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ふんわり衿の妙味 |
最近お客さまからのご注文で衿の立ち上がり部分を「柔らかくふんわり仕上げて欲しい!」というご注文を立て続けに3件ほど頂きました。 | ||
(山村さん・岩崎さん・山口さん)
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なぜ急にこんなオーダーが多くなったのかな〜と思い、街に繰り出せば、確かに高級ブランドを中心に衿の立ち上がりをアピールしたスーツが多く、雑誌など(SHOPMASTERはMEN'S EXの愛読者)からの解説のおかげで最近仕立てに対する消費者意識が高まり、スーツのラインを意識した物が多くなっているようです。 でも、この「衿の立ち上がりの柔らかさ」はどこから来るのでしょうか? 皆さんはどう思いますか?素材とかまでは分かりませんよね〜。 ヒントは・・・ (1)衿の芯の材質? (2)生地の品質? (3)出来上がり時のプレス? 正解は・・・ 全てではないでしょうか?(これじゃクイズの意味をなしませんね〜。) ちょっと解説しますと、 |
(1)
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芯の材質・・・上着の胸の部分には表地と裏地の間に芯地という物が入っていて、これがスーツに適度なハリと重量感を与えています。 この芯地は、廉価な既製服で使用する安価な「接着芯」というものからオーダースーツで使用する「毛芯」というもの、最近はその中間の「接着毛芯」というものまで結構種類が多くあります。 最近の接着芯には昔と違って結構良い物もありますので、一概に「接着芯=悪い物」とはいえないのですが、一般論として、毛芯は固くしっかりとしていて、一方で接着芯は柔らかく剥離しやすいものです。 そこで、衿の立ち上がり部分を柔らかくするためにどちらが良いかということですが、接着芯=柔らかい→「衿の立ち上がりをふんわりと」と皆さんお考えになると思いますが、私はNGで考えています。 というのは、立ち上がり部分というのは、見た目は柔らかいラインになりますが、実際に触ってみると「生地が無理して立っている状態」です、ですから朝顔の弦を巻き付けるように竹の棒を立てるのと同じように支えが必要になります。 このためにはむしろ芯地は柔らかい接着よりむしろ固い毛芯にすべきと考えます。 意外や意外でしょ! |
(2)
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生地の品質・・・意外や意外、生地の品質も衿の仕立て上がりには大きく影響します。 春夏物で説明すると・・・同じ春夏物の高級素材でもモヘヤのような「毛の種類」による高級品とSUPER100Sに代表される「糸の細さ」による高級品。 実は前者の方が衿の「ふんわり感」は綺麗にシルエットが出るのに対し、後者のSUPER100Sなどははっきり言って「ふんわり感」を期待するのは難しく、仕立屋としてはとても困ってしまいます。 というのはモヘヤのような素材は夏らしく「シャキッ」とした肌触りと見事なまでの「光沢」が高級品たる所以で生地にハリがあるために衿の立ち上がりのシルエットが綺麗に出やすい、反面のSUPER100Sなどは生地そのものが「くたくたっ」「ネトッ」としているためにこれが非常に難しいのです。 う〜ん、言葉での説明は難しい!サンプル請求をされた方は触ってみれば一発ですのでお試し下さい。 |
(3)
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出来上がり時 のプレス・・・これが最終的には一番物をいってしまいます。 スーツは最終工程で大きなプレス機で綺麗にプレスしてから出荷されます。 これは、一般家庭でいえばアイロンみたいな物ですからこれを省略することは出来ません。巨大な機械が一日ン100着ものスーツのプレスをしていれば当然1着1着を別扱いするのは難しく、それ故に衿はぺったんこの「エビをつぶした坂角」のようになってしまうのです。 ですから、この工程前に一旦引き上げて、手でプレスしてもらえば立体的な衿の立ち上がりを作ることはそれほど大変ではありません。(むしろ問題はこのような別扱いを縫製工場が協力してくれるかですね。) ただし!折角きれいに出来た衿でもクリーニングに出す際にもこの点をしっかりとクリーニング屋に言わないと折角の「ふんわり」が「ぺったんこ」になりますのでご注意下さい。 衿は形状記憶ではありませんので、この点はお忘れなく・・・ |