2024年5月17日更新 執筆者:大阪店 河本
こんにちは。大阪店の河本です。 朝晩と日中で寒暖差の激しい日が続いていますね。どうやらこの寒暖差で体調を崩されている方も多いようですので、皆さんも体調には十分お気を付けてお過ごしください。 さて 今回の『お客様ありがとう』では、ヨシムラの古参リピーターでいらっしゃるFさんよりご注文頂きました「拘り抜かれた渾身のスリーピース」がついに完成しましたので、その仕上り品を前回の続きである”来店されてからのストーリー”と合わせてご紹介したいと思います! 先ずは本題に入る前に、軽く前回までのおさらいをしておきましょうか。
※前回までの詳しいお話は【2024/4/5更新拘り抜かれた渾身のスリーピース】よりご覧いただけます。
ヨシムラとはもう20年以上のお付き合いになる、リピーターのFさん。 昨年には「カントリーテイストなスリーピース」をご注文され、その際本コーナーにもご登場いただきました。 そんなFさんからの依頼は、これからの季節に合わせた『ウォッシャブル仕様のスリーピース』。それも、ただのウォッシャブルスリーピースではなく、ディテール一つ一つにFさんならではの拘りが詰まった《デザイン性の高いスリーピース》をご希望されていました。
これは、事前に前SHOPMASTERとメールにて生地やディテールについて打ち合わせをいただいた後、お送り頂いた資料です。 今回Fさんがご希望されているディテールの内容を、このように一つの資料として作って下さいました。 こうしてFさんのお心遣いもあり、打ち合わせの段階でほとんど仕立ての方向性は見えていましたので、あとはFさんにご来店いただき細かな部分を詰めていく、といったところでしたが、、、 実は、ちょうどFさんが来店される日、私が大阪店の初出勤日でした。 ですので、「これからお世話になる方だから、河本君がご注文を受けてみては?」という前SHOPMASTERからの提案で、私がバトンを引き継ぐことになったのです。 そうして、急遽これまでのメールのやりとりや、お送りいただいた資料を色々確認しながら待つこと1時間。いざFさんがお見えに。 今回私が担当することをFさんにも了承いただき、早速私とFさんの打ち合わせの幕が切って落とされました。
先ずは、生地決めから。
生地は事前のメールのやりとりで、リネンライクな表情の機能性素材〈RIRANCHA〉 (リランチェ)のベージュ系をご希望されていました。 ですので、そちらの現物をお見せしたところ、思っていた通りの雰囲気だったようで、お気に召していただき直ぐに決定。 次に、Fさんが最も重要視するディテール決め。 こちらは、ほとんどが難しいもの(ディテール)では無かったですので、基本的には間違いが無いように資料を見ながら、一緒に確認していくような流れで進みました。 ただ、中には少し特殊なものもありまして、これらはしっかりと打ち合わせをしなければいけません。 Fさんが今回特に拘られていたポイントは5つ。
この5つが今回Fさんの特に拘りたいポイントでしたが、ウォッシャブル仕様以外の4つのディテールは、あまり一般的ではない少し特殊な仕様になっています。 それらについて見ていくと、
前回、Fさんは胸ポットの形を右上がりになったもので仕立てられました。 そして、今回はその胸ポケットの形はそのままに、腰のポケットも角度を付けられたいとのこと。形は内側から外側に掛けて角度が上がっていくというものです。 このように、腰ポケットに角度が付いたものは※工場で型紙の用意がありましたので、お付けすることは可能でした。
※工場で用意のある型紙は、内側から外側に掛けて角度が下がっていく形のものでした。ですので、これを「左右逆に付ける」という指示をすることで、Fさんが希望されていた角度が上がっていく形にしました。
しかし、実のところ工場で用意しているものは、画像のように角度がきつく丸みのあるポケット口ではなく、角度はやや緩やかで直線に近いポケット口です。 そのため、この点についてFさんにお話ししたところ、特に問題はない、とのことでしたので、了承を得た上で工場の型紙を使用したポケットを付けることになりました。
こちらは、特にインポートブランドのジャケットでよく見られるのですが、見ての通り衿が丸くカーブしている形のものです。 ストレートの衿に比べ、ボリューム感のある衿元を演出でき、インパクトもありますので、ご要望される方も多くいらっしゃいます。 一応このような衿の形はヨシムラでもご用意があります。しかし、実は現状一定のジャケットパターン(型紙)でのみ、付けることが出来るようになっているのです。 そのため、Fさんの前寸データを確認したところ、生憎Fさんは前回違うジャケットパターンでお仕立てされておりました。 そこで、今回はこの衿の形に出来るジャケットパターンでの仕立てを提案しましたが、Fさんは前回のジャケットパターン、サイズを基本変えられたくないとのこと。 困ったことに工場に相談しても「違うジャケットパターンでこの衿にするのは難しい」と断られてしまいましたので、これは正直に “衿を優先するか””ジャケットの形・サイズを優先するか“しかないことを伝えたところ、Fさんは「ジャケットの形・サイズ」を優先されました。 ですので、今回は丸みのあるカーブした衿の形はご要望にお応えすることが出来ず、ストレートの衿でお仕立ていただくことになりました。(申し訳ございませんでした)
こちらが今回一番の拘りポイントであり難関。 通常、ベストの背裏にはバックル付きの帯「尾錠」が付きます(尾錠無しも可)が、今回は画像のようにボタンタブ形状のアジャスターをお付けなられたいとのこと。なかなか見られない洒落たディテールですよね。
これは、事前のやりとりの段階で工場に確認しており、形・サイズ・付け位置の指定があればオリジナルで型紙を作ってくれると聞いていました。 ですので、ここは入念に打ち合わせを、と思っていましたが、、、
と、Fさんから責任重大の新たなミッションが。 実際にボタンタブ付きのベストの現物も無いし、正直かなり不安・・・ ですが、ここは折角任せていただいたので、色々考えながら形などを決めていきました。
これが、今回工場に依頼したオリジナル型紙のデザイン別紙です。 体型や着丈の長さも考慮した形・サイズ・付け位置になっているのですが、何せ現物が無い分、仕上がってくるまでずっとドキドキでした。 どのように仕上がってきたのか、後でお見せするのでお楽しみに!
クラシックかつ高級感のある仕立てとして人気の帯無し仕様ですが、こちらは問題無くお付けすることが可能です。 また、画像のように、今回はこの帯無し仕様にプラスして、深めの3.5cmVカット(通常1.5cm) 、そしてバック尾錠とこれまた洒落感のあるディテールをチョイスされました。 ここまで腰回りのディテールに凝ったスラックスはまぁ既製品には売っていませんので、スラックスがメインアイテムになるほど、単品で使っても非常にサマになり重宝すること間違いないしです。
これらの他にも、細かい部分で拘られていたディテールが沢山おありだったので、デザインシートや工場に依頼する仕様書はこんな感じになりました。 (もしかすると、今回の一番の仕事は“間違えずに仕様書を作成すること”だったかもしれません)
そして、最後にサイズの調整。 こちらは、前回のものを基本踏襲し、ほんの少し修正を掛ける程度でしたので、特段難しことはなく、スムーズに終えることが出来ました。 では、ここで今回お仕立てするスリーピースのディテールについて確認しましょう。
それでは皆さん、大変長らくお待たせいたしました。 これより、完成した『Fさん渾身のスリーピース』のお披露目です。 果たしてどういった仕上がりになっているのでしょうか。出来上がりはいかに! では、Fさんの登場です!
先ずは全体像ですが、皆さんいかがでしょう。 リランチェの生地感によるお洒落な雰囲気の中に、スリーピースのクラシカルさが相まった素敵な仕上がりになっているのではないでしょうか。 このFさんのコーディネートのように、アイテムに黒のネクタイ・黒の靴を持ってくると、見た目が派手な生地でも、引き締まった印象を与えビシッと決めていただくことも出来きますので、非常にオススメです。 もちろん、それぞれ単品で使えば、カジュアルライクなコーディネートを存分にお楽しみいただけので、1着持っておくと様々な着こなしを楽しめる万能スーツであります。 さて、全体像をご覧いただきましたので、続いてはFさんの拘りが詰まった各ディテールについて見ていきましょう。
スリーパッチパケットにミシンステッチと〈トラッドな雰囲気〉も漂う爽やかなこのジャケット、迫力があります。 ウォッシャブル仕様に肩はマニカカミーチャ仕様で仕立ている分、着心地は軽く快適で、またご自宅で洗濯も出来るという夏にぴったりなジャケットですので、これからガンガンお召しいただきたいですね。
そして、上着の拘りポイントである「角度の付いた3パッチポケット」 なかなか見られないディテールで、私も初めて見ました。 どんな感じで仕上がるかあまり想像が付きませんでしたが、やり過ぎない程度の程よい角度ですので、ちょっとアクセントの効いたパッチポケットみたいな印象で非常にgoodです。 胸ポケットは普通の箱型にして、腰ポケットだけこの角度付きのパッチに、という形でもカッコ良いと思うので、少し捻りのあるディテールにしたい!という方は、是非付けてみてください。
ジャケットとスラックスがインパクト大のため、前から見ると胸ポケットは付いていますが比較的シンプルな印象。 スリーピースの他、オッドベストでの着用でも綺麗に馴染んでくれるかと思います。 ただ、ベスト1枚で着用した時、ヤツが現れます。 おっ、いい感じ♪ 事前にイメージの画像はあったものの、サイズなどはお任せ、ということもあり不安でドキドキでしたが、なんとか形になって仕上がってきました。 これであれば、ベスト単品の着用も色々楽しめますね! (フ~、良かった、)
さてさて、仕上りを見たFさんの反応は?
っと、嬉しいお言葉をいただきました! ご希望に沿えないものもいくつかございましたが、最後は無事お納めすることができ、何よりホッとしております。。。 そして、後日こんなメールも。
ご丁寧にありがとうございます。 デザイン面は良くても、肝心な着心地が良くなければ台無しですからね。 着心地についても気に入っていただき、大変嬉しく思います。 ただ、普段キュプラ裏地を付けられている分、今回のウォッシャブル用裏地ですと、袖裏の滑りが少し悪く感じられているご様子。着ていくと慣れてはきますが、やはり最初のうちは少々気になるかと思います。 『洗える』という便利さの代償と考え、どうかお許しください。 (すみません、、、)
以上、今回はFさんよりご注文頂きました『渾身のスリーピース』の仕上がりについてご紹介しました。 また、納品の際に追加でスラックスを2本ご注文頂いたのですが、今回ご紹介したのとはまた違う形で面白いディテールになっていますので、どこかの機会でお披露目できればと思っています。 皆さん楽しみにお待ちください! Fさん、今回もご注文、そして本コーナーのご出演誠にありがとうございました。 今後共、よろしくお願いいたします!