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アンサンブルの奏で


こんにちは。大阪店の西脇です。
日ざしが少しずつ強くなり、着るものもより軽やかにしたい季節になりました。

とはいえ、半袖一枚では少し心もとない場面もあります。冷房の効いた室内、夕方のわずかな肌寒さ。軽やかさと、きちんと感。その両方を一日のなかで行き来できたら——そんな思いから生まれたのが、今回ご紹介するアンサンブルです。

前回のコラムでは、ノーカラーのショート丈のボレロ風ジャケットをご紹介しました。肩の力を抜いて羽織れる、それでいて品のある一着です。 仕立て上がったあの一着を眺めているうちに、同じ生地でワンピースもあったなら、と思うようになりました。そこで今回、実際に仕立ててみました。
同じ生地のワンピースとボレロ。別々にも着られる二着が、合わせるとひとつのアンサンブルになります。

今日は、この組み合わせがもたらす楽しみについて、お話しさせてください。

1. ワンピースという一枚

まずは、ワンピースから。
半袖で、身体の線にそってすっきりと仕立てた、ミモレ丈の一枚です。首もとは詰まりすぎない、横にひろがるネックライン。鎖骨のあたりをやわらかく見せてくれます。装飾がないため、シルエットそのものがデザインになります。

一枚で完結しているぶん、ワンピースのお仕立てはスーツより難しい面があります。
上下に分かれていれば肩・胸・ウエスト・腰それぞれを別々に追い込めますが、一枚だとそれらを一度に、しかも縦の流れを乱さずに整えなければなりません。

「途中で切れる」場所がないので、補正の逃げが効かないわけです。だからこそプリンセスライン、ウエスト切替えの位置やゆとり量などがとても重要です。

オーダーならではの、ウエストの位置、ゆとり量、丈の長さ、スリットの長さ、肩や腕の収まり。既製では妥協しがちな細部が、身体にそっています。だからこそ、一枚さらりと着るだけで、スタイルが完成します。

ポイントは、ノースリーブにしなかったことと、膝が隠れる丈にしたことです。
それによって、一枚で着ていけるシーンがより増えると考えました。

着心地にも触れておきたいと思います。生地は、前回もご紹介したLoro Piana Zelander軽く、わずかにストレッチがきいていて、一日着ていても疲れにくい。
ワンピースは、身体全体をゆだねるような服といえます。
だからこそ、この軽さとしなやかさが、そのまま心地よさになって返ってきます。気温の上がる季節や、少しきちんとした場所に行くときも、心地よく寄り添ってくれる一枚です。


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2. ボレロという、もう一枚

そこに合わせるのが、前回ご紹介したボレロ風ジャケットです。

襟をつけず、丈を短めにとったこの一枚は、ウエストの位置を高く見せ、全体の印象を軽やかに整えてくれます。

ノーカラーであるので、ワンピースと重ねても首もとがすっきりと収まります。かっちりとしたテーラードジャケットとはひと味違う、優しい雰囲気が持ち味です。

オリジナルプリボレロをテーラリングの言葉で ― Summer Jacket のご提案ント裏地

3. 重ねて、奥行きを

そして、ここからがアンサンブルの楽しみです。

ワンピース一枚でも、装いは十分に決まります。けれど、そこにボレロを羽織ると、装いに芯が通る。同じ生地だからこそ、馴染み、また奥行きが出ます。
重ねることは、装いに陰影を添えること。同じ色、同じ織りでも、光の当たり方が変わり、平面だった一着に深みが生まれます。

アンサンブルという言葉は、もともとフランス語の “ensemble” で、「一緒に/全体」を意味します。

スーツとの本質的な違いは、ベースが一枚続きのワンピースであること。
スーツは上下が互いに依存して初めて「完成」しますが、アンサンブルの土台であるワンピースは、それ単体ですでに完結しています。

だからアンサンブルとして上に重ねるボレロやジャケット、カーディガンは、構造的には「なくてもいい」存在です。けれど、印象を決めるのはむしろこの羽織りもののほう——つまり羽織りものは機能においては任意的、印象においては決定的という、面白い二重性を持っています。

これは、音楽の “アンサンブル” と共通して感じることがあります。
音楽の、 “良いアンサンブル” とは、それぞれが個性を消して均質に溶けることではなく、むしろ、強い個性を持った奏者たちが、互いを聴き、ひとつの方向に合意している状態のことだと思います。
均質化しすぎると音楽は無個性で平板になり、個性がぶつかり合うだけなら混沌になります。その緊張が、“アンサンブル”に生命を与えます。

ワンピース一枚でも、ボレロ単体でも個性はしっかりあります。けれど、その個性はぶつかり合うことなく、いい意味での緊張感をもったまま、目指すスタイルという共通言語によって、“良いアンサンブル”となります。

既製の服では、ワンピースとジャケットが同じ生地で揃い、しかもどちらも身体に合う、ということはなかなかありません。オーダーだからこそ、二着をはじめから一組として整えられます。重ねたときに「後から足した」ような収まりの悪さが出ないのは、そのためです。

着回しの幅も、アンサンブルの心強いところです。
暑い日には、ワンピースを一枚で。あらたまった日には、ボレロを重ねて。そしてボレロは、別のスカートやパンツと合わせても、すっと馴染んでくれます。一着を、その日の自分に合わせて選び直せます。

朝晩の冷え込み、屋内外の温度差、訪れる場所のあらたまり具合。一日のなかで装いに求められるものは、思いのほか細やかに移ろっていきます。アンサンブルは、その小さな変化に、無理なく応えてくれる装いです。
流行に左右されず、長く付き合っていける表情です。

4. 最後に

もし、お手持ちのワンピースやジャケットに「あと何かあれば…」と感じることがあれば、アンサンブルを思い出していただけたら嬉しいです。
一枚で軽やかに、重ねて端正に。同じ生地の二着が、その日の気分や様々な場面にそっと寄り添ってくれます。

今、春夏の@Saleが開催中です。
残暑まで活躍するアイテムをぜひ、この機会にお仕立てください。
皆様のご来店を心よりお待ちしております。


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