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基本設計の大切さ

■ 襟が立つ ■
 イタリアなどの外国の街で見かけるシャツ姿の男性はネクタイがなくてもどうしてああもカッコイイのでしょうか?
体型?センス?色々と上げられますが、我々ファッション業界の人間としてはその要因の1つに、
  襟が綺麗に立っているから
    ・・・という要素を加えたいと思います。

皆さんはこんな経験がありませんか?
アフター5でネクタイを外したら台襟がクタッと折れ曲がってしまった×××
イタリアの伊達男はこれをNGとします。襟はスッ、、、と立っていなくては。

昨今はクールビズの定着もあり、ホワイトカラーの人達もネクタイを外す機会が増えてきました。
そんな時、ただネクタイを外しただけの姿では折角のシャツが勿体ないです。
そこで私達は上質なシャツの原点に帰り、“襟が美しく立つ”ことを重視した縫製を行っています。
素材やデザイン、糊の強弱にも因りますので、誰が仕立てても必ず綺麗に立つ!とは断言できませんが、当店の仕立てたシャツの襟の立ち具合、是非検証してください。

■ 襟の接着芯 ■
 シャツのお仕立では通常襟に腰を持たせるため接着芯を貼ります。
それは一般的には、画像のような状態を綺麗に見せるため、襟足の表側(首に触れる側)に接着芯を張ります。
しかし、直接肌に触れる襟足の表側に堅い芯を張るとどうなるでしょうか?
それは >>> 着心地の悪化をもたらします。

そこで当店のお仕立では襟足の裏面(ネクタイが当たる側)に接着芯を張ることにいたしました。
これによりネクタイが通る側がしっかりすることでネクタイ通しを良くし、一方で肌に直接触れる面は芯地が張っていないためスムースになります。

このやり方はイタリア的な物作りでよくやる手法ですが、当社では写真撮りの見た目よりも着用感を優先しこのような仕立て方を標準としております。

画像は、仕上がったばかりのシャツ。
凹凸が分かるようにフラッシュを焚いて撮影しましたが、丸印のところが少しプカっと生地が浮いているのがお分かり頂けますか?
これが襟足の表側に芯地が付いていない証拠です。(よく見ると他にも沢山ありますヨ)
また、本工場では接着芯を使わないふらしでのお仕立も可能です。
基本は接着芯仕様ですが、ご希望の方はオプションとしてお申し付け下さい。(追加費用は無料です)

■ 縫製の運針 ■
 運針とは1インチ(約2.5cm)の中をどれだけの針数で縫うか?という基準ですが、通常の製品では16〜18針で仕立てるのが一般的ですが、当店の仕様ではこれをより細かく21〜22針で縫うよう指導しております。

手間暇は掛かりますが、その分緻密な縫製をしたシャツが仕上がります。)

■ 前振りの利いた後付けの袖 ■
 通常シャツの縫製では、見頃(胴体の部分)の裾から縫いはじめ、脇下まで来たところで、そのまま袖に移り、袖先まで一気に縫い上げます。 このため見頃と袖の縫い合わせである脇下の部分は、1点で縫い合わさっています。(お手持ちのシャツの脇の下をご覧下さい。) これは、胴体の縫製と袖の縫製を一気に仕上げることで作業効率を上げるために行っているのですが、このやり方ですと着用する人の腕の向きと、シャツの袖の向きが合致していません

つまり、身体(見頃)の中心と腕(袖)の中心が同じ点で縫い合わされているということは、腕が“気を付け”をした状態を自然体として縫っていることに他ならないのです。)
 一方で、普段の皆さんの腕(身体)はどうでしょうか? 
自然な状態では手は身体に対して少し前に位置していませんか?
私達が気にするのはこの点なのです。

人間の手は少し前方に向いている訳ですからシャツの袖も少し前に向けて袖を付けるべきではないかと。
このことはスーツでは当たり前のように行っていることですが、シャツではこれまであまり意識されてきませんでした。

そして、これを解消するためには袖の中心点を身体に対して前に持っていく必要があります。
専門的にはこれを袖付けを前振りにすると言いますが、これによって当店の仕立てでは脇下部分の縫い合わせが、画像のように2cm程度袖が前に付きます。
作業効率は著しく悪化しますが、私達は着心地優先でこういった点にも注目してお仕立しております。

一度お試しになってこのように腕をグッと前に出してみてください。
これまでのシャツにはなかった腕の開放感が得られると思います。

■ 体型を鑑みたディテール作り ■

〜 胸ポケット位置補正 〜
 またまた登場当社社員なで肩K君
彼のシャツは既製品ですとなで肩の傾斜故にどうしても胸ポケットがこのように落ちてしまいます。
これですとなで肩がより強調されますし、見た目も使い勝手も良くありません。

当店の仕立てではなで肩の方には胸ポケットが下がらないようポケット位置の補正も行っています。

いかがでしょうか?
補正をするとポケットの傾斜が少し落ち着いて見えますね。
勿論使い勝手もその分向上します。

■ 貝ボタン ■
 皆さんお使いのシャツのボタンは貝ボタンでしょうか?それともプラスティック

化学品と比べて貝のような天然物は数量・品質が限定されるだけに、それだけで高価な物と考えられますが、貝ボタンは単に希少性だけから高級(高価)という訳ではありません。
私達が貝ボタンを使うにはがあります。

それは、、、
毎日使うシャツは日毎汚れればクリーニングや洗濯されます。
当然、最後にはアイロンでシワを伸ばし次の着用を待つことになりますが、その際どんなに丁寧にプレスをしてもボタンはアイロンのに晒されます。

時に、クリーニング屋で仕上がってくるシャツはボタンが生地に沈み込むような形でプレスされることがありますが、これはボタンごと高圧プレスを掛けていることに他なりません。

そのような時、元々が石油系のプラスティックは温度によっては溶けたり、焦げたり、変質します
一方で貝ボタンでは表面のたん白が剥離することはあってもプラスティックより熱に強く変質しにくい特徴があります。

加えて、貝ボタンならではの微妙な表面感
天然物ですから1つ1つ表情が微妙に違いますし、ボタンにする過程で研磨するため微妙なざらつき感が滑りにくくさせボタンを留めやすくします

当店では、高級感を出すため、また上質なボタン付けをしていることもあり、高瀬貝ボタンの中から厚みのある3mmの物を標準仕様で使用しております。
(14,000円以上のシャツに限ります。またご要望に応じ通常の1mmボタンの使用も可能です。)

■ ボタン千鳥掛け ■
 当社ではボタン付けにもこだわりがあります。

一般にシャツのボタン付けは×の字に留めることが多いですが、当店のシャツではこれを鳥の足のような千鳥掛けでお付けいたします。
もちろん、これはミシンでは出来ないことでその作業は全て手作業で行います。

何が良いか?どこが良いか?
それは、千鳥掛けにすることでボタンを留める中心点が僅かにずれ、ボタンに微妙な傾斜が付くことです。
これにより微妙な傾斜がボタンを付けやすくするという利点が生まれます。

あわせて全て手作業で付けると言うことは、ボタンの裏側にを付けることとなり、その厚みからボタンが留め易く、取れにくくなるという利点も生まれます。

どちらも生産効率を上げるという発想からではなく、お客様がお召しになる時いかに快適にご着用頂けるか?ということを考えた末に行き着いた当社ならではのやり方です。

画像はボタンの裏側の画像。
しっかりとした軸があるのがお分かり頂けると思います。

■ スプリットヨーク ■
 シャツの肩部分(ヨーク)を背中心を境に2つに割って仕立てた物スプリットヨークと言います。
廉価なシャツ、生産効率重視のシャツではこの部分を1枚で仕立てますが、これですと生地の縦糸横糸の地の目と肩(背中)の丸みに合わず、フィット感や耐久性が劣ってしまいます

ストライプ柄などのシャツが一番分かりやすいですが、背中を見て背中心で切り返しがあり、柄が真横ではなく腕の方向にやや斜めに入っているのがスピリットヨークの特徴です。

生地の柄が腕を前に出す方向に向いている...と考えれば自ずと効果の程もご理解いただけるかと思います。

■ ガゼット ■
 ガゼットとはシャツの裾で、前身頃と後身頃を縫い合わせる部分に付ける5角形の補強布を言います。
その昔、縫製技術が未熟な頃、シャツは裾の縫い目から裂けることが多く、これを防ぐための補強です。
昨今の縫製技術では裂けるようなことは滅多にありませんが、こういった所まで気を遣ってお仕立しております。