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オーダースーツのヨシムラ
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 SUPER ○○'Sに騙されないで・・・
 スーツで使用する生地品質って皆さん何を基準に決めていますか?
触った触感?」「素材?」「それともSUPER○○'Sなどの表示?
どれも基準としては間違っていないと思います。
でも、最近は雑誌など取り上げられる影響からかSUPER100Sなど「糸の太さ・細さ」を絶対的な判断基準にする方が多い様ですが、今回は間違いやすい品質基準についてご説明したいと思います。

まず皆さんに質問...(○×で答えて下さい。)
問1:
SUPER100sの生地で素材がウール80%ポリエステル20%の素材があったとします。
これってポリエステルもSUPER100Sの細さがある。
問2:
ウール100%のSUPER100S表示の生地は全部SUPER100Sの糸を使用しないとSUPER100Sと表示してはいけない。
問3:
SUPER100SとSUPER120Sこの2つを比較するとSUPER120Sの方が無条件で肌触りが良い。

☆★☆ちょっと一言・・・SUPER100Sとは?
 皆さん最近良く目にする「SUPER100S」などの商品表示・・・このSUPERナントカ..というのは糸の細さを示す理論上の指標です。
SUPER100Sといえば「原毛1キログラムを距離100キロメートルの長さの糸を作ることが出来る」という意味で当然これは数が大きければ大きいほど細い糸(≒繊細な糸)高品質の証となります。

...ですが、(ここからが重要なのですが、これはあくまでもこの長さまで引くことが『できる』という理論上の基準ですので、実際にこの長さで糸を引くと今度はブチブチ切れてしまいますので、現実にはこれを50%〜70%に縮めて糸を紡ぎます。
こうして出来上がった糸の太さの単位を『糸番手』といいますが、業界ではSUPERナントカ..よりむしろこの『糸番手』で生地の評価が決まります。
 ですから皆さんが自分のスーツはSUPER100Sを使用しているからこの生地の糸は「重さ1キログラムの原毛を長さ100キロメートルの糸にした物を使っているんだよ!」というのは嘘になりますので注意してください。

 さてさて、正解はというと・・・全て×です。
雑誌やマスメディアの力というのは本当にすごいもので『メディアがこれ!』といったことが真実になってしまうことがありますが、時としてはこれはちょっと事実と違うこともあるのです。

念のため解説をいたしますと・・・
問1解説:
SUPERナントカ..と表示があってもウール以外の混紡素材は(ポリエステルなど)は全く関係ありません。
ですからウール50%ポリ50%でSUPER100Sは最大で50%しかSUPER100S素材は使用していないのです。
問2解説:
悲しいことですがこれもまた×です。
極端な話ですが1%でもSUPER100S素材が入っていればSUPER100Sと表示して良いのです。
個人的にはこれは詐欺だと思いますが、我々生地屋でも触感だけでは分からないため騙されることが多々あります。
某メーカーさんからのご意見では『イタリア物の無名ブランド』は結構こういった粗悪な素材を使用しているとのことでした。
問3解説:
生地の評価には素材の種類・糸の太さの他に触感に大きく影響する要因としては『糸番手』『打ち込み本数』『重量』という物があります。
簡単に言えば『どんなに太い糸を使っても織りが柔らかく織ってしまえば触感は柔らかくなってしまうため素人目にはわからない。』ということです。
後述いたしますのでどうぞご覧下さい。

☆★☆ちょっと一言・・・『織り密度(打ち込み本数)』と『重量』とは?
織り密度(打ち込み本数)」とは一般的な生地の幅148×100センチ四方の中に何本の糸が織られているかという基準です。
先述の『糸番手』が「糸そのものの太さ」だとすると『織り密度』は「縦糸と横糸で織った生地の中にどれだけの本数の糸が入っているか?」という意味合いを持ちます。
当然これは数が多ければ多いほど、「しっかりとした生地」に仕上がる一方で、打ち込みがしっかりしすぎても生地がごわついてしまう原因にもなりますので、一概に本数が多ければ良いとも言えません。
ですから粗悪な原毛が太いものでも織りが甘ければ結構柔らかく感じてしまうのです。
重量」・・・カシミヤやシルクの中でも最高級の「正絹」が最たる例ですが、生地の品質基準のひとつには一定面積でどれだけの重量があるかという基準があり、これもまた大切です。
つまり生地というのはスポンジのように柔らかくスカスカに織ることもできこれを柔らかいと人間は感じてしまいますが、重さはイコール原料の使用量ですので、これで評価するのです。
さて、
皆さん長いウンチクをご覧頂き有り難うございます。
皆さんの一番の関心事は、当社の取り扱い商品がどうかということだと思います。

以下に当社でこの冬取扱商品のうち代表的な商品の品質を上記の基準で調べてみましたのでどうぞご覧下さい。
下記の生地は「スペシャルセレクション」に掲載中です。

  SUPER糸使用率 糸番手 織り密度 重量
SUPER100S特集 100% 72番手 328×276本 258g
REDA社(SUPER100s) 100% 66番手 318×318本 260g
SUPER110S特集 100% 80番手 393×346本 308g
ロロピアーナ(SUPER110S) 100% 66番手 370×378本 260g
標準的な生地 --- 56〜60番手 317×310本 280g

その上でいくつかご説明しますと・・・

(1)全てウールはSUPER糸を使用していました。
一部にストライプ部分の糸等でポリエステル混紡もありますが、それを除くと当社のSUPERシリーズのウールの部分は100%SUPER糸を使用していました。
(ちょっと安心していたりして・・・)(*^_^*)

(2)それぞれの特徴は
○SUPER100Sシリーズ
糸の番手もかなり細い物を使用しています。織り密度もしっかりしていますが若干重量が軽いようです。
でもこれは別の味方をすれば3シーズン着用するためには重量がありすぎるのも難点ですので評価は難しいところです。

○REDA社
糸は若干太くなってしまいましたがその分ざっくりとして出来上がりになります。
他のSUPER100Sと比べても特段の差はありませんでした。
お値段の差はブランド力の差といったところでしょうか?

○SUPER110S特集
さすがSUPER110Sといった数値です。
100'Sと比べても明らかに「打ち込み本数」「番手の太さ」が高品質ですね。
重量もしっかりしていますし、寒い時期にはこの4つの中では一番コストパフォーマンスが高いかも知れません。

○ロロピアーナ
数値だけで見ると正直「え?!ロロピはこんなもん?」と思いました。
特に細いSUPER110Sを使用していながら糸の番手は66番手と普通よりちょっと良いぐらい。
また『織り密度』も織りが甘くSUPER100Sよりも劣っている。
・・・ですがこれだけで評価が決まらないのが生地の良いところ。
この生地はやはり他にはない『』があります。
織りが甘いというのは風合いが柔らかい、ましてそれを細い糸で仕上げている訳ですから肌触りの良さはピカイチでしょう。
でも糸が細くて織りも甘いと摩擦に弱く「毛玉になりやすい」弱点もありますのでお気をつけ下さい。
SUPER100
以上いろんな基準で生地の評価をしてみました。
皆さん多分見方が色々とありすぎてどれを基準にしたらよいのか分からないと思います。
でも生地選びは最終的には皆さんが触った触感で決めれば良いこと、当店では「メリットはメリットとして、またデメリットはデメリットとして」きちんとお客様に伝えますので分からないことがあれば遠慮なく各SHOPMASTERまでご質問下さい。

 車だってベンツだったら乗り心地は良いですが、燃費は悪いです。...??
生地だって同じです。良い生地ほど傷むのは早いし、皺にもなりやすいのです。
要は皆さんが何を優先して決めるかではないでしょうか?