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いい仕立ての見分け方・・・地直し(地のし)とは? |
仕立ての見分け方コーナーの充実を!という声が多く寄せられましたので仕立ての見分けかたを少し補強いたしますね。 今日の話題はちょっと本格的ですよ!(多分素人の方は全く気付かないことだと思います。) さて、皆さんは「地直し(地のし)」という言葉をご存じですか? 多分ご存じの方は洋裁をする人か業界の方ぐらいではないかと思います。 一般に生地は紳士物でしたら大体154センチぐらいの幅の反物で約50メーターを一反1単位として生産されます。 そしてメーカーさんは生地を織る時には、当たり前ですが「縦糸と横糸」を交差させて織りますが生地によってはソフトに仕上げるために糸の撚り(ヨリ)を甘くしたり目を粗く織っていく生地もあります。 (カシミヤのマフラーやザクッとしたツウィードなどが良い例で、特にカシミヤはソフトな風合いが命ですのでその分生地の織りを甘くしてソフトな風合いを出しているんです。) そして、このような「織りの甘い生地」は、製造上あるいは保管している過程で横からの力が加わるとどうしても横糸と縦糸に隙間があるため、生地そのものが曲がってしまったり縮んだりします。 極端な例ですが、生地を横糸に沿って正しくカットしても切ってみると実は長方形になる物が平行四辺形になるなんてことはざらにあるんです。
ですからスーツなどを仕立てるときには、この「無理な力が加わった」生地を元の状態に戻すことが必要になり、この作業を「地直し」といいます。
この生地の目を正す「地直し(地のし)」作業は、最近では仕立屋さんでもあまり直接は携わらない隠れた仕事です。
写真はジャケット用のざっくりと織った生地ですがこのとおり2つ折りの生地がピッタリと重なっていません。 |
実際には糸の目(筋)に沿って切っているので本当はピッタリ重ならなければならないのですが、こういったことが多々起こりるので「地直し」を必要があるのです。 ところでこの「地直し」をしないでそのままスーツを仕立てた場合、どうなるかといいますと長時間使用したり、雨に降られてスーツが濡れたりすると必ずといっていいほどスーツが変形します。 襟などは特に芯地と表地(生地)が縫いつけてありますので、生地が変形すると芯地との間に無理な力が加わり必ず歪みます。 私が最初にお仕立ての見分け方で「襟を見てください!」と指摘したのはこういうことが襟には表れるからなのです。 ちなみにどういった素材のものに地直しが必要かといいますと次の通りです。 (1)ウールなどの動物性天然繊維 (2)カシミヤ・アンゴラ・シルクなど高級素材 (3)綿などの植物性天然繊維 上のことからポリエステルなど化学繊維には地直しは不要ということになりますが、逆に言えば大抵のスーツの元であるウールの素材は全て地直しが必要だということでもあるんです。 ちなみにオーダー店では各専門店側で地直しをしなくてもオーダーメイド専用の各工場が黙ってても地直しをいたしますのでまず安心です。
逆に地直しまで行わない典型が既製服安売り販売店です。 さてさて、皆さんのスーツはいかに???(ちょっと意地悪ですか?)
当店では写真(生地の端に書いてある文字にご注目!)のように「SUPER100's」のような細い糸を使用した生地、「カシミヤ」混の生地などは必ず専門業者に地直しを依頼した上で工場へ縫製依頼いたします。 |