2023年2月10日更新 執筆者:東京店 河本壯真
立春も過ぎ暦の上ではいつの間にやら『春』ですね。 しかし、まだこんなにも寒いのにもう春なのか。。。と一体これ考えた人って、どんな感覚でこの時期を春としたのでしょうか。 不思議だな。と別にその理由を知ったからとて、何もないのですが違和感を覚える東京店の河本です。 立春のこの時期は気温が上がったり下がったりと、体調を崩しやすいでしょうから、春だからとて油断せずに、毎日過ごしていきたいところですね。 さて、今回のテーマは『春』ということで、季節が移り替わる時に必ずある行事《衣替え》もある事ですし、これから社会人になるフレッシュマンにもこれを機にオーダースーツの魅力について知ってもらい、『オーダースーツっていいな。』と感じていただければと思います。 前回は基本である正しいスーツの着方についてお話をさせていただきました。
ただ、実は基本の着方を知っているだけでは、満足度の高いスーツを得ることは出来ません。 実際に既製服でサイズはあっているのだろうけど、どうもスーツが体に合っている感じがしない、という方も多いのではないでしょうか。中にはオーダーを経験した方も感じている人もいるのでは。 そもそも一言でオーダーと言っても色々と種類があるのは皆さんご存じでしょうか。 下記にそれぞれの特徴をまとめた表をご案内しますので是非ご覧ください。
既製服を除くと、オーダーは色々種類があり、それぞれに特徴(メリット、デメリット)があるのが分かるかと思います。 オーダーするなら完璧を求めたい!と言う方はフルオーダーをお選びいただければきっと満足はするのかなと思いますが、反面で価格が非常に高く(大体20万~)時間もかかることから、なかなか一般人には手が出せません。 かと言って既製服の延長にあるパターンオーダーは物足りないという方は、私たちが取り扱っている『イージオーダー』をお試しください。 そして、ここからは少しイージーオーダーについて掘り下げてご案内いたしますと、イージーオーダーも一定の型紙(パターン)を使っているところではパターンオーダーと一緒ですが、どこが違うかというと、『複雑な体型補正』が出来ることが最大の違いです。 一方で、このイージーオーダーという名称は今から30年ほど前から言われ始めた表現ですが、当時はパターンオーダーは存在せず、存在したのはフルオーダーのみ。 そのフルオーダーを手軽に楽しめるということから『イージー』の名前が付いたものです。 ですが、30年の時代の経過と共に、イージーオーダーは本来はフルオーダー寄りのオーダーシステムだったものが、『イージー(簡易な)』のイメージが浸透してしまい、本来の良い部分(十分な体型補正)をしないまま販売するお店(販売員)の増加につながり、店ごとに品質に大きな差が出るようになってしまいました。 それ故、当社のように愚直に体型補正について説明を加える販売店は珍しいと思います。 (嘘だと思われる方は、ご自身がオーダーされる際に、自分の体型的特徴はどうですか?と聞いてみると良いと思います。しっかり把握されていればきちんと説明できますし、縫製の仕様書にもそれは記載されますから。こういった事でお店の技量を確認されるのも良いと思います。) さて、そこでイージーオーダーならではの『体型補正』についてご紹介します。 体型補正は一般に10種類以上ありますが、今回はその中で代表的な物を4種類と少しマニアックなものを2種類ピックアップしましたので、是非最後までご覧ください。
これは、なで肩体型の方に入れる補正です。
※なで肩とは、肩の傾斜がきつく肩先が下がっている肩のこと。
なで肩体型の方が正体(既製品)のスーツを着ると次のような現象が起きます。
①ダキジワ>>> 肩が下がっていると、スーツの肩先が実際の肩に引っかかる位置まで生地は自然と下に落ちますよね。 すると、脇の下あたりに余分な生地がたまりシワになってしまいます。これをダキジワと言い、シワになるだけでなく、脇になにか当たっているような違和感もあります。
②衿抜け>>> 肩先が合うまで自然に生地が下へと落ちるということは、当然首回りの生地も引っ張られてしまいますので、首と首周りの衿の間に隙間が出来てしまいます。 これを衿抜けと言います。
では、ここになで肩補正を加えてみると、、、
脇の下あたりに①のようなダキジワは出ず、綺麗な見た目に。 また、脇の下に余分な生地のたまりが無くなったことで、脇に何か当たるような着心地の違和感も解消されます。
②のような衿抜けも無くなりましたね。衿が首にしっかりフィットしていると見た目のだらしなさが解消され、より着心地も良くなります。 もし、なで肩補正のみではこの衿抜けは治まらないと判断した場合は、追加で「衿ミツ入れ」という衿抜け解消に特化した補正を加えます。
これは、怒り肩体型の方に入れる補正です。
※怒り肩とは、なで肩の反対で肩が張っていて水平に近い様になっている肩のこと。
怒り肩体型の方が正体のスーツを着ると次のような現象が起きます。
①ツキジワ>>> 肩が上がっていると、スーツの肩先で生地が上へと引き上げられます。 そうすると、引き上げられた生地が「余分な生地」として後ろの衿の下に集まってしまいます。これをツキジワと言います。
②肩先のつかえ>>> 肩が上がっているため、正体のスーツを着ると、スーツの肩先と実際の肩が過度に接触し、肩こりの原因にもなります。
では、ここに怒り肩補正を加えると、、、
これは、反身体型の方に入れる補正です。
※反身とは、身体が後方に反ったような体型のこと。 我々は反身(はんしん)と言っていますが一般的には「反り身」と言った方が分かっていただけるかも知れません。 (お腹が大きい方は、出ているお腹を支えるために反身体型になることが多いです)
反身体型の方が正体のスーツを着ると次のような現象が起きます。
①ツキジワ>>> 怒り肩体型と同様に、反身体型の方でもツキジワが出るケースが多いです。 身体が後方に反っている故に、後ろの衿の下に生地が余り、ツキジワへとなってしまいます。
②前身頃の裾が上がる>>> 体が後ろに反っていると、前方は下から上へと生地が引っ張られるため、前身頃の裾が上がります。一方、後方は反対に上から下へと生地が垂れ下がってきますので、後ろ身頃の裾が長くなります。 そうすると、【前は短く、後ろは長い】といったバランスの非常に悪いスーツとなってしまうのです。
では、ここに反身補正を加えると、、、
怒り肩補正の時と同様に、①のような衿の下に見られるツキジワがしっかり解消されましたね。これで見た目もスッキリ綺麗に。 また、②のように前側の生地が引っ張られることで前身頃の裾が上がっていましたが、前身頃と後ろ身頃の裾の長さが統一されたバランスの良いスーツになっています。
これは、屈伸体型の方に入れる補正です。
※屈伸とは、反身の反対で身体が前傾しているような体型のこと。 (こういった体型の方は、概して猫背の方が多いです)
屈伸体型の方が正体のスーツを着ると次のような現象が起きます。
①衿抜け>>> なで肩体型と同様に、屈伸体型の方でも衿抜けが起こることがあります。 身体が前傾していることは、首も一緒に前に出ているわけですから、首と衿がしっかり密着せず、衿抜けをします。
②背中の横ジワ>>> 身体が前傾しているということは、その分背中が丸くなっているため、背中側の生地量が足りず左右に引っ張られることで、横ジワが出てしまいます。
③後ろ身頃の裾が上がる>>> 反身体型とは反対に【前は長く、後ろは短い】といった、これまたバランスの悪いスーツとなってしまいます。 (後ろの裾が上がることでベントも跳ね上がり格好の悪いシルエットになります)
では、ここに屈伸補正を加えると、、、
なで肩補正の時と同様に、①のような衿抜けも無くなり、首にしっかりフィットした綺麗な見た目になりましたね。 ②のような横シワも解消され、窮屈感を感じさせない自然なシルエットに。 もし、屈伸補正のみではこの横ジワは解消出来ないと判断した場合は、追加で「背巾出し」という更に背中のゆとりを出す補正を追加します。 また、反身体型と反対である③のような【前は長く、後ろは短い】といったアンバランスな裾も、前身頃と後ろ身頃の長さが統一されたバランスの良い裾になったことで、違和感のないスーツになりました。
これは、袖(腕)が後ろに引っ張られている方に入れる補正です。 身体が後方に反っていると、連動して袖も後方へ引っ張られますので、特に反身体型の方に多く、反身補正とよく一緒に入れる補正でもあります。 袖が後ろに引っ張られている方が正体のスーツを着ると次のような現象が起きます。
では、ここに袖にがしの補正を加えると、、、
これは、アンダーバストとトップバストの落差が大きい体型の方に入れる補正です。 (いわばマッチョな体型の方に入れる補正ということですね) このような方が正体のスーツを着ると次のような現象が起きます。
では、ここにゴージカットの補正を加えると、、、
体型補正についてご紹介しましたが、いかがでしたが? この体型補正が有ると無いとでは、スーツの着心地と完成度が大幅に変わってくるということを今回お分かりいただけたと思います。 実際に今お持ちのスーツで、気になるシワなどがあれば、今回の記事を参考に原因を追究してみるのも面白いですよ。 上記でもお伝えしたように、体型補正はご紹介した6種類以外にも本当に沢山ありますので、スーツを着用した際の悩みなどがありましたら、是非お気軽にお申し付けください。 それが、体型補正で解決するかもしれません。