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オーダースーツのヨシムラ
新着レポート

 (恒例の?)SHOPMASTERのこの春のスーツは?
ようやく季節も変わりはじめ三寒四温のこの頃ですが皆さんお住まいの所はいかがでしょうか?(本稿は04.02末執筆)
お店の方は一足早く春夏物へ商品展示等々を変えましたがさすがに見本服がなく新しい商品をどう紹介していこうか悩ましい季節です。

そこで、恒例となりますが皆さんの先陣を切って私がこの春夏の傾向と対策(?)のため1着自分用に仕立てた物をご紹介したいと思います。
それぞれポイントを置きながら仕立てましたので是非皆さんご覧下さい。

 1着目
1着目ですが、これはもう私のこの春夏コレクションの中から一番オススメの商品で仕立てました。
一番旬な柄を誰よりも早く試食できるのはSHOPMASTERの特権ですので品切れの際はご不満もあろうかと思いますがどうか御容赦下さい

素材
ロロピアーナ社(Four Seasons)ライトグレーにピンクストライプ柄
>>> いかにもロロピアーナらしい艶と優しい色合い、色気のある生地です。
...ですが、サンプル帳がお手元にある人には是非ご覧頂きたいのですが「一番オススメ」と言いつつもこの生地は次の2つの理由で絶対に売れない商品と思っています。

1. 色気がありすぎる。ピンクストライプですよ。。。
もちろんビジネスでも着用可能ですが、気合い入り過ぎって言われること必至です。
シャツも靴もネクタイも全部気を遣わなくてはいけなくなりますね。
2. 下地の色(ライトグレー)が明るすぎて、汚れが気になり着る場所を選ぶ。
お客さんによく言うのですが、このスーツで居酒屋へ飲みに行って唐揚げを股間に落としたら滅茶苦茶凹みますよ。

...ということで、この生地は色目は綺麗でしかもトレンドのピンクですから皆さん気になる生地ではあると思いますが、なかなかこれを着れる人は多くない、ある種憧れのスーツだと思います。
そこで自分用に仕立てて店頭展示することで皆さんに疑似体験をしていただきたいと思いました。
画像はポケットに手を入れてポーズを取っているため表面にシワが寄っているようですが、これは見事なまでのドレープです。

デザイン ベースは3つボタン中掛け
>>> この春夏のトレンドはやはり3Bの中掛けですが私は個人的にはこのトレンドは今シーズンが最後だと思っています。
...ということでトレンド末期にその集大成を仕立ててみることにしました。
  デザイン的なポイントは次の点に置きました。

1. ウエストの絞りをかなりキツメに

ウエストの絞りはメンズの場合結構いい加減です。
よくドロップ7とか8とか言いますが、それもこれも内ポケットに物を入れるか次第で決まりますし、メンズは実用意識が高いためなかなかこれといった物がありません。
私の場合は、普段は2つ折り財布をいれるためウエストの絞りはさほど強調させないでいましたから従来から見れば胴回り1周4cmぐらい強く絞りましたのでこのスーツでは内ポケットに物は入れられないですね。
画像は背中の部分で絞りのためストライプが消えている所です。
絞りがキツければ当然バストからウエストにかけてストライプが急角度で消えていきます。

★☆★ ちょっと一言・・ドロップ○○とは? ★☆★
一般にウエストの絞り具合を指し示す数値です。
ウエストの絞り具合は胸囲とウエストの落差がどれぐらいあるかで見た目が決まりますから、これを数値にした物で次の式で表されます。

(胸囲−胴囲)÷ 2.54(※)=ドロップ寸 』(※:インチ表示のため)
 ※ヌード寸法に対してではなく出来上がりの寸法です。
ご参考までに多くの既製品の場合各ブランドによっても差異がありますが一般に次のように分けられます。
YA体( 痩せ形 ) ドロップ7
ドロップ8までいくとグラマラス!
A 体(普通体型) ドロップ6
私自身はこの普通体型
B 体( 肥満体 ) ドロップ4 ...位が標準的でしょうか。

ちなみに私の場合を例に取ると↓のような感じで、これで今回いかに強めに絞りを加えたかが伺い知れます。
 
普段
今回
胸囲(胸のサイズ:仕上がり寸法)
115.0センチ
115.0センチ
中胴(絞りの部分:仕上がり寸法)
100.0センチ
96.0センチ
 ドロップ寸は >>>
5.90
7.48
おぉ〜といった感じ!↑
ちなみにメンズの場合は元々ゆとり量が多いのでドロップ寸で1.0位なら↑のように絞っても実害がないことは結構多いです。
強いて挙げるなら↑まで絞ってしまうと内ポケットに物を入れられなくなる、位かな?
何かを得ようと思うと何かを失うものなのです。。。

2. 襟幅をちょっと細くスッキリと、それでいてシャープに
最近のセレクトショップ系ではゴージ位置を特に強調した製品が多くなっていますが逆に全ての製品が当社で言うハイゴージB+1.0cm(詳細はちょうど昨年の今頃ご紹介したこちらをご覧下さい。)ばかりになっていて正直食傷気味です。(最近は何でもこれを総称して鎖骨ゴージというらしい...へ〜っ)

そこで私は次のトレンド襟幅が細めの2Bスーツだと思っていますのでこのエッセンスを加味して少々襟幅細めの仕立てにしてみました。

...でもこれだけだと、面白くない。。。
どこが面白くないかというと、生地の色合いがソフトすぎてレディースではないですが雰囲気が『甘すぎる』んです。
そこでレディースからヒントを得て下襟部分のカッティングを標準よりシャープに直線的にカットするように指示しました。(画像だけだと分かりにくいかな?)


3.フロントカットは大きめに
またフロントカットは通常より丸みを帯びたカッティングの通称LGカットにしてみました。


4.その他ディテールは・・・?
小さな事ですが、その他はこんな所もこだわってみました。
画像はスーツの内側を撮ったものですが(ピンクの裏地が艶めかしい?)お台場部分上のチケットポケットをご覧下さい。
ちょっと他の玉縁部分と比べて細くありませんか?
そうです。実はこれが揉み玉縁仕様通称「もみだま」と言われる仕様です。
一般にこの部分は内ポケットと同じように裏地や表地で両玉縁を作るのですが、もう少し手の込んだ仕様をしたいと思い、工場に掛け合いつい先日実現したのです。

伝統的なテーラリングの1つですが、いかにチケットポケットなどの玉縁部分を小さくスッキリ見せるか?ということを悩み抜いた末、機械では細く折り返すことが出来ないため仕方なく、生地を手で根気よく揉むことで生地を馴染ませ、柔らかくして丸めていくところからこの名が起こりました。

どうでしょうか、大したこだわりではありませんが、のような話を聞くと試してみたくなりますね。
ちなみにこの「揉み玉」仕様は「松葉閂」とセットで先日改訂したオプション価格一覧では525円(税込み)のオプションです。
525円で職人技を毎日目にすることが出来るなら良いかも知れませんね。

★☆★ ちょっと一言・・・松葉閂(まつばかんぬき)とは・・・? ★☆★
松葉閂は簡単に言えば当店で良く行なうD管留めと機能的には一緒です。
つまりポケット等の両脇が裂けないように補強するための意味合いと、装飾的な意味合いの両方を兼ねています。
D管留めはミシンで比較的容易に付けることが可能ですがこの松葉閂はご覧頂くと直ぐ分かると思いますが全て手作業で縫っています。



 2着目
2着目は私自身としては初めてのスプリングコートを仕立てました。

素材
ロロピアーナ社(Sport Fabrics)スプリングコート
>>> 1着目が「いかにもロロピアーナ」なら こちらの方は『えっ、これがロロ?』とロロピアーナフリークを驚かせるような色気が全くないコットン素材です。
きっとこれでジャケットなどを仕立てると多少バリバリするでしょうけど軽くて渋く仕上がるんでしょうね。
ロロピアーナの中でも新鋭のSPORT FABRICSというシリーズからエジプト綿をセレクトしてみました。

デザイン
膝丈のラグランスリーブ ステンカラーコート
>>> スプリングコートなので軽快感を重視してみました。
丈は冬物の防寒用のコートとは違って今回のショート丈(95cm)はちょうど膝丈ぐらいです。
(私の場合冬物防寒コートは丈が110センチ弱ですから今回のものは冬物より15センチも短いのです!!)
また「Soprts Fabrics」という位の素材ですからカジュアル意識を強めてこんな所をポイントにして見ました。

1. ラグラン袖・・・
コートは簡単に言うと袖が肩の付け根から始まる「ラグラン袖」とスーツの袖のように肩先から始まる「付け袖」タイプがありますが、ラグラン袖はレディースで多いこともありやや柔らかい印象を出します。
逆に言えば堅い印象のチェスターフィールドのコートはカジュアルにはなかなか合わせにくいのに対しラグラン袖はビジネスでもカジュアルでも使い回せる分楽なデザインです。
今回のコートはカジュアル感を出したかったためラグラン袖にしました。

2.上襟スエードのこげ茶に・・・
この辺は当社の十八番ですね。
生地屋ですから色んな生地がありますので、その中から人気のあるスエードを使ってみました。
アクセントとしてもとてもお洒落になりますし、こういったディテールは同じ素材を使っても全く違った印象のスーツやコートになりますからいかにもオーダーっぽくって私は好きです。
(でも初心者はここまでご自身で決めると変になることがありますから、詳細はお店と相談しながらの方が無難でしょう。)

3. 裏地 ・・・
一般にコートはスーツ用の裏地とは違ってもっと肉厚のゴツい裏地を使うのですが、今回はスーツ用の裏地の中では比較的しっかりしているキュプラ裏地の柄物裏地をつかってみました。
なぜ敢えて使ったかというとそのキュートなチェック柄
いかにもカジュアルには最適!といった感じですし、決してビジネスでNGと言うほどのこともないので丁度良いまとまりになりました。

4.アウトポケット・・・
一般にコートのポケットというとラグラン袖の場合はナナメに付けたハコポケットが一般的ですが、今回は目的が「カジュアル重視」でしたのでコートのポケットをアウトポケットのフタツキにしてみました。
それほど嫌味でなく、だからといって幼くもなりませんので意外といい雰囲気になりました。
...と、まぁ〜、こんな感じでSHOPMASTERはこの春夏物で仕立ててみましたが皆さんご参考になりましたでしょうか?
これからの季節日毎暖かくなり草木も芽生え始めると、長い冬の間目にしていたダークカラーから少しずつ明るい色目に惹かれるようになるものです。
景気も少し持ち直し始めたと言うこともありますし、皆さんもちょっと勇気を出して春のエッセンスを取り入れたスーツやコートを楽しんでみてはいかがですか?

★☆★ お ま け ★☆★
皆さん、植松康二さんってご存じですか?
「踊るさんま御殿」だとか「はなまるマーケット」、深夜の神田うのとの番組、女性ファッション誌などでファッション チェックなどをされている有名人。
その方がちょうどこのスーツ&コートが出来上がった頃ご来店(ご注文)されることになり、SHOPMASTERも急遽(1着目)のピンクストライプのNEWスーツでおめかしして接客することになりました。

さてさて、植松康二さんの私に対するファッションチェックはどうだったんでしょうか?
ひ〜〜〜っ (?_?) 近日日記帳に顛末を掲載予定です。