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オーダースーツのヨシムラ
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撥水加工の実験
 どんなに良い仕立てのスーツを着ても梅雨時の
ジトジト雨や夏の台風、秋の長雨等々天気の悪い日に着てしまったスーツは、ぐちゃぐちゃになったり汚れたりと気分が滅入るものです。

皆さんはそんな時どうされていますか?

一番ありがちなのは雨の日用にスーツや靴を用意しておくことかと思いますが、それでも大切な人に会う時などは変な格好は出来ないものです。
どうしましょう。こうなってしまったら?
撥水加工の付いた生地のスーツで仕立てる?
・・・そうですよね、最近はハイテク素材も多いですので、例えばゼニアのミクロンスフィアーなどナノテク撥水加工を施したスーツも時々あります。

でも、、、撥水加工を優先して生地を選べば...自ずと選択肢が狭くなりますし、そうなると自分の気に入った色柄のスーツを探すことが出来なくなってしまいます。
実際私共のお店で取り扱い全商品の中で撥水加工付きの素材を探してみたところ、何と全体の7%位しか撥水性のある生地はありませんでした...

長雨の時、どうしたものかな、、、と思った時、ふと閃くものがありました。
そうだ!後加工で撥水加工が出来ないかな?
確かに、製品となった後の加工で撥水加工を施すことが出来れば、希望すれば全商品に撥水加工を付けられる訳だし、こんなことが可能であったら良さそうですね。

イメージとしてはスキー用品のようなスプレー式で塗布する方法もありますが、でもこれでは濃淡が付きますし、家庭用でも販売されている物ですからお店でやる価値はありません。

では、どうすれば・・・

そんな時、私の私物でこんな物がありました。
1980年代製 英国製バーバリートレンチコート
そう、、、私が高校生時代から愛用していたバーバリートレンチ。
かれこれ25年もの間だお世話になったSHOPMASTER愛用のコート。年代物です。
でも、今では薄汚れ、雨に降られるとべちゃべちゃになってしまうコート。
試しに水を掛けてみると、今ではこんな風になってしまいます...

それをこの春、三久服装に持ち込んで水洗いでリフレッシュして貰おう!!
こう、思っていた時、先述のことが脳裏に浮かんだのです。

これって、水洗いと一緒に撥水加工できないかな?
そこで、困ったときの吉井工場長で工場長に聞いてみました。
 : 吉井さん、今度私の20年来使っているコートの水洗いをお願いしたいんですけど、綺麗になりますか?
工場長 バーバリートレンチっていうと、密度の詰まった綿ギャバですよね。
汚れも詰まってますけど水洗いで綺麗になりますよ!
 : その時に撥水加工を施す事ってできますか?
工場長 水洗い後に、つけ込む形の撥水加工液はありますけどやってみますか?
 : そうですね。これから梅雨の時期なんか重宝しそうですからやってみて下さい。
工場長 分かりました。水洗いのタイミングでしたら手間もそれ程掛からないので大丈夫です。
 : お願いします。
そうして、、、水洗い&撥水加工を施したコートがこれ。

水洗いをしたので、汚れもスッキリ落ちてまるで新品のようです。(元々こんな色だったの?って感じです。)
それはさておき、早速撥水加工の効果をチェック!!!
こちらが加工前に撮影しておいた最初の状態

どうでしょうか?
水を見事なまでに吸ってしまって、色が変わってしまってますね。
致し方のないところでしょう。

それでは撥水加工後はどうなっているでしょうか?

撥水加工後の画像がこちら...

おっ!ちゃんと撥水しているな。。。良い感じ♪

っっっと思っていたのもつかの間、画像からも分かりますが暫くするとやはり“にじみ”が出てきてしまいました。

そうです...
やはり完璧な撥水という訳にはいかず、水を掛けて放置すると程なく水が浸み込んでしまうのです。

う〜ん、これでは中途半端で“撥水加工”をうたい文句には出来ないな。残念。
そこで改めて工場長に報告旁々相談してみました。
 : 工場長!先日撥水加工して頂いたコートですが、初めは撥水できていたと思ったんですけど、少し時間が経つと結構水を吸い込んでしまうんですよね・・・
どうしたもんでしょう?
工場長 そうですね... 洋服である以上100%の撥水が出来てしまうと、今度は縫うことが出来なくなりますから※1ある一定の所までしか撥水加工は出来ないと思いますが、それにしてももうちょっと撥水して貰いたい物ですよね...
※1: 洋服は仕立てる段階で十分なプレスをすることで立体的な洋服に仕上がります。(これを“いせ込み”と言います。)
そして“いせ込む”ためには生地(糸・原毛)が水分をある程度吸わなければ生地を操作することが出来ませんので、過度な撥水はその妨げになってしまうのです。
 ●ご参考:生地を立体的にするということ
工場長 でも、効果をもう少し上げることなら可能ですよ。
 : えっ?どうするんですか?
工場長 前回は水洗いの段階で希釈さらた撥水液に浸けることで加工しましたが、原液(を少し薄めて)を塗布してそのままプレスすることで効果を強めることが出来ますよ。
 : へ〜っ、そうなんですか? なんか強烈そうですね...
試しに私のコートをもう一度加工して貰えますか?
工場長 分かりました。あと一歩ですからね、やってみましょう。

工場がこういった事に興味を示し前向きに行動して貰えると本当に助かります。
そこが当社の良いところでしょうかね、、、
(工場は概して、頼むと“何でそんなコトするの?”的な対応をするところもありますが、そうなると一歩も前に進みません。)

そして、待つこと2〜3日。 出来上がりはこちら!!
どうでしょうか?
水を掛けて10〜20秒おいたあとでも水滴が球のようになっています。

先述の通り完璧な撥水は弊害もありますので難しいですが、時間が経ってもそれほど変わりませんでした。
原液効果は抜群のようです!
効果を試す上で、ホースで水を掛けるシーンを撮った動画をご用意しましたのでご覧下さい。

いかがでしたか?

その他、別の生地でいくつか試してみましたが、撥水の効果は概ねこんな感じでした。


< 撥水に適した素材 >
撥水加工には総じて目の詰まった組織の生地が適しています。
一番適しているのが、スプリングコートなどで使用する綿ギャバジン
< 撥水加工に適さない素材 >
反対に撥水加工に適さない素材は次のような素材です。
目の粗い夏物スーツ地(3プライ、4プライ、トロピカル、トニック、シャリックなど)
通気性の良さそうな物は概してそのまま水が抜けていくような感じでした。

どうやらスーツに対しては効果は絶大!という程ではありませんが、綿のレインコートやトレンチコートなどには効果絶大のようですね。

皆さんも愛用の綿コートなどで撥水加工が取れてきたな、、、とか撥水加工を付けたい!という方がいらっしゃいましたらお申し付け下さい。

お値段は、 撥水加工のみ   +3,150円
      水洗いとセット   +1,050円  です。
:汚れた状態ではお受けできません。
新品もしくはクリーニング後にお持ち下さい。