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礼服オーダー指南


今回はちょっとシリアスというかナーバスなお話

私、只今礼服を新調しております。
何故かと申しますと、これまで着ていた物がサイズがきつくなり、お直しではしっくりくるレベルにまで仕上げるのは難しいからであります。
50代に突入すると代謝が落ち、増えることはあれど減らすことはなかなか難しく、ならば新しく仕立てた方が早い、ということなんですが、そもそもこれに至った経緯と言うのが、私と三回り違う母方の叔母が最近体調が芳しくないことと、私の父もここ最近体調を崩し、入退院を繰り返しているからであります。

このようなプライベート且つデリケートな事をこの場でお伝えするのは本当はよろしく無いのかもしれませんが、誰しも一度は経験するであろう事であり、然るべく時期に備えて用意しておくことも大切であろうと思い、今回の題材にした次第です。

母方の叔母が今年で88歳、私の父で77歳、人生100年時代と言われ、非常に元気な方も多いですし(100歳以上の方が確か3万人いらっしゃるとか)、年齢だけみるとまだ若い部類に入るのかもしれません。
ただ人間、70歳を過ぎれば身体のどこかしらに不調をきたすことも増えてまいりますし、生命力の強さは当然個人差に因りますから、叔母も父もいつ鬼籍に入ったとしても何ら不思議ではありません。

このような理由から今回礼服を新調するに至った訳ですが、先述の通り、何時かは経験することですし、誤解を恐れずに申し上げると、いざ起きてしまえば衣装の準備云々の前にしなければいけないことが山程あるはずですから、事前に備えることにより少しでもリスクを減らせるのであれば、それに越したことは無いと考えたからであります。

そこで今回は礼服を仕立てるにあたり、ポイントとなることを今正に仕立て中である私の礼服を基にご紹介したいと思います。

もしまだ私と同年代の方できちんとした礼服をお持ちでない方はご参考までに御覧頂ければ幸いです。

改めて申し上げますが、決して待ち望んでいる訳では無く、然るべく事に対しての備えとしてのご紹介でありますので、誤解の無きようお願い申し上げます。

1.生地について

まず生地について、礼服には当然のことながら専用の生地を使用致します。
ビジネス用のブラックと何が違うのか?と問われれば、一番の違いはその黒味の濃さです。
画像を御覧頂くと一目瞭然かと思いますが、上の礼服専用生地の方が遥かに濃い黒であることがお分かり頂けるかと思います。
礼服の生地を選ぶ際の最大のポイントはその黒さです。
ウールにポリエステルやモヘアなどの異素材が混紡されると若干黒味が損なわれるので、お薦めはウール100%、若しくは当店では取り扱いがありませんがポリエステル100%の物を選ぶと良いでしょう。

礼服専用生地は春夏用、秋冬用、真夏以外の3シーズン用と大きく3つに分類されます。
春夏用、秋冬用は立場上そういった行事に頻繁に列席される方(例えば政治家の方)がそれぞれご用意される事が多いです。
一般の方は真夏以外の3シーズン物で十分対応可能です。
(因みに私が選んだ生地もこちらの3シーズン物となります)
因みに何故真夏以外なのか、と申しますと弔事は暑い時期より寒い時期に多くなる傾向にあるからです(一般論です)。

ただ最近は弔事をお寺ですることもめっきり少なくなり、大体空調の効いたセレモニーホールで開催することが多いでしょうから、真夏に着たとしてもそこまでナーバスになる必要はないでしょう。

2.基本デザインについて

最近は年代に関わらず、9割程の方がシングル2Bをお選びになられます。
ただ地方ないし年配の方の中では未だに礼服=ダブル、という考えが残っていることも事実
これはどちらも間違いではありませんが、シングル2Bの方が無難、であります。

因みに礼服は冠婚葬祭兼用にされる方がほとんどでありますが、同じ黒の生地を使用したベストは弔事専用ですので慶事で着用するのはNGです。
慶事の場合のベストはシルバーグレーでなければなりません。
スリーピースをお考えの方はこの点には十分お気をつけください。

3.各デザインについて

礼服を仕立てるにあたり、各デザインのお約束事をまず羅列致しますと,,,,,
ラペル廻りのステッチ不要、ノーベント、袖仕様はレギュラー3B重ね無、パンツの裾仕様シングル、この4点は必ず守るべき約束事であります。
それぞれの根拠、と問われると論理的に説明するのは難しいので割愛致しますが、百貨店等のフォーマル売り場で販売されている礼服に、ステッチがあり、センターorサイドベンツが入っており、ビジネススーツでは定番の仕様である重ね4Bであることはまずありません。
裾シングル仕様も袖の重ねと一緒で、ダブルの場合は【重なる】を連想させてしまうのでNGです。

オーダーの醍醐味である【選ぶ楽しさ】はありませんが、そもそも弔事であれ慶事であれ派手に着飾っていく場ではありませんから、常識ある装いを最優先にお考えください。

ジャケットの裏仕様及びパンツのタックについては、背抜きor総裏、ノータックor1,2タックはこれはどちらでもOKです。
特段制約は無いので、ご自身のお好みで決めて大丈夫です。

4.裏地及びボタンについて

まず裏地ですが、これについて私はお客様殆どの方にジャケットの胴裏、袖裏、パンツの腰裏、全て黒で統一するのをお薦めしております。
これは何故か、と申しますと、本来礼服の裏地はジャケットの袖裏とパンツの腰裏は純白の物を使うのが正式であるとされています。
ただこの仕様は弔事専用であるとの説があり、実際にこの仕様の礼服を慶事にお召しになられて一言注意を受けた方がいると聞いたことがあります。
根拠は不明でありますが、もし上記のことが本当であるのであれば、全て黒に統一しておけば何ら問題ありません。

続いてボタン、こちらは黒一択である事に間違いありませんが、本水牛の黒はツヤ有りと無しの2種類があります。
生地の欄でお伝えしましたが、礼服は黒味が重要でありますので、より黒味が強いツヤ有りをお選びになればよろしいでしょう

以上、取り急ぎ礼服をお仕立てするにあたってのポイントをご紹介致しました。

先述しておりますが、礼服のお仕立ては制約が多く、色々と自分の好みの1着を作り上げる、と言ったオーダー本来の魅力には欠けますが、慶弔、どちらでもきちんとサイズのあった礼服で列席したいものです。
礼服はどのタイミングで仕立てるか、悩ましい部分はありますが、必要を感じた瞬間が仕立て時であると言えるかと思います。
いつ何時そのような事が起きても慌てることなく対応出来るようお備えください。


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