰ポケットもつけておりません。とてもシンプルで、ボレロのようでもあります。
お仕上がりはこちらです。

- ボレロの出自
そもそも、ボレロという衣服の出自は、舞踊と闘牛にあります。18世紀末のスペインで成立したボレロ舞踊の衣装、そして闘牛士が「光の衣装(traje de luces)」の一部としてまとうチャケティージャ——いずれも、舞台や闘牛場という非日常の場で、身体の動きを引き立てるために誂えられた装いでした。

極端に短い丈、留めることのない前合わせ、そして金糸の刺繍、ブレード、ビーズによる執拗なまでの装飾。
それは身体を覆うための衣服というより、身体を見せるための額縁であり、観客の視線を集めるための舞台装置でもあったのです。

ボレロにとって装飾は過剰ではなく必然であり、夜と祝祭のなかでこそ生きる衣服でした。のちに19世紀末から20世紀にかけて女性服として発展していく過程でも、その装飾性とハレの場との結びつきは長く受け継がれ、イブニングドレスやウェディングドレスに寄り添う「華やかな羽織り」としての位置を保ち続けることになります。

今回、私がお仕立てしましたジャケットは装飾がなく、テーラリングによって、ボレロのもつ“背景”を変換したといえます。
テーラリングとは、紳士服に由来する構築の文法です。芯地、裏地、本袖の縫い付け、ベントの有無——一つひとつの要素が意味を持つ、記号の体系。
その文法でボレロを書き直したとき、装飾の代わりに「構造」が立ち上がってきます。
夜の服から昼の服へ。装飾の服から構造の服へ。ハレの服から日常の服へ。

- 生地とディティール
今回使用した生地はLoro Piana Zelander です。

光沢感が控えめで、軽く、ストレッチ性があります。こちらはスーツでのお仕立てだけではなく、このようなサマージャケットのお仕立てとしてもおススメです。
ビジネスシーンからプライベートまで幅広く活躍するジャケットになります。ディティールは、肩パットなし、腰ポケットはなくしましたが、内ポケットはつけました。袖釦はなくして、ターンナップしても着られるようにスリットを入れています。
ノーベントでショート丈、でも前身頃のダーツが、テーラリングを語っています。

ノーカラーの利点は、かしこまりすぎない雰囲気にあると思います。少し表情が柔らかくなり、様々なスタイルに溶け込みます。実際、着心地も軽く、シワになりづらいことを体感しています。コーディネートをご参考までにご紹介いたします。


ビジネス Wカフスシャツ / Lassiere Mills グレイスラックス


ワンピースの上から


カジュアル  T シャツ/ フェード ワイドデニム

2. サマージャケットにおススメの生地

続きまして、Loro Piana Zelander 以外でサマージャケットにおススメの生地をいくつかご紹介いたします。
装飾性ではなく、軽さ、しなやかさ、夏の陽の中でより輝く“日常”のための生地です。

― Ermenegildo Zegna “NOVARA”


@yoshimura_sons_osaka Instagramより

TESSITURA DI NOVARA(テッシトゥーラ・ディ・ノヴァラ)は、1932年にイタリアで創立されたシルク専門メーカー。80年以上にわたって磨かれてきたシルク織物の技術を高く評価したエルメネジルド・ゼニアが2009年に同社を買収し、ゼニアグループのシルク部門を担う特別な存在として、現在も唯一無二のラグジュアリーファブリックを生み出し続けています。
NOVARAの真骨頂は、シルクと希少素材のブレンドにあります。ウールとシルクのブレンドにおいても、ウールメインのとき、シルクメインのとき、それぞれの生地の風合いの出し方が絶妙で、素材の特性を最大限に引き出す技術力は他の追随を許しません。
今回ご紹介するのは、WOOL 76%・SILK 24%で織り上げられた生地です。ウールが生地に張りと通気性を与え、シルクがしなやかな落ち感と上品な光沢を添えています。手に触れた瞬間の肌触りの良さも格別で、袖を通すたびに素材の存在を感じさせてくれます。
軽やかな着心地でありながら、表面に浮かぶ繊細な艶が夏の光をやわらかく受け止めてくれる——纏う人の佇まいに、静かな品格を宿してくれる素材です。
ご紹介するカラーは2色。

ひとつは、夏の海や空を想わせるターコイズブルー。シルクの光沢が色に深みを与え、白いパンツやワンピースに重ねれば、それだけで季節の主役になってくれる一着に。
もうひとつは、肌に寄り添うようなやさしいサンドベージュ。どんな色のボトムスにも調和し、縦に流れる美しいシルエットを描いてくれる、長く愛用できる定番カラーです。
ゼニア・ブティックで展開される既製品ジャケットの参考価格は、40~80万円程度。
この生地のジャケットが84,700円(税込)でお仕立て可能です。
スポットで入荷しており、在庫に限りがございますが、ぜひこの希少な機会をお見逃しなく。
こちらはDIPLOMAT(サンプル帳)には掲載ございません。

― Loro Piana SUMMER TIME 
こちらの生地は一部DIPLOMATにも掲載しておりますので、ご存じの方も多いですが、改めてご紹介いたします。

Wool 68% Silk 20% Linen 12% の三者混紡の生地。清涼感がある繊細な光沢があり、その軽さが魅力です。無地であっても、素材感がありのっぺりしない表情です。素材そのものが持つ品格が、仕立て上がった一着にそのまま宿ります。
DIPLOMATには掲載のないお色も店頭にはございます。是非お気軽にご来店ください。
レディースの方からはラベンダー色が1番人気です。

ジャケットというと堅苦しい雰囲気が苦手、という方もこの素材なら繊細な柔らかさが醸し出されます。また、生地自体が軽いので、女性のお客様にも非常に喜ばれます。
名前の通り、夏のジャケット本命に相応しい生地です。

― FRATELLI TALLIA DI DELFINO  “PORTOFINO”
FRATELLI TALLIA DI DELFINO(フラッテリ・タリア・ディ・デルフィノ)は、1903年にイタリア・ビエラ地方で創業された、100年以上もの歴史を誇る最高級服地メーカー。ゼニア、ロロ・ピアーナと並ぶ世界3大ミル(毛織物工場)の一つに数えられる、知る人ぞ知るプレステージブランドです。
“PORTOFINO(ポルトフィーノ)”は、イタリアン・リヴィエラの避暑地ポルトフィーノからインスピレーションを得た、ドルチェ・ヴィータへのオマージュとして生まれた、夏のためのコレクション。ウール、シルク、リネンを巧みにブレンドした生地は、ウールが上品なエレガンスと体温調節機能を、シルクが柔らかな光沢を、リネンが涼やかな表情を添え、夏の日差しのなかでも美しく軽やかなシルエットを保ちます。地中海の自然から着想を得た、深いブルーから砂色、淡いグリーンまで——爽やかで洗練されたカラーパレットが、この生地ならではの魅力です。

DIPLOMATにも掲載の生地はこちら。↓

PORTOFINO グリーン/レンガ Wool 45%, Linen 45%, Silk 10%

DIPLOMATには掲載していないスポット入荷した生地はこちら。↓

PORTOFINO
ベージュxグリーン チェック Linen 75% Wool 25%
ブルー 無地 Linen 75% Wool 25%
サックス ウィンドウペン Wool 69% Silk16% Linen13% Nylon 2%

3. 最後に

天然素材は、着るほどに育ちます。一年、二年と袖を通し続けるうちに、生地は体に沿い、色はわずかに深みを増す。特にリネンが混紡されている生地は程よいシワ感も出て、雰囲気が出てきます。そうして「自分のもの」になっていく過程もまた、オーダーの醍醐味ではないでしょうか。
長く愛着を持って、どこへでも連れていける一着。それはきっと、素材の美しさと、体に合った仕立てが重なったときに生まれるものだと思っています。 ぜひ、唯一無二の夏のジャケットのお仕立て、お気軽にご相談ください。 皆様のご来店を心よりお待ちしております。


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