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オーダースーツのヨシムラ
新着レポート

 梅春スーツと真冬コート
今年もどうやら暖冬見込みで終わりそうで、年も明ければはや初春。
実際には、1月〜2月にかけて寒さがより一層厳しくなっていくのですが、南の方からちらほら桜の便りが聞こえてくるにつれ、気分的には春らしい明るい色目の洋服が着たくなるのは流行に敏感な女性だけでなく、我々男性陣にとっても同じことです。

そこで、今回は新春一発目の新着情報として、秋冬物サンプルの中でも春にふさわしい素材を是非皆さんにもご紹介したいと思います。
秋冬サンプルの中の春に相応しい商品???と不思議に思う方もいらっしゃるかと思いますが、かつては梅春(うめはると呼びます)というカテゴリーがあり、それ用の生地サンプルもあったのですが、季節にそれほどの隔たりがなくなったことと、景気の低迷もあり秋冬物へと吸収され今に至っています。

そして、その数ある梅春素材より「これは」と是非お勧めしたいのは、山長毛織製のシャークスキングレー地 G4031です。
何を隠そうこのシャークスキン地こそ、ファッション通が好む素材と、その道ではつとに名を知られ私もいつかは着てみたいとの思いもありました。
それは何故かと言えば.....今を去ること20数年前、当時コンテンポラリールック略称コンポラと称するスタイルが一部の若者に持てはやされたことがありました。
懐かしいその典型的なスタイルはというと、↓のような感じで今とはだいぶん違っています。

コンポラルック
上着・・・シングル2ツ釦
>>>ボタン位置が低く、丈は短め。肩幅は狭めでもウエストがルーズなのが特徴です。
衿・・・細めのノッチ衿、あるいは衿先が丸いクローバーやセミクローバーが主流。
ベント・・・20cm前後の浅めのサイドベンツ
パンツ・・・ノータックのスリムなラインで、丈は短め、裾巾は19cm〜22cm程度

素材 シャークスキンシルクのような光沢のある生地
ちなみにネクタイは細く、ヘヤースタイルはオールバック系
俳優ではTV『サンセット77』のガレージで働くクーキーことエドバーンズあたりのイメージ(知らない??)

...というところで、時を同じくして当時アメリカでもコンチネンタルルックと、呼び名こそ違え同じように人気を博しました。
そして当時のアメリカの雑誌に『ドレッシーでとてもスマートなスーツ』の代表素材として、シルバーグレイのシャークスキンが取り上げられ、そのクールで都会的な風合いが多くのデザイナーに愛されました。
ただ、どちらかと言えば当時は一般受けというよりもむしろ業界受けをし、シャークスキンを着ていると
おぬし、なかなかやるな』と一目置かれたモノでした。

さてさて、前置きが随分と長くなってしまいましたが、本題の梅春素材で仕立てたスーツを皆さんにご紹介いたしたいと思います。 一体誰のスーツかと言うと、実は私です。。。^^;
一応自分なりに、コンポラを意識しつつ、一方ではトレンドの流れは押さえたつもりです。
具体的にはこのようになりました。


上着 
2ツ釦 ボタン位置高め
ゴージラインはトレンドのハイゴージB
衿巾8.5cmのノーマル巾。
ステッチはミシンステッチをコバへ
やや深めのセンターベント(標準の丈よりも3cm深くしました。)
裏地はシンプルにブラック。
丈は標準で肩幅は狭くウエストはシェイプ。

パンツ 
ノータックでスリムライン
裾の仕上げはダブル。

ベスト 
6ツボタン5ツ掛けでボタン位置は高く

...と、このような感じで仕立ててみました。
「何処がコンポラルックやねん!?」に突っ込みが入りそうですが、私なりにテイストは似せたつもりです。(黄色書き部だけがコンポラテイスト?)

上述の通り、今回使用した生地は山長毛織のシャークスキンですが、シャークスキン(sharkskin)=鮫の肌という呼び名の由来通り、生地の表面がまるで鮫の肌を思わすような模様です。
主に梳毛ウールで織り上げた、たてよこに別々の色糸を使って右綾に織ったもので、表面はクリアな仕上げになっています。
文字通り梅春物とは梅の季節、初春の1月から3月あたりにかけて着られる為の服地で、肉厚ながら色目が明るい春らしい雰囲気の素材の総称です。
しかし、今や年がら年中ダークカラー一辺倒の昨今、このタイプの素材はイマイチ人気が出ないのも事実で、その為今回あえて私が良いですよ〜と先陣を切りスーツをお作りさせていただいた次第です。
このようなややマニアックとも思える素材も扱えるのが当社の強みと、ちょいとPRさせてもらいます。

オッと忘れるところでした、このG4031は三つ揃いで45,000円VALUE PRICEでのご提供です。
明るい色は気分も変えてくれます、しかも今ご注文をいただくと、新年早々明るい服(福)がやって参ります、ヘイおあとがよろしいようで。

そうそう、春を意識したライトカラーと言えば、コートにも春らしい色はいかがでしょうか?
春なのにコートと矛盾点はありますが、本格的な寒さはこれからが本番ですので、まだまだ間に合うぞとばかり、先日私が新調したコートの方もご紹介させてもらいます。

オーダースーツのヨシムラと言う看板のせいか、『コートもオーダー出来るんですか?』とお客様からお問い合わせいただく場面もしばしばで、Webでの登場も季節商品ゆえ少ないため肩身が狭いアイテムでしたが、今シーズンはなぜかスーツ以上に絶好調、追い打ちをかける意味でのご紹介です。

さて、画像のコートはブリティッシュウオーム(british warm)と呼ばれるクラシカルなスタイルのコートです。
その名は20世紀初頭すでに当時の雑誌に取り上げられ、チェスターフィールドと並び最も古いダブルオーバーコートのスタイルです。
元は軍服とのことで、素材もかっちりとしたメルトンやツイルなどが多く用いられました。
古い洋画では時々見かけ、記憶ではケイリーグラントの着こなしが印象にのこっています。
が、近年はもうひとつ取り上げられることも少なくなり、その後何度かの流行期を経て現在に至っています。
高級ホテルのドアマンの制服と言った方が今や分かりやすいでしょうか?
根が寒がりの私が行き着いたのがそのブリティッシュウオームで、これならと防寒とオシャレの一石二鳥を狙って見ました。
そして今回のコートのコンセプトは、その伝統的なブリティシュウオームにひとひねり加えた仕立てにしてみました。

ボタンは6個ボタンの3個掛け>>>実はこれがブリティッシュウオームのポイントです。
衿はピークラペル  AMFピックステッチ
胸Pはあえて無しにしてスッキリと
裏側 打ち合いがダブルの為お台場があると余計にぶ厚くなるので今回は無し。

素材
最後の最後までカシミアと迷いましたが、最終的には婦人兼用のピュアアンゴラ(1366-1)をチョイス、組織もやや甘めの織りに色目も甘い上品なミディアムグレーです。

私なりのこだわり
・・・大したほどのこわりではありませんが、ウエストをかなりタイトに絞り、丈はヒザ頭105cmと裾さばきの軽やかな丈です。

ダブルゆえ暖かく、ブリティッシュテイストもちょっぴりと、胸元にカシミアマフラーで防寒対策はこれでバッチリです。
本格的な冬の到来を前に、ワードローブに是非一着とお勧めです。
ダブルのブリティッシュウオームコート、こちらも仕立て上がり63,000円は自信の一作です。

★☆★ あとがき ★☆★
実は、今回の画像は先日の東京出張の際に写したスナップですが、当日は今冬一番の寒波で強風が吹き荒れ、寒いやら、子供が見てるやら、犬が寄ってくるやら、デジカメが操作不能になるやらで、北風を物ともせず稟と立つつもりが「早く〜ブルブル〜」とばかりに、日頃にないしかめっ面となりました。
私としてはかっこいいオッチャンを目指したつもりですがいかがでしょうか?(撮影 by 巨匠荒井)