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オーダースーツのヨシムラ
新着レポート

 シルクブレンドって・・・
今夏は気象庁の予想通り、ラニーニャ現象が発生し、晴れた日には30度を超える暑い日が多く、頭が茹で上がりそうですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
しかし、こうも暑いとお盆休みに仕事とは違った体力を消耗した身の方には、ここはウナギでも食べてスタミナを付けたいところではないでしょうか!?(但し、中国産のウナギには注意が必要ですが・・・)

そんな残暑厳しい中、我々ファッション業界は次のシーズンである、秋冬物の用意に忙しい頃合いです。
百貨店ではウィンドウを秋冬物に変えたり、専門店ではウォーム感ある既製服も並び始めています。
当社も例外なく、8月は秋冬に向けての用意を着々と進め、店頭は既に秋冬物生地に入れ替わり、起毛したウォーム感ある素材、シルクの光沢を取り入れた生地等々、特色有る生地を取り揃えております。

一方、ホームページ上では前回の更新で、2007年度秋冬スペシャルセレクションをご紹介したところですがご覧頂けましたでしょうか?
本稿執筆日(8/31)には、サンプル帳も出来上がり、大阪店からご予約頂いたお客様に順次発送している頃でしょう。

そこで、今月私からの新着情報はサンプル帳が既にお手元に到着している方もいらっしゃるかと思いますので、いくつか特色ある生地の中からシルクとウールをブレンドしたシルク混紡生地にスポットを当てて、ご紹介いたします。

□ 先ず シルク とは・・・ □
小学校などで、授業で経験してご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、蚕(カイコ)が羽化の為、繭を作る際に吐きだす糸を精錬し紡績した糸の事をシルクと言います。

そのシルク(絹)ですが簡単に2種類に分類されます。
1. 家蚕(かさん)絹
屋内で蚕を養殖し餌は桑葉を与え、飼育された蚕の絹
特徴は均一で滑らか
2. 野蚕(やさん)絹
家蚕以外の蚕で野=自然世界で成長した蚕の絹で、餌は野生植物
特徴は不均一で粗野な質感
更に野蚕は詳しく2つに分かれ・・・
2-1. 柞蚕(さくさん)絹
全体的に黄色がかった天蚕蛾科の蚕を飼育し、それから取られた絹
特徴は、黄色を帯び野生味があり、家蚕より太く耐久性が高い
2-2. 山繭(やままゆ)絹
餌を櫟・楢などを食する蚕を飼育し、取られた絹
特徴は、柞蚕絹よりも粗野でフシと呼ばれる、糸全体の太さのムラなどがある
その辺にいる蛾の繭もこれに該当します。

当店のオーダー向けスーツにウールと混紡される物は勿論、家蚕絹です。

□ シルクの特徴 □
シルク=光沢感と言うイメージを持っている方も多いかと思いますが、独特の光沢には心動かされるものがありますね。
そもそも、この光沢感は何故生まれるのでしょうか...それにはきちんとした理由があるのです。

先ず、絹糸が出来るまでの過程を簡単にまとめて説明いたします。

1 蚕が一生懸命、桑の葉を食べた後、蛾になるために繭(まゆ)を作ります。
2 繭になったところで、熱いお湯やアルカリ溶液の中に放り込まれます。(合掌、チーン)
3 2.によりセリシンと呼ばれるニカワ状のタンパク物質と絹糸になるアミノ酸物質のフィブロインとの癒着が弱まるので、このフィブロインをかき出し糸に紡いでいきます。
図のようにフィブロインは、三角形に近い形をしており、表面は以前の新着情報:蒸し暑くなりました...でモヘアについて紹介したようなウールのスケール(うろこ状の表皮)などがなく、ポリエステル糸と同じく糸表面がツルッとして、ガサガサしていません。
このツルッとした糸を総称してフィラメントと呼びますが、天然繊維の中ではシルクだけはフィラメントに属します。

上記の理由により、フィブロイン表面には凹凸がなく、上記イラストのような三角形に近い形をしております。
そして三角形のプリズム効果でフィブロイン内部の光りが乱反射し、結果ウールと混紡し生地に織り上げた時、独特の光沢感を放つのです。

光沢感の参考画像として、以前ショップマスターがシルク50%の生地で誂えたスーツがありますので、ご覧下さい。(左が屋内、右が屋外です)

□ シルクの着心地 □
それでは、生地からスーツに仕立てた時、ウールのみのスーツとシルクが混紡されたスーツとでは着心地にどのような影響を与えるのでしょうか。

一番分かりやすい着心地の変化として挙げられるのは、シルクはウールと比べて繊維自体が細く軽い為、着心地も軽くなるということです。
当社着分生地(スーツ1着分の用尺)の中から、一番軽いシルク混と一番重いウール100%の生地を比べてみましたところ...
左はG7061(ハニーテックス)
混紡率:ウール63% シルク36% ポリエステル1%

右はG4162(スキャバル)
混紡率:ウール100%、super90's、サンプル帳以外の最後の1着!!
  (店頭には、サンプル帳に掲載出来ない現物限定生地があります。)
なんと、
計測結果はG7061ハニーテックスが660g、
G4162スキャバルが1340gでした。
その差は、±680g!
実に2倍以上あり、この重さの差こそがスーツにした時に軽い感覚へと繋がるのです。

□ シルエット □
次にシルエットはどうでしょうか?

シルク自体、繊維が細くコシがありますので、シルク混の生地で仕立てたスーツは、直線的なシルエットが生まれやすいです。
逆に言うと、生地にクセを付けて曲げ、体の立体的なフォルムにし、縫い上げるフルオーダーには、糸自体のストレッチ性が弱く、クセを付けても形成度が低いシルク混は不向きと言えます。

□ 注意点 □
シルク混スーツの着用の際、気を付ける点は何でしょうか?

シルクの良い点は、先述の通り、軽さや光沢感ですが、シルクの分量が増えるにつれ、蒸気を当ててもシワが取れる復元性が低くなります

摩耗性に関しては、ウールのようなスケールと呼ばれる引っ掛かりが表面に無い為、紡いだ糸がほどけやすく擦れ箇所が毛羽立ってしまいます。
その為、沢山歩かれる方はパンツの擦れる部分である股部2重補強をすることがオススメです。

以上のように、シルク混生地には様々な特性があります。

オーダーにあたっては、このような特性を含み、お仕事環境を考慮した上で生地を選ぶ必要があります。
その為、私共のようなオーダースーツに携わる者には、皆様のご職業はお客様自身の為のオーダースーツ作りにとって大切なファクターなのです。
従いまして、スタッフが『ネホリハホリ』お伺いを立てることもありますが、どうかご理解頂きまして、選り良いオーダースーツ作りに今後ともご協力の程どうぞよろしくお願い申し上げます。(^_^;)

 サンプル帳のご請求はこちらまで 
http://www.vightex.com/order/index.html