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オーダースーツのヨシムラ
新着レポート

 ただ今試作品製作中 その1
長かった冬が明けようやくめいた日が多くなってきましたが皆さんお元気にお過ごしですか?
これからの季節は3月/4月にはイベント事が多くファッションを意識する事が多くなりますし、5月になれば衣替え、クールビズも始まります。

そんな年上半期はファッション業界にとっても慌ただしい時期でもありますが、お店としましては常にお客様の三歩先を行かねばなりませんから、毎年この時期は冬物の仕入と(一寸遅いのですが...)夏物で紹介できそうなデザインの試作品を製作していますので、今月はそちらをご紹介したいと思います。
(昨年の今頃はコンケープドショルダーを試作してご好評頂きました!!)

そして、今年の試作品の内容は・・・
最軽量 芯なし、裏地なしナポリ風仕立てジャケット
これにチャレンジしてみたいと思います。

軽量ジャケットといえば、これまでは半裏仕立てマニカカミーチャ仕様(2006年頃〜)などがありましたが、確かにこれは通常の上着(ジャケット)に比べればグッと軽くて良いのですが、それでもジャケットの域を脱し得ないものでした。
ですから、本当に暑い夏場になるとどうしてもジャケットを手に持たざるを得ず、、、
昨今の温暖化を考えると、ジャケットは無用の長物になってしまうという危機感もあって、、、

もっともっと軽量化して、限りなくシャツに近いジャケットは出来ないか?
と前から考えていたのです。

そこに色々とアドバイス頂く方がいらして...この辺からご紹介しましょう。

■ きっかけは某業界人から・・・ ■
この業界に長くいますと色んなおつき合いがありますが、例え日頃はコンペティターであっても技術の習得や研鑽のためご同業の方と色々お話をする機会があります。

それは丁度 昨年の夏頃、私があるご同業の方と話をした時の事でした。
某氏: 実はナポリ風の芯ナシ仕立てをされる人がいるんだけどご高齢でね・・・
なんて話があり、初めは私も
私: 今はイージーオーダーでも芯地使用を最小限にしたマニカカミーチャなんて幾らでもありますよ。
なんて、軽く受け流していたのですが、
某氏: いやいや、吉村君、そうじゃなくて、全く芯地を使っていないんだ!(除く:上襟) 凄い仕立てだよ。
その人がご高齢なんで近く廃業するそうなんだよ。
これで技術の火種が消えるんだよ!!
私: えっ、そうなんですか?
全く芯を使わない仕立てなんて本当に出来るんですか?
今後出来なくなっちゃうなら、その前に是非私のジャケット作って下さい!
...なんて事になり、期せずして仕立屋が他の仕立屋にジャケットを頼むことになりました。

もちろんハンドメイドの一品物ですから、途中で仮縫いも入れて体型補正も反映したフルオーダー仕様ですが...
今回のオーダー内容をご紹介する前に、まずは軽いジャケットの作り方や一般的なポイントなどをご紹介しましょう。

■ どこが違うの? ■
軽いジャケットを仕立てるといって皆さんどうすれば軽いジャケットが出来ると思います?

一般的には
 ・軽い生地、裏地を使う  ・芯地なども軽い物を使う
 ・肩パッドを付けない   ・縫い代を少なくする  ...

などが挙げられると思います。
でも、これだけなら今やドコでもやっていることですし、既製服業界の方が無駄を省くことになれていますからオーダー業界より余程進んでいますし、従来から当社でもマニカカミーチャ仕様といってノーパッド、極薄接着芯使用のカバーオール仕様などがありました。

違いを画像で見ると一目瞭然です。

■ 不 満 な 点 ■
画像のマニカカミーチャ、カバーオールジャケットは既存のジャケットよりグンと軽くて快適です。
でも、でも、何か違うんです。
うまく表現できないのですが、やはりジャケットはジャケットでまだカチッとしているというか、堅いんですよね、雰囲気が

本当に欲しいのは、ジャケットを通り越してシャツのような軽さの物が欲しいのです。

シャツのような物が欲しくて、ジャケットでは堅い?
・・・そこで考えたのは『芯地』だったのです。

確かにそうですよね、シャツには芯はありませんし、逆にジャケットにはどんなに薄くても芯はある。
もし、芯地を完全になくせば、シャツのようなジャケットが出来るのではないか?

昨夏は漠然とこんな事を考えていた私ですが、今回のオーダーがこれを解決してくれるかも知れません。

そこで、このことをテーラーさんに伝えると、その人が仕立てられるナポリ風の仕立ては正にこれを解決した仕立てであることが判明したのです!!

一般の方には分からないと思いますが実は芯のない上着を仕立てるのって、本当に大変なことです。
芯がなければクタクタになって、ジャケットに立体感が出ないですし、生地のクセ取りだって普通じゃできません。
接着芯がこれだけ世の中に普及しているのも、表地と接着することで短時間で(強制的に)生地に立体感を出すことが出来るからです。
それを全く使わない訳ですから・・・

こうした背景がありつつ、今回はこのオーダーを進めることになりました。

■ オーダー内容は・・・ ■
オーダー内容は次のようにしました。

□ 生地は・・・ □
BL9318(伊アニオナ社製)シルクウールリネンの3者混
>>> 実は春夏カタログの最終ページに掲載した伊アニオナ社製のもの。
ご存じの方も多いと思いますがアニオナはゼニアに買収されたため同じ商品がゼニアのタグでも売られています。
(当店はどちらも取引があるためどちらのタグでもお付けできます)

色目はネイビーで、通常の紺ブレより気持ちカジュアル感を出したい方にはオススメの素材です。
画像は丁度昨年ご注文いただいたお客様の仕上がり画像がありましたのでそちらでご紹介!

ところで、私が何故この生地にしたかというと・・・実は訳があって
にて掲載した赤いジャケット(カバーオールジャケット)は私の私物でサイズも同じ。
加えて今回の紺ブレと色違いのアニオナ製なんです。
ですから色の違いを除けば全て一緒の素材ですから一番比較しやすいと思いまして、これに決めました。


□ デザインは・・・ □
>>> デザインは本当は自分で決めたかったのですが、そのテーラーさんの流儀があるそうで、2つボタンor3つボタンの選択肢しかなく、致し方なく2つボタンのシルエットに決定。

□ 型紙は・・・ □
>>> もちろん型紙は自身専用の物を持っていますのでそちらを先方へ渡し、そこからこのオーダーの型紙を再作成して貰うことに。

そして、、、待つこと3ヶ月!!!
無茶苦茶待たされました×××(ご高齢のテーラーさん故ですね、、、)
そして仕上がった仮縫いがこちら!

■ 仮縫いはこんな感じに・・・ ■
ご覧になられた皆さんからこんな声が聞こえてきそうです。

吉村さん、オーダーしたの紺ブレじゃないの?白ジャケだった?

そうです。
紺ブレを頼んだのに仮縫いで上がってきたのは白の布で作ったモノでした。

初めてご覧になった方は疑問に思われたかも知れませんが、実はこれはそんな珍しいことではなく、超高級素材(ビキューナ)や特殊な仕立ての場合はこういった白布(シーチング)で仮縫いを上げることがオーダーでは時々あるのです。

通常の仮縫いではバス芯などを付けた上で仮縫いを用意しますので、今回は芯を使わないためそれではイメージが沸きにくいということでシーチングでの仮縫いになったのです。

そして、ここからはフィッター中島氏の登場
本来は依頼したテーラーさんへ出向いて仮縫いすればよいのですが、ここはこちらも技術者を抱えていますから中島さんにお願いしました。

事前に中島さんと相談したことは・・・

右肩下がりをどうするか?
>>> 私の場合、体型的に右肩下がりが非常にキツイので、これをパッド無しでどこまで目立たなくさせられるか?
見た目はパッド無しだから誤魔化せないにしても、余計なシワをどこまでなくせるか
これが大きなポイントになると思います。
画像だと私の右肩下がりの程度が分かりますよね。
かなり左右のバランスが違います。

袖の細さ
>>> これはパターンの問題ですが、折角ジャケットでなく、シャツに近い物を!とイメージしている訳ですから、シャツっぽく袖を思いっきり細く仮縫いして貰うことにしました。
どうですか?シャツのように、、、と言うのも何となく分かりますか?

さて、さて
他店に依頼したジャケットですがどうなるのでしょうか?
細かな仕様は他社仕様になるため現状では私も良く分かりません。 出来上がりが楽しみですね。

■ 実はもう一つの狙いが・・・ ■
これだけで終わらないのが当店のオーダー。
このナポリ風の軽量ジャケットのお仕立て、実はもう一つ大きな狙いがありました。

それは冒頭でも少し匂わせましたが、実はこのお仕立てが出来る職人がご高齢で今後製作が出来なくなってしまうのです。
そこで同じくハンドメイドの職人を要している当社(三久服装)としては、何としてもこの技術の火を消してはならないということで、このジャケットに大変興味を持った新人遠藤君にこの技術を習得して貰おうと考えています。
もちろん、ようやく一人前になったからといって遠藤君だけでは容易なことではありません。

そこで吉井工場長監修の元、新たな商品開発にチャレンジ中です。

さてさて、どんなジャケットが出来るのでしょうか?
夏が来る前に商品化出来れば良いのですが・・・

次回(上手くいけば)仕上がりと新商品のご紹介が出来そうです。