2023年2月20日更新
皆さん、お久しぶりです、大阪店ShopMaster南浦です。 立春も過ぎ、寒さのピークもようやく越えた感がありますね。 北日本にお住まいの方はまだしばらくは雪や寒さとの戦いかと思いますが、西日本は少しづつ春に近づいている気配を感じます。 真冬のピーンと張り詰めた空気も好きなんですが、これからの1ヶ月、徐々に暖かくなるのにつれて身体がアクティブになる感じも良いですよね。 春になったら何処に行こうか、何か新しいことしようか、色々と欲求は湧いてくるのですが、いつも計画倒れで終わっているような,,,,, 私事ですがプライベートでここ最近色々あったので笑、今年の春こそは新しい事(趣味)を見つけようと思っています。 昨年末にBIKE(自転車)を買ったので、1人で何処か景色の良いところにツーリング、何て良いかもしれませんね。 さて、今回はお題目にありますように《ゼニア トラベラー》について皆さんにご紹介したいと思います。 そもそもは先日東京ShopMasterより "南浦さん、次のHP更新でゼニアのトラベラーについてウンチク語って欲しいんですけど、、、しかも掘り下げて" との依頼が。 第一声"なんちゅう難しいことを、、、、"(心の声) 正直ざっくりし過ぎててなかなか直ぐに筆をとる、もといタイピングを始めるまでかなりの時間が掛かってしまいました。 と言うのも"ゼニアとは1910年トリヴェロで~"とか"トラベラーとはビジネスマン向けの~"などのウンチクはNETで検索してちょこちょこっと書けばいいだけですので何も難しくありませんが、そんな調べれば分かるような情報はウチのお客さんは求めていないだろうし、じゃあ一体何を書けば良いのか、考えがなかなかまとまりませんでした。 ただそういう時はシンプルに考えるのがベストだろうと思い、まずこの紹介ページを作成する一番の目的はなんぞや?ということを考えてみたところ、2つの事を思いつきました。
1つ目は【これまでゼニアトラベラーのスーツを着たことが無い方に購買意欲を持ってもらうこと】
2つ目は【トラベラーのスーツを着た経験のある方に改めてトラベラーの魅力を伝え今後も選んでもらうこと】
目的が明確になれば後は簡単 それを達成するためのHow toを伝えれば良いだけですから そこで今回は私ミナミウラの私感でこの《ゼニア トラベラー》について色々とウンチクを語りたいと思います。 暇つぶし?笑、でご一読頂ければ幸いです。 もちろんこれを見てオーダーしてくれるのが一番嬉しいですけどね笑
【ゼニア トラベラー】でNET検索すると、名だたるテーラーの方々が紹介ページを作成していらっしゃいます。 それらの90%以上が、"強撚糸を使用して~"とか"シワになりにくく~"とか"最高級メリノウールが~"という内容がほとんどです。 これらはどれも決して間違いではありませんが、検索上位3ページ位まで目を通してみて感じたことは"本当にシワに強いのか?"と"トラベラーの魅力ってそれだけなんだろうか?"ということ 私は実際お客様より"シワに強い生地がいい"とリクエストされてトラベラーを薦めることはまずありません。 単純にシワに強いだけであればポリエステルなどの化学繊維が混紡された国産生地やバシバシガシガシに打ち込みの効いたイギリス生地を薦めるでしょう。 トラベラーがシワに強いというのはあくまでゼニア目線であり、最高級ラインである15milmil15、トロフェオを含めたゼニアオールコレクションの中で比較してシワに強い、ということに他なりません。 じゃあトラベラーの最大の魅力は何なんだ?と問われれば、私は【光沢感】と答えます。 "なんや今更光沢感かよ、そんなの知ってるよ" と思われた方も多いでしょう。 しかし光沢感1つ取っても大きく分けて3つの種類があるのはご存知ですか?
以上の3つが存在します。
1番目は割とポピュラーな生地ですので、一度目にされたり、実際お仕立てなさった方もいらっしゃるかと思います。 ただシルクを混紡するとウール100%よりシワになりやすかったりと堅牢さ(丈夫さ)が損なわれる側面があり、反面モヘア混は丈夫さやシワになりにくさはUPしますが、硬く粗い肌触りとなり、好き嫌いがはっきりと分かれる素材であります。 2番目のチンツ加工を施された生地は通常のビジネス用として目にすることは少ないかと思いますが(かなり前に当店でも一時期扱ってました)、ウェディング用衣装の生地と言えば分かりやすいのではないでしょうか。 これら2つの生地はウール本来の光沢感を引き出すのでは無く、光沢感が増す素材をプラスしているので、過分に光沢が出過ぎている感が否めません。 今回ご紹介するトラベラーの持つ光沢感は何を隠そう3番目の手法によって醸し出された物に他なりません。 光沢感の出し方1つ取っても、何かを加えることにより出す方法と元々素材の持つポテンシャルを引き出すのとでは与える印象が全く異なります。 上記1番目と2番目は足し算的考えであって、3番目の手法は引き算的考えと言えるでしょう。 生地の光沢感だけに留まらず、スーツのデザインや仕様等、品良く"良いスーツを着ているよな"と見る側に感じさせるのは、やはり"やりすぎ無い"ことが最も大切であります。
我々オーダー業界に携わる人間、ベタに言えば販売員、カッコよく言えばスタイリスト笑、の中で1つ共通認識というか、カラーに対する王道と言える考えがあります。 それは,,,,,, ロロピアーナ=ネイビー ゼニア=グレー これは何もロロピアーナのグレーがダメで、ゼニアのネイビーがイケてない訳ではありません。 ロロピアーナ、ゼニアそれぞれの生地の特徴とそれぞれの色の持つ印象が掛け合わさった結果なんです。 ロロピアーナの生地は打ち込みがあまく、非常に柔らかな風合いが特徴であり、どちらかと言えば女性的な作りが得意、事実プレタ(既製品)でもロロピアーナはメンズよりレディスのイメージが強く、それが生地に反映されていると言えるでしょう。 反面、ゼニアは同じイタリア製のファブリックでも男性的であり、同じく既製品でもゼニアはメンズonlyですので、優しく柔らかいイメージよりも男性らしい力強さを意識した作りとなっております。 これらを踏まえた上で色との相性を考えた時、グレーに女性らしさを感じられる方はあまりいらっしゃらないのではないでしょうか。 ネイビーの持つ爽やかさや高貴な印象がロロピアーナの物作りとがリンクし、よりそれぞれの良さが際立つということであります。 一方グレーは重厚とか威厳とか厳粛とか概ね男性的なイメージを感じられるかと思います。 ロロピアーナとネイビーの組み合わせ同様に、ゼニアの堅牢な作りとグレーの持つ男性的なイメージがリンクし、王道の組み合わせとなる訳です。
是非この点を意識して店頭でそれぞれの生地を肩に掛けて触り比べてみてください。 きっと私の言うことがすとんと心に落ちると思いますし、何より生地選びがこれまでよりもきっと楽しくなりますよ。
毎シーズン恒例のスペシャルセレクションでは各スタッフがそれぞれのブランドに見合ったお薦めデザインを詳細に提案しておりますが、ここでは敢えてデザインを決め打ちでお薦めするのでは無く、生地の持つ印象やスペックの点からオーダーするに当たっての注意点というか考え方、着方、見せ方についてご説明したいと思います。 上述の通り、巷(NET)ではやたらとトラベラーの堅牢さばかりを強調するのが見受けられますが、それはゼニアのコレクションの中での解釈であって、基本トラベラーは当店のラインナップの中では繊細でデリケートな部類に分類されると言っていいでしょう。 繊細でデリケートということは当然ハードユースには不向きであり、極力生地に対する負荷を掛けないようにしなくてはなりません。 となれば、行き過ぎたタイトなサイジングは相応しくありませんし、その日の行動予定がハードなものになるようであれば着用そのものを控えたりすることも必要でしょう。 これも上述しましたが、やはりトラベラーの魅力は光沢感であり、良いスーツを着ていると感じさせるということですから、そのスーツがシワだらけであったり、ハードユースによってシルエットが崩れていたりすると、せっかくの良さも半減してしまいますよね。 その点から逆説的に考えると、生地に過度な負担が掛からないように程良くゆとりも持たせたサイズ感、シンプルで不変的なデザインでの仕立て、そして自身を良く見せたい場に着て行く、これに尽きるかと思います。 言葉で生地の魅力を完全に伝えるのは無理ですが、今回語らせて頂いたウンチクを是非頭の片隅に置いてオーダーしてみてください。 きっとこれまでとは違ったオーダーの楽しさを感じると思いますよ。