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オーダースーツのヨシムラ
新着レポート

 体型補正について
秋風が心地良く感じられる時期になりましたが皆さんお元気ですか?
街もショーウインドーだけでなく行き交う人達もようやく衣替えといった様相ですね。

さてそんな秋深まる今の時期ですが、今月はちょっと趣向を変えて、オーダースーツにおける体型補正についてお話ししたいと思います。

よくオーダースーツを頼まれる際に、
『お客様はなで肩(怒り肩)だから、どうこうして・・・』
...と聞き慣れない言葉を耳にして不安になる方もいらっしゃるかと思いますが、今回はこういった時我々オーダー店が具体的にどう型紙に反映させているかについてご紹介したいと思います。
これをパーフェクトに知っていれば採寸の下手なお店が一目瞭然に分かる?
...とまではいかないかと思いますが、かなり参考になりますので是非ご覧下さい。

ところで、本稿はこの夏当社が行った「体型補正に関する勉強会」でしたことをベースに素人の方でも分かるよう書き直した物です。
一部、専門的にはご異論もあろうかと思いますが、この辺は後段で補足説明いたします。

さて
身体にフィットするスーツを仕立てるためには大きく『型紙の問題』と『体型補正の問題』があります。
今回は体型補正を具体的に型紙上どうやって反映させるのか?
というのを主眼に置きますが、その前の前段として『基本的な体型の種類』と『スーツの型紙』についてご紹介します。

■ 基本的な体型の種類 ■
まず最初に人それぞれの体型にはどんな物があるか?代表的な物をご紹介しましょう。
ホントは沢山あるのですが、今回は話を分かりやすくするため2×2の4種類をご紹介します。

□ 怒り肩となで肩 □

これが一番分かりやすいと思いますが、肩の傾斜がきつく肩先が下がっているのがなで肩、一方で肩が張っていて水平に近い様になっているのが怒り肩です。

怒り肩の人はがっしり体型が多いと思いきや、首に筋肉がつきすぎている人(柔道家・アメフト・ラガーマンなど)は意外にもなで肩扱いになります。

そして、このような体型の人が正体のスーツを着るとでは次のような現象が起こります。

怒り肩の人は >>> ツキジワ(と、肩先のつかえ
・・・ 着用者ご本人には分かりませんが、首の後ろ側にツキジワという「余りジワ」が出ます
ただ、これは合わせ鏡で見ない限りご本人には分かりにくく意外と気付かないケースが多いです。
また怒り肩は肩先が高くなっているため補正のない正体スーツだと肩先が当たります

なで肩の人には >>> えり抜け(と、脇下のつかえ
・・・ こちらは怒り肩と正反対で、首から肩にかけての傾斜が強いため肩先が合うと逆に首周りが浮いてしまいます。(えり抜けといいます。)
一方で肩先の方は肩が下がっている分、正体のスーツを着用すると脇の下が当たるような感じになります。

□ 反身と屈伸 □

怒り肩・なで肩が肩の肉付きや骨格の問題だとすると、もう一つの特徴的体型は姿勢の問題です。
それは反身と言われる姿勢と、屈伸姿勢です。
皆さんは次のイラストのどちらに該当しますか?(該当無しもあり得ます。念のため)

反身 >>> 我々は反身(はんしん)と言っていますが一般的には「反り身」と言った方が分かりやすいかも知れませんね。身体が後方に反った体型で、良く言えば「姿勢が良い」悪く言えば「威張っている」ような雰囲気です。
また、反面中年太りでお腹がでっぷり出てしまうと、妊婦さんのようにお腹を支えるため反身体型になっている人もいます。
屈伸 >>> 反対に身体が前傾している体型を屈伸体(くっしんたい)と言います。
こういった体型の方には概して猫背の方が多く、肺に大きく空気を入れないで呼吸する方や、背が高く他人を見下さないように日頃から意識している方がなりやすい体型です。

そしてこの様な場合、これらの場合 スーツには次のような違和感が現れます。
反身 >>> ツキジワ脇の下の皺
・・・ 怒り肩でもご紹介したツキジワはイメージしやすいと思います。
身体が後方に反っている故に、首の裏(後身頃)に生地が余るためそれが(皺たるみ)になるのです。
そして意外と見落とされがちなことはスーツの「前後バランス」。
極端な場合、皺が出てすぐ分かりますが、画像は見本服ですがお腹周りに本来水平であるべき位置にしつけ糸を付けています。
どうでしょうか?
身体が反身(反り身)になると前が上がってしまっているのがお分かりかと思います。
画像は意識してやっていますから目立ちますがこういったことも重要な点です。
屈伸 >>> 一方で反身の反対である屈伸の場合は首が前ににゅっと出ているわけですから首と衿が密着せず隙間が出来ます。(エリ抜け)
またスーツ全体のバランスについて前掲の見本服を着て屈伸体型になりますと、今度は屈伸は前屈みですのでスーツの前が垂れ下がります。
結果、先の水平の線は、前下がりになって現れ、場合によっては画像のようにベントが跳ね上がります。

以上が体型補正における基本中の基本的な体型です。
その他、前肩とか猫背とか胸厚体とか沢山ありますが、こちらはいずれまたご紹介しましょう。

■ スーツの型紙について ■
続いて、体型補正を考える上で、避けて通れないのが型紙の問題です。
消費者向けにここまで書いているサイトも珍しいと思いますが、これも何かの縁、ちょっと難しいですが分かれば意外と面白いですので是非ご覧下さい。

まず...スーツ(上着)の型紙ってこうなっています。

N点 首の付け根の縫い合わせの点です。
T点 ここは前身頃の肩先の点、ぐるっと回って反対のS点と縫い合わされます。
アームホール  これはアームホール腕が通る所です。
S点 T点と縫い合わされる肩先の点(後身頃 背中側)。
M点 これは縫い合わせの際、N点とくっつきます。
O点 ここは背中の中心部分です。

さぁて、ここまでが基本編です。
特に型紙の所はイメージが付きにくいと思いますが、暫くイラストとにらめっこしてみてください。

■ 体型ごとの補正方法 ■
それでは続いてそれぞれの体型が型紙上どのように修正されていくかについてご紹介します。

□ 怒り肩の補正 □

先に挙げた特徴の通り、肩先が相対的に高くなっているのが怒り肩。
ということは簡単に言うと肩先を上げるか首の付け根を下げれば高低差がなくなりフィットするということ。
なぁ〜んだ、そんなことか!ということでここでは首の付け根を下げるように補正しました。
※体型補正は色んな方法があるためこれが絶対という訳ではありません。
こうして首の付け根の余りジワは解消されます。

□ なで肩の補正 □

なで肩は逆に首から肩先の身体の高低差が普通の人より大きい訳ですから型紙上でこれを反映するなら「首の付け根を上げる」か「肩先を下げる」ことで解消します。

今回は首の付け根を上げることで型紙上補正しました。
肩先を下げないの?という疑問に対し・・・

なで肩への型紙補正が「首の付け根を上げる?」か「肩先を下げるか?」だとして、どうしてSHOPMASTERは「首の付け根を上げる」方を選んだのでしょうか?

それは...肩先を下げると下げた分アームホールが小さくなってしまうため、そちらの補正も必要になってしまうからです。(<<画像が別のなで肩補正のやり方です。)
つまりビリヤードの玉突きのようにあっちをいじればこっちも修正しなくてはいけなくなってしまうので今回は話をシンプルにするため分かりやすい方で説明しているのです。
(先述来、これが絶対正しいという訳ではないと申し上げているのもこれが理由です。)

□ 反身の補正 □

それでは今度は反身屈伸それぞれの補正についてご説明します。
既にご案内の通り、反身は身体が反り身になっている状態で特徴は「ツキジワ」と「タスキ皺」でしたね。
ツキジワが分かりやすいのでこちらで説明すると、ツキジワが出ると言うことは背中側の生地にあまりが出ていると言うこと、反対にタスキ皺が出ていると言うことは前側(前身頃側)の生地に余裕がないと言うことです。

ですから型紙の上では肩の縫い合わせ線上で後身頃側の型紙を削り、前身頃側を出してあげます。

□ 屈伸の補正 □

一方、身体が前に出ている屈伸体型はどんな補正かというと、反身と全く逆に、今度は背中が丸くなり、身体が前に出ている訳ですから背中側の生地が不足します。
そこで背中側を出してあげます。

反対に、前身頃側の生地は身体が前に出ているためゆとりが出来すぎてしまうため余分な生地が出ますからそれを肩の所で取ります

ちなみに、屈伸の時にベントが跳ねるのは背中側の生地が不足するため、裾が上がってしまうからです。。

さぁ〜、どうでしょうか?お分かり頂けましたか?
一読だけだと業界の人でないと分からないと思いますが、ご自身のスーツと見比べながら繰り返し見ているとだんだん分かってきますので、是非研究してみてください。

当店ではこの様な勉強会を定期的に行っています。
今回話題の話程度でしたら全スタッフ誰でもご説明できますので、もしご自分の体型的特徴を正しく把握されたいのでしたらお気軽にご相談下さい。

この体型補正はとても奧が深いですのでいずれ中級編上級編などもご紹介したいと思います。