|
|
〜大阪編〜 縦でも横でもOKです!
|
天高く馬肥ゆる秋、突き抜けるような青空は秋の訪れを実感させます。 秋はお洒落を楽しむには最適な季節、味わいのある素材が今期もそろいましたので是非ご注文をお待ちしています。 そんな中、8月の末に頂いたFさんの秋冬物のご注文が仕上がってきましたので、ここに秋冬物の第1陣として皆様にご紹介したいと思います。 それでは、早速仕上がり画像をご覧下さい。(おいおい、前フリもなくイキナリかよ !!)。 |
|
皆さんご覧いただいて、いかがですか? 『う〜ん、パッと見たところ特にこれといった特徴がある訳でもないし、どこにでもあるストライプじゃないの??』と言うのが大半の方の感想ですよね? 実はそうなんです。今回皆さんにお伝えしたいのはデザインではなく、素材つまり生地なのです。 今回の素材は色がブラックで、今のトレンドをそのまま表現したような織り柄のストライプなのですが、これがなかなか面白みのある素材でして、、、 実は、ここに至るまでにはもう少しでトホホ...になりかねない裏話がありましたので、ご紹介してみたいと思います。 |
■ ご注文時の経緯はと言うと・・・■ |
まず最初にご注文の経緯をご説明すると... 思い起こせば、ちょうど残暑もまだ厳しい8月末のFさんのご来店に話は遡ります。 ホームページで秋冬物が売り場に揃ったという記事をご覧になられ、Fさんが初めてお見えになりました。 『 早めに注文しとこうと思って...』と、最初からブラックがお目当てだったFさん、早々にある生地をチョイスされました。 ブラックベースに織り柄ストライプと、ブラック好きな方にはヨダレ物かと思います。 そして、デザインもソフトタイプスーツですんなりと決定。 その後の採寸も楽しい雰囲気の内に終了となりました。 「 ありがとうございました!」とお見送りもつつがなく終わり、ホッと一息ついた後は早速オーダーシートの整理に取りかかります。 出来上がりの雰囲気をイメージしつつ、Fさんのサイズに当てはめてっと... んん??何気なく生地を見直すと思わず目が点に... 『げっ、えらいこっちゃ!これ横ジマやんか!!』 横ジマのスーツって、おいおい!? ポロシャツじゃあるまいし、そんなスーツ見たことも聞いた事もありません。 仮にもしこのまま作ったとすれば... こんな感じですかね ?? |
■ そもそも事の発端は・・・?■ |
なぜそんなことになったのか? 答えは簡単です。 当店の店頭では、メンズのすぐ側に一部レディースの展示棚を設置し、メンズ、レディースの両方で使えそうな汎用性のある素材を展示しています。 そして、その中に問題の1着、ブラックのシャドーストライプならぬシャドーボーダーがありました。 画像の下の方の生地が問題の横ジマですが、皆さんからしてみれば「普通、縦ジマと横ジマを間違えるか?」と思われたかも知れないですね。 でも、この生地には耳がなく(レディースでは別に珍しいことではないのですが)、おまけに正方形にたたんであったら、果たしてそうと言い切れるでしょうか? そうなんです、Fさんの目にはこれは縦ジマと映り、一目見てお気に入りとなってしまったという訳なんです。 ただ、、、当然の事として、何で側にいた私が『これは横ジマ模様ですので』とご説明しなかったのか、皆さんが突っ込みたくなる気持ちもごもっともです。 でも、それをしていれば、今頃こんな原稿に取り上げる事にはなっていませんですから〜(残念!) 恥ずかしながら、シーズン当初は生地を飾るのに精一杯で、どこにどれが...とはまではなかなか覚えきられません。 メンズだけでもそんな状態ですので、ましてやレディース共用までとなりますと初めてお目に掛かる素材ばかりです。 シマ模様と言えば全て縦と決まっているメンズと違って、レディースでは横ジマ(ボーダー柄と呼びます)あり、斜めジマ(綾と言います)ありと、バラエティに富んでいるだけに油断なりません。 しかし所詮それは言い訳、レディス担当の藤本からも「ちょっと〜しっかり確認して下さいよ!!」と言われる始末です。(とほほ...) |
■ え〜っ、いったいどうするの・・・?■ |
「格好良いブラックスーツがオーダーできた!」と楽しみに帰られたFさんに、はたしてどうご説明したものかと腕組み思案に暮れました。 ともあれ、早速この横ジマの素材を通常の縦ジマで仕立てられないかと、以前ご紹介した業界大手のグッドヒルさんへ相談を持ち込みました。
今回の一番の問題はと言うと、通常は縦を向いているはずのストライプが横向きになっていることです。 そのため、型紙を縦に使用し(これとて幅という限界があります)各パーツのはめ込みをバラして、いちから考える必要がある訳です。 これは決して単純ではなく、作業現場としては結構頭を悩ます応用問題です。 ただ、幸いな事にFさんのサイズ次第(身長によります)ではひょっとして可能かもとの事で、ひとまず仕様書を書き上げ工場へ職出ししました。 もちろんのことながら、「念のため生地の長さは倍以上は欲しい」ということで、通常は3メートルで十分取れるところを、その倍の6メートルにしてお願いしました。 |
|
|
☆★☆ ここでちょっと一口メモ・・・生地の裁断ってどうやるの? ☆★☆ |
生地の裁断は、縦横に生地を広げ、そこへジグソーパズルの如く各パーツの型紙をはめ込んでゆきます。 はめ込む場所は、オーダー、既製服では多少違いますが基本型は確立されています。 そして、お客様のサイズにもよりますが、ご覧のように全て無駄の無いようにぎりぎりにまで配置、裁断されています。 ちなみに1着分のスーツを作るためには、幅が約150cm前後で長さが3.0m前後の生地が必要になります。 つまりストライプの長さがタテに3メートルと言うことです。 画像では、実際の生地の上に型紙を置いているところです。(ただし、1着分を縮尺したミニチュア版ですが...) |
|
|
|
これでちょうどスーツの半分の状態で、実際はこれと同じ物がもう片面にあり、これを型入れ図と呼びます。 ちょうど真ん中あたりの細長い所がパンツで、裏面と合わせ一本のパンツが4分割のパーツから出来ているのがお分かりになれます。 ちなみにその左右が上着のパーツです。 その他細かいパーツはポケットのフタや上襟等々に分かれています。 |
|
|
★☆★大阪SHOPMASTERより一言・・・★☆★ | |
縦ジマを横ジマ?頭では理解できても実際のところどうなるのかな?と↑のようなミニチュア版の型紙を作ってみました。 それともう1つ、皆さんもご存じの通り当社では念願のフルオーダー対応の態勢がこの秋より整いました。 それを機にという訳ではありませんが、我々営業も初心に返り、その原点とも呼べる型紙を認識する為もあり作ってみた次第です。 |
■ 最終的にはいったいどうなったの・・・?■ |
そして待つこと約数日、縫製工場からは「大丈夫、出来ますよ」と力強い連絡が入りました。 そして、このドタバタ劇はひとまずFさんには内緒で、仕上がりをお納めした時に『実はあのストライプ柄は本当は横ジマでして...』とご案内した次第です。 当選の事ながら、Fさんも多少は動揺されておられましたが、仕上がりには大変ご満足頂き、私もやらせていただいた甲斐がありました。 |
★☆★大阪SHOPMASTERより一言・・・★☆★ | |
今回はなかなか珍しいケースでしたが、これがウソなようでホンマのハナシです。 Fさん、結果として実験台にしてしまったようになってしまってスミマセン。 m(_ _)m 仕上がるまでは、「ほんま、大丈夫かな...」と心配でしたが、仕上がりは普通のストライプと何ら変わらず、これなら他のお客様にも安心してオススメできそうです。 ただ、生地は通常より倍はかかるとの事で、商売としてはやや辛いものがあります。 でも、よくよく考えてみれば、あの柄でしたらひょっとして横ジマでも面白いかなと思います。 どなたか、勇気のある方、トライしてみてはいかがでしょうか? 私ですか?? 横ジマのスーツなど腹黒い私が着れば囚人服に見られそうで、ここはご遠慮します。 |