2023年9月1日更新 執筆者:東京店 河本
ようやく朝と晩は秋の訪れが少し感じられる過ごしやすい気温になってきましたね。 日中はまだ真夏のような暑さですが、少しでも心地よい風を感じられ、なんだかホッとした気持ちになっている東京店の河本です。 前回の「お客様いらっしゃい」では、お客様ではなく私、河本が登場し、スラックスへの愛とこだわりについて存分に語らせていただきましたが、ありがたいことに、HP更新後「記事を見て、スラックスを作りにきました!」という方数名にご来店頂きました。
※詳しい内容は【2023/7/10更新 スラックス愛】よりご覧いただけます。
ビジネス用のスラックスはもちろんですが、一方でカジュアル化も進んでいることから、スラックスはビジネス用とプライベート用の境界線を越えた『カジュアルスラックス』をも強く求められる時代に。 しかし、世の中では【オーダー=スーツ】という概念はまだどうしても根強く残っており、スラックス単品でのオーダーは出来ない、とお考えの方が多くいらっしゃいます。 特に、夏はスラックスがコーディネートのメインアイテム。自分好みの色・柄、デザイン、サイズ感のモノを着用したいですよね。 ですから、そんな方々のために、「スラックス単品でのオーダーも可能である」という事、「オーダースラックスはこんなメリットがある」という事を知って頂く。そして、もっと身近にオーダーを楽しんで頂きたい。そんな思いもあって書きましたので、少しでも反響があり嬉しい限りです。 さて それでは、今回のメイン!私がオーダーしたスラックス3本の仕上がりについてご紹介いたします。 念のため、私がスラックスをオーダーする際のこだわりポイントについて少しおさらいすると、、、
オーダーらしさが非常に出る部分。窮屈感のある食い込みもなく、また無駄な余りもない、すっきり綺麗とした印象にするのがポイント。
デザイン性が高く、アレンジ方法も様々。《オーダー感》をより味わうことが出来る仕様。 また、靴を選ばず(ベルトによる色合わせが不要のため)、好きな色の革靴、またスニーカーも合わせることが出来る。
ベルトレス仕様にすることで、サスペンダーをしない場合ウエストはジャストフィットのサイズ感に。その為、タックが2本or3本であれば、ウエストがジャストサイズで引き締まっていることで、腰周りのボリューム感がより強調される。このコントラストが、よりウエストを細く見せ、スタイリッシュな印象を与えることが出来る。 この3つが私のこだわりポイントです。 では、これらのポイントを踏まえ、それぞれどんなスラックスに仕上がったのか。 早速ご紹介させていただきましょう!
今回は3本共にワイドシルエットで仕立てましたが、それぞれの生地の違いで全く異なる印象に仕上げました。 私のこだわりポイントである、ベルトレス仕様に2本or3本のタックは、やはりデザイン性が高くスタイリッシュですね。カジュアルスラックスには持ってこいのディテールです。
そして、私が最も大切にしているヒップのシルエットも、窮屈感も無駄な余りもない程よいゆとり感で綺麗に仕上がっているのではないでしょうか。 私物を自分で褒めるのは恥ずかしいですが、今回もなかなかいい感じに仕上がったかなと。 いつもスラックスを仕立てる際は色々なデザイン、シルエットを試しますので時々失敗してしまうこともあるのですが、今回は無事一発で納得するモノが仕上がりましたので、ホッとしております。
上質な艶が特徴のゼニア・トラベラーの生地で仕立てたスラックスは、非常に高級感のある仕上がりになりました。 ビジカジ用のジャケパンスタイルやプライベートシーンで、どこか引き締まった上品な着こなしをされたい方には、非常にオススメのスラックスです。
このような艶のある生地で仕立てる場合、一般的にはややテーパードを効かせたスッキリしたシルエットで仕立てます。いわば、ベーシックなシルエットにするということです。 ただ、今回は敢えて生地を多く使うワイドシルエットで仕立てたことで、動くたびになびくドレープ感を演出。生地本来の綺麗な艶をより活かした仕立て映えするスラックスに仕上げました。 これにより、フォーマル過ぎず、またカジュアル過ぎない絶妙の印象を与えることが出来ます。
これは、私が密かに勧めているディテールの1つです。 通常、持ち出しが付く際は、ボタン留めです。一方、今回のカン留めというのは、ボタンではなく、ホックで留め、表から付属品が見えないようにしている仕様です。 これはタキシード的な考え方ですが、タキシードはなるべく付属品が見えないように無駄な仕様を省いたり、隠したりします。そうすることで、より洗礼されたドレッシーなスタイルになるのです。 それと同じように、今回はボタンを隠すようなカン留めの仕様で、上品な印象に仕上がるようにしました。
夏の定番素材であるシアサッカーを使ったスラックスは、やはり爽やかな印象です。 今回は特に清涼感抜群のオレンジストライプを選びましたが、なんせこの圧倒的存在感。 これは、もうジャケットを着たとしても主役は完全に【スラックス】になりますので、その他のアイテムはなるべくシンプルなモノでまとめたコーディネートが良いですね。
帯巾を太く、また持ち出しも長く設定した、これぞオーダーらしさの詰まったディテールです。 このように、オビ部分に大胆なアクセントを加えてあげると、襯衣(しんい)とパンツの境目にメリハリをつけることが出来るため、カットソーをタックインするようなスタイルも楽しめるようになります。 ※襯衣(しんい):上着の下、肌の上に着る衣類
2タックは上述したようにこだわり部分の1つですが、その中でも今回インタックを採用したのが大きなポイント。 ワイドシルエットで仕立てたスラックスというのは、当然パッと見た印象としては「太い」ですよね。しかし、ただただ太いという印象だけではなく、太いながらもどこかスッキリした印象のスラックス。これが私の大好物です。
今回のシアサッカーの素材はコットンですので、生地はウールに比べ硬めです。 その為、何も考えずワイドシルエットにすると、少しマニアックな話ですが、生地が横に張った状態でキープされ、特に太もも周りが膨張してしまうのです。 そこで、インタックは人の目線を内側に向け太もも周りをスッキリ見せる視覚的効果がありますので、少しだけですがスタイリッシュな印象を与えることができるよう、インタックで仕立てました。
ライトベージュが映える春夏らしいスラックスに仕上がりました。 ベージュスラックスは、やや派手だからか案外避けられがちですが、実はどんなコーディネートにも上手く馴染む万能アイテム。 上品で綺麗目なスタイルも良し、カジュアルなスタイルも良しと1本持っておくだけでコーディネートの幅がグン広がります。 合わせるアイテムで様々な表情を見せてくれるベージュスラックスは、重宝すること間違いないでしょう。
これもオーダーらしいディテールの1つ、BOX+1本タック。 タックは、太いヒップと細いウエストとの落差を埋めるためにありますが、ゆったりしたシルエットを希望する場合は、タックを増やします。 今回は、向きの違う折山(インタックとアウトタック)が向かい合うような形のBOXタックと、プラスでもう一本横にタックが入るといった、少し複雑な構成でゆったり感とデザイン性を表現しました。 既製品ではなかなか見られない非常にオススメなディテールです。
BOX+1本タックのデザイン性をさらに高めるのが、このフォブポケット。 元々懐中時計を入れるために作られたものですが、今は洒落感をプラスするためのディテールとして付けられることが多いです。 ちょっとした遊び心を取り入れた良いアクセントになりますので、カジュアルスラックスには持ってこいのディテールです。 ただし、物理的にタックと干渉するようなデザインは出来ないため、タックの上の位置に付けます。
以上、今回は私がこの夏仕立てたスラックス3本をご紹介させていただきました。 その生地の特性に合わせてシルエットやデザインを一つひとつ考える時、私にとっては至福のひと時です。スラックス好きにはたまらないですね。 今回ご紹介したものが少しでも参考になれば幸いです。 皆さんも、自分好みのサイズ、デザインでスラックス、仕立ててみませんか?