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オーダースーツのヨシムラ
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 改めて一枚仕立てジャケットを考える
6月も中盤に差し掛かりいよいよ西日本では梅雨入りが発表されましたがスーツにとっては辛い季節の始まりです。
ジメジメ鬱陶しい気候が当分続きますがしばらくこの鬱陶しさを我慢しなければいけませんね。
そういった季節の変動に伴い世間ではそろそろクールビズがスタートしますが皆さんも準備はお済みでしょうか?

当社でもこの春発表した三久新企画「一枚仕立てジャケット」を中心にジャケットのご注文が最近増えて参りまして、今回はシーズンも間近に迫っておりますので改めてこの「一枚仕立てジャケット」をご紹介させて頂きたいと思います。
 >>10.03 三久新企画「一枚仕立てジャケット」

先ずこのジャケットの成り立ちをご紹介致します。
このジャケットは東京店の玉岡氏と三久服装が中心となって企画を行ったのですが、驚くほど軽量で通気性が良くこれから控えるジメジメした梅雨や過酷な夏場にはとても重宝するジャケットです。

世間で人気のニットジャケットのような物はトレンドに左右されすぎる、また生地としての保ちが悪いので長くお召し頂けないということを考慮するとお客様にこの様なジャケットをオーダーして頂くメリットがあるのか?と当社では今ひとつ足を踏み込めないでおりました。
そこでこのジャケットを企画するにあたり当社の掲げたコンセプトが...

・ニットジャケットの様に軽いが生地の保ちが良く長く着れる物
・トレンドに左右されすぎず何時の時代でもお召し頂ける物
・通常のイージーオーダーでは無く、より当社らしいハンドメイド仕立て


 ...でして、
この様なコンセプトを元に開発されたのが今回の一枚仕立てのジャケットでした。

特にこのジャケットのユニークなところはベースグレードはイージーオーダーでありながら縫製をハンドメイド工場である三久服装で行うことで、クオリティーはハンドメイドレベルになっていることです。
加えてこのジャケットは、ハンドメイド工場での縫製という利点も活かし仮縫いオプション化して本格的なフルオーダーでもお仕立て出来るようにしています。

このため、一見すると、
イージーオーダーフルオーダー仮縫い“あり”“なし”
...と分かりにくいのですので、そこで今回は従来のイージーオーダーと比べてどのような所が良くなるのか?と言う事にスポットを当ててご紹介したいと思います。

そこで、まずは、先月東京ショップマスターが一枚仕立てのご注文を頂いたお客様の仕上がりご紹介しておりましたが、その中で書かれていたことから更に深く考えていきましょう。
 >>10.04芯なし1枚仕立ての仕上がり
ではお客様それぞれの気にされている点や気を付けた点などをご紹介しておりますが、フルオーダーの利点を簡単に言うのならばこういったこだわりをより明確に実現出来るということでしょうか。

例えば横浜にお住いのSさんのご注文からご紹介すると、、、
・衿のロール感 
・袖幅の修正
・着やすさと見た目を考慮しながらアームホールを調整する


と言った点を挙げておりますが、このような細かな部分を調整するにはイージーオーダーでのお仕立てではご注文頂いてから仕上がりまで仮縫いがないため、着心地に影響する部分はあまり冒険が出来ません
また、補正にも限界があり、なかなか一度では調整しきれないのですが、
フルオーダーではお客様の見た目のご要望を踏まえた上で仮縫いを行いますので着心地を確認しながら調整することが可能です。
その様なことから自ずと完成度が高まるという訳なんですね。

オーダーの世界では「スーツは肩で着る」という言葉があり、我々としてもどの部分よりも先ずそこに注力するのですが、Sさんのようにしっかり肩が収まる方は良いのですがこのジャケットの特徴でもあるパッドがないことから考えますと特に撫で肩体型のお客様では綺麗に肩が収まらない場合もあります。
画像は先日このジャケットをイージーオーダーでお納めしたあるお客様の仕上がりです。
ご覧になっていかがでしょうか?

とても綺麗に仕上がっていますね。
特に肩のラインは非常に見事で、イージーオーダーとしては十分な出来、これならオプション料を払い仮縫いを入れる必要はないかな?とも思えるのですが、、、
実は人間の身体はそうそう簡単には出来ていません。
肩のバランスというのは肩の幅、肩の傾斜、左右のバランス等々、全てが人それぞれ微妙に違うのです。

先程の画像を少し下までご覧いただきましょう。
ご覧いただき、いかがでしょうか?
背中姿には、腕を前に出すためのゆとりが必要ですからピンク○部分のシワは手を前に出すためのゆとりです。

ですから、これがイージーオーダーでしたら全く問題のない素晴らしい仕上がりなのですが...

更に一歩進み、フルオーダー的には次の画像の部分が気になってしまうのです。
この黄緑線を付けた部分は右肩の微妙な肩下がりから来る通称“タスキ皺”と呼ばれる物ですが、左肩はさほど気になりませんが右肩には少し強めに現れています

一方、別のお客様ですが仮縫いを入れた仕上がりをご覧下さい。

いかがでしょうか?
こちらにはこういったタスキ皺が出ていないのがお分かり頂けると思います。
この違いが仮縫いを入れるか?入れないか?の違いなのです。

もちろん、仮縫いをいれないオーダーでもご注文の時点でなで肩とか、前肩etc肩パッドの厚み等々の調整や体型補正はいたしております。
ですから、補正の全くない既製品と比べれば雲泥の違いだと自負しておりますが、それでも仮縫いを入れる入れないではこれだけの違いが出てきてしまうのです。
この微妙な違いをどう受け止めるか?!

それはお客様毎の考え方に因ると思います。
決してどちらが正解でどちらが不正解という訳ではありません。
だからこそ、イージーオーダーにもフルオーダーにもなるこのジャケットは面白いのです。

画像をご覧になって、黄緑色のタスキ皺が気になる方は、今度は一度仮縫い付きのフルオーダーにチャレンジしてみてください。
一度、フルオーダーでご自身の型紙を作れば、後はイージーオーダーでもその型紙を使用できますから長い目で見るととてもお得です。

ここからは少し宣伝になりますが、、、
大阪店では7/23(金)〜25(日)の3日間、この道30年のベテラン技術者を招いたフルオーダー受注会を行います。
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私が3年も大阪を離れ、東京店へ修業に出たのも、こういった技術を学ぶためでしたので、是非大阪店の皆さんにこの技術をお伝えしたいです。

「あの人のスーツは何故格好いいんだろう?」「自分のスーツどうすればもっと格好良くなるんだろう?」そんな疑問にきっと応えてくれると思います。
一度是非お試し下さい。
 (執筆:大阪SHOPMASTER山橋)