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オーダースーツのヨシムラ
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 サンプル帳ってどう作る?
皆さん、はじめまして。
私、大阪店メンズ 仕入れ担当の一野と申します。
大阪SHOPMASTERのコーナーで時々登場していますので『あ〜、見たことある・・・』程度にはご存じの方もいらっしゃるかと思いますが今回から私もWebで頑張りたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします。

さて、
私が今回皆さんにご案内することは・・・ズバリ! 私の本業なのですが、商品仕入情報です。
具体的には来シーズンの春夏物が一番分かり易いかと思いますので、この場を借りてその辺をご紹介したいと思います。

ん?サンプル帳?」と初めての方は何のことか分からないと思いますので簡単にご説明しますと...

生地のサンプル帳とは・・・ □
当店ではオーダースーツを検討される方に対して無料で生地サンプルのお貸し出しを行っています。

これは...
事前に当社で取り扱う実物の生地をご覧いただき質感を知って貰いたいから。
(新規のお客様に対し...)取り扱いの価格帯をご覧いただき安心して貰いたいから。
リピーターの方などご来店頂けない方にも実物をご覧頂きたいから。

などなどが理由ですが、実は皆さんだけのためにこのカタログを作っている訳ではありません。

店舗でご案内したお客様には必ずご説明するようにしているのですが、実はこのカタログは実際に全国のテーラーさんにご利用頂いている物をそのまま流用して皆さんにお貸し出ししております。

つまり・・・テーラーさんが職業用に使用しているサンプルをそのまま皆さんにご覧頂いているのです。
ですから、自慢じゃないですがNet上にも色々注文服店がありますがどこのお店よりも品揃えは多いと思います。えっへん!)

そして、、、そんな生地サンプルを作る私の仕事(=仕入)ですが12月の今の時期は何をしているかというと...来シーズン2007年版春夏生地サンプル製作の最終段階に入っています。

そこで折角ですから簡単にサンプル作成の手順についてご案内しましょう。

サンプル作成の手順

生地サンプルの企画は半年がかりで行います。
ざっと仕事の流れを項目で挙げるとこんな感じです。

1.前シーズンの販売状況の把握
   >>> 春夏物なら9月頃
>>> サンプル作りはまず前のシーズンの販売状況を把握することから始まります。
つまりは春夏シーズンの終わる8月で一旦在庫を全て整理し、品切れ・品薄の各商品の色柄分析を行い、サンプル全体のページ数から翌年も継続して取り扱う商品の枠を引いて、残りを新柄として新たに仕入れる枠を決めます。
継続商品を除いた新柄の割合は、、、
年度にもよりますが どうでしょうか? 全体の7割位といったところでしょうか。

2.商品選定作業
   >>> 通年業務(ただし春夏物は9〜11月がピーク)
>>> 続いて行うのが具体的な新柄商品をセレクトする商品決め。
これは来シーズンのトレンドの動向を踏まえながら東京SHOPMASTERと大阪SHOPMASTER、そして私とでお互いの意見を交換しながら各メーカーから送られてくる生地サンプルを吟味していきます。

(一野)の立場では主として各メーカーからの情報を頼りに、東京SHOPMASTERは東京のアパレル展示会などの情報を頼りに年齢の差のある3人ならではの意見をぶつけ合い、「こんな色は売れないよ!」「○○柄が多過ぎて全体バランスが崩れる!」と熱い討論を行います。
この商品選定作業が来シーズンの運命を握っていると言っても過言ではないだけに皆真剣です。

また、この作業の難しいところの一つは各メーカーによりメーカーサンプルの仕上がり時期が違うこと。当然の事ながらこの違いによって商品選定作業も影響しますし、仕入枠その物にも影響が出てきます。

3.見本帳の試作版作り
    >>> 春夏物なら11月末頃
>>> 商品仕入は上述のようにメーカーの予定に影響を受けてしまうため、最終的な見本帳作成はギリギリにならないと出来ません。
一方で、例えばA社の生地で10マーク展開するとしてもその色柄がそのメーカーの他商品と見比べて色が近いとか、
あるいは同価格帯の別メーカーの物と比べてどうか?...など生地は色目や質感で受ける印象が大きく変わりますので、そこで印刷や製本にかかる前段階としてお手製の試作版を作ります。

例えば、無地の商品4色(黒・紺・チャコールグレイ・ライトグレイ)取り扱うにしてもいつも同じ順番ではメリハリが利きませんから、全体のバランスを見て色を交えてバランス調整を行います。

この作業は非常〜に、地味かつ、地道な作業のため、担当は私オンリー。
作ってはSHOPMASTERからダメ出しを受け、寂しく深夜作業でコツコツ行います。

4.印刷用原稿作り
   >>> 春夏物は12月下旬
>>> 試作版が完成しますと次は実際の見本帳の印刷物の中身(全体像)を決めます。
ここでは印刷屋さんと打ち合わせしながらですので、実際の生地を貼るまでには至りませんが、商品説明・ブランド説明から各種品番や価格などの最終チェックを行います。

ここで間違えると製本後に訂正シールを貼ることになりますのでミスが許されない作業です。

原稿作りの中で一番意識しているのが、トップページの生地サンプル。
いつの頃からだか忘れてしまいましたがSHOPMASTERらと商品選定の話をしている時、「トップページはお客様を驚かせるような事をしよう!」という事になりまして、いつも何かしらのサプライズのある商品を掲載しています。
毎回これを決めるのが面白く、毎度ゼニアじゃツマラナイ!とか、在庫が少ないのに面白い生地だから大型サンプルで掲載しよう!だとか、サンプル製作の中では一番自由に振る舞える所です。

そして、原稿が決まるとここからは印刷屋さんマターですので私の方は一寸中断。
ふ〜っ、ちょっとだけ休憩ですが、この間もやっぱり校正があり手を抜けません。

5.生地貼り
   >>> 春夏物は1月末〜2月初旬
>>> 印刷屋さんは印刷だけですので、印刷後は実物の生地を貼る作業が待っています。
大切なことは品番を間違えないことばかりではありません。
意外とと見落とされがちなのは生地の表裏上下です。
生地には表裏もあれば、毛足のある商品は上下もあります。

そして、この作業はいわゆる内職屋さん達にお願いしています。
正直、なかなか地味な仕事で工賃も安く(スミマセン(-_-;)なかなかなり手が見つからず、昔は刑務所の作業としてお願いしたり、知的障害者の施設にお願いしたり、傘張り内職さんにお願いしたりと色んな所でお願いしてきました。
(世の中には地味ですが、機械化できない仕事もあるんです...)

6. 製本作業
>>> 最後は製本作業。
この作業は予め選んでおいた表紙と各ページの中身を合わせて最終的に製本する作業です。

生地貼りは外注で依頼するのに対し、この作業は原則全て社内(大阪店)で行います。
外注でも出来る作業かも知れませんが、苦節半年頑張って作ったサンプル帳です。
各ページを束ね、クリップで留めて、各ページに価格シールを貼って...
最後は自分達で綺麗にお化粧して嫁に出したいのです。

ふ〜、これでサンプル帳が仕上がりました。(*^_^*)
(ホントはこの他、各シーズンのSpecial Selection作りや年度毎オーダーシート作りなどもありますがここでは割愛します。)


□ 折角なので2007年春夏商品のご紹介
>>> 原稿を作成した12月中旬は上記で言えば仕入商品が全て決まり、印刷用の原稿を作っている段階です。
ということは、来シーズン取り扱いの全商品が分かっている状態ですので、折角ですからいくつかご紹介しましょう。

国産品

>>> 国産品は価格とビジネスユース重視で商品セレクトをしました。(いつもですが...)
円安の影響でウール価格が高騰している中で今回も最廉価商品37,000円
それ以外にも機能性を重視した皺になりにくい素材や若い方に人気のあるシルク混素材やパープル系のストライプなど。
下地の色目は2007年春夏はライトグレイがオススメです。

インポート品

>>> 年々取り扱い数を増やしているインポート商品は従来人気の伊ゼニアロロピアーナの両横綱に加え、2006年秋冬から登場した英DUNHILL、英SCABAL、英Taylor &Lodgeなど英国銘柄も増やします。
英国銘柄は保守本流の伝統的色柄が素敵ですね。
ただし、、、ちょっと問題がありまして....
2007年春夏シーズンはユーロ高の影響が直撃したこともあって、実は少々値上げを検討中です。
インポート商品の平均で5,000円位か...とSHOPMASTERは言っておりますが、値上げ幅を少しでも縮小するよう私一野はただ今鋭意交渉中であります!

クールビズ対策

>>> 一昨年から徐々に広がりを見せたCoolBiz。
3年目の2007年はどんな物に人気が集まるでしょうか?
今回非常に悩みましたが例年通り、コットン・シルク・リネンなどの天然繊維の無地系ジャケットに加え、今回は後でご紹介する伊アニオナでコードレーンっぽいストライプ柄を扱います。

新登場 伊AGNONA社のご紹介

>>> 同社のブランド名はメンズでは余り馴染みが薄いですが、実はレディースの世界ではメンズの伊ゼニア以上の高級ブランドで、カシミア・アルパカ・ビキューナ等の高級獣毛素材では定評のあるブランドです。
1953年の創業以来、素材からファブリック、製品に至るまで全て自社工場にて生産し、最高級のオリジナルファブリックは、シャネルエルメス等の高級ブランドで使用されています。

また近年は、アニオナがエルメネジルド・ゼニア社の傘下に収まり、技術提携や素材の供給を行っていることもありそのルートから今回初めてご用意することができました。
今回はジャケット素材を採り上げましたが人気次第ではこれからもっと増えるかも知れません。
是非注目していて下さい。



以上、
普段はなかなか仕入情報などご紹介する機会がなかったため、この場を借りてご紹介いたしました。
これからも色んな情報をお出ししますので、是非よろしくお願いします。
(By Ichino)