2018年12月27日更新
来年2019年は天皇陛下退位に伴い元号が変わりますね。 平成元年は私は大学入学の年でしたのであれから30年、あっという間だった、というのが正直な感想ですね。 改元の頃はバブル経済絶頂期、個人的に恩恵を受けた記憶はありませんが、建築会社を経営していた父親はいまだ当時を懐かしむことを今でもよく口にするので、仕事も遊びも満喫していたのでしょう。 その後、社会に出てからはバブル崩壊、長い不況時代に突入し、物事の価値観も昭和の時代とは大きく変わった印象があります。 特にアパレル業界のこの30年は正に苦難の連続で、激変したといっても言い過ぎではないでしょう。 昨今はファストファッション全盛で、高級ブランドは富裕層だけのものになった感があります。 大学生の頃、とても買える値段ではなかった多くのブランドに多くの若者が憧れ、一世風靡したあの時のような時代になることを次の元号では願うばかりです。
さて、今回は先日前々職時代の大先輩、田中社長が経営するセレクトショップ”IZA”(イザ)が毎年クリスマス時期に開催するピンクリボン(乳がん予防の啓発運動)のチャリティパーティ用にオーダーしてくれたスタッフのNさんのタキシードをご紹介したいと思います。 そもそも今回のタキシード、オーダーに至った経緯は田中社長のショップで扱っている某グランメゾンのタキシードをお直ししてパーティに挑む予定だったのですが、如何せんNさん、女性も驚きの細さで、修理のしようがないと私が匙を投げたところ、ならオーダーしてやってくれ、と依頼されたことが始まりでした。 しかもタイトなスケジュールで、且つ大先輩からの依頼でしたので、間に合いませんでした、なんてことになろうことならどんな目に合うかわかりませんから(笑)、プレッシャーも半端なく、何かと大変なオーダーでした。 それでは早速仕上がり画像と合わせて今回のオーダーのポイントをご紹介してまいりたいと思います。
"G1130" Loro Piana FOUR SEASONS Super130's Black shadow stripe あいにく同じ生地はSoldOutとなってしまいましたが、同様のブラックシャドーストライプの生地は年明けの初売り用にご用意しておりますので、近い将来慶事用スーツをご検討されていらっしゃる方はこの機会に是非お仕立てされてはいかがでしょうか?
左側がベースとなった某グランメゾンのタキシード、右がそれを模してお仕立てしたNさんのタキシードです。上側がベースとなった某グランメゾンのタキシード、下側がそれを模してお仕立てしたNさんのタキシードです。 ラペルデザインや腰ポケットのフラップの有無、着丈の違いに伴うポケット位置やetc、ディテールの違いにより若干印象が違って見えるかと思いますが、概ね近い雰囲気には近づけたかと思います。 ただ一見して異なるのは袖付けですね。 左側のグランメゾンの物は袖が外に振っておりますが、右のNさんのタキシードは内側に巻くようについておりおます。 これは何が違うかと申しますと、主にヨーロッパのブランドは当然モデルとなる体型はヨーロッパ人を想定してデザイン、パターンを起こしております。 アジア人と比べると、総じてヨーロッパ人は撫で肩(袖山が低い)が多く、反面アジア人は怒り肩(袖山が高い)が多くなります。 袖山を低く(撫で方補正)すると袖は外に振れやすくなり、高くすると逆に内に巻くようになります。 またアジア人は肩が前に湾曲している前肩が多く、今回のNさんは怒り肩で且つ前肩であった為、袖が内に振れてしまったという訳です。 見た目を重視すれば前者の袖山を低くする方がスタイリッシュに見えますが、着心地は損なってしまいますし、着心地を重視すれば見た目が異なってしまいますし、バランス加減が難しいところではありますが、オーダーの場合と申しますか、私はやはり最低限の着心地はKeepさせつつ、各箇所のサイジングでスタイリッシュさを出すようにしております。 続いて、今回Nさんからは通常のタキシード仕様だと使い勝手がパーティ等に制限される為、幾分普段使い用としてのデザインに振ってほしいとの要望がありました。
ただあまり装飾(デザイン)をシンプルにすると単なるビジネスユースのブラックスーツになってしまいますので、さりげなくフォーマル感が出るようにボタン及び腰ポケットの玉縁を光沢のあるポリエステルサテン地に変更しました。 よくよく見なければ気付かないレベルかもしれませんが、ベースの生地がシャドーストライプですので、凹凸感の無いサテン地は程よいアクセントになっております。 これなら普段のお仕事でも嫌味に見えることなくお使い頂けるでしょう。
ざっと今回のポイントをご説明致しました。 いつもは商品画像ばかりなので、今回はNさんに顔は隠した着用画像をお願いしておりまして、先日(20日)のパーティにお邪魔した際に撮らせてもらったのですが,,,,, お恥ずかしいことに撮影方法を失敗してしまいまして、デザインも生地もなにもかも全く分からない単に黒無地のスーツ画像になってしまいました。 やはりお酒が入っての撮影はダメですね、良い勉強になりました。 今度からは飲む前に撮影するようにします(笑)