|
|
フルオーダーの着心地やいかに?
|
9月の声を聞けばさすがの酷暑もひと段落、2006年の夏もゆっくりと過ぎ去ってゆきます。 (夏の終わりはなぜかもの寂しくて...となぜかセンチメンタルになってしまったりして...) とはいえ、厳しい残暑にまだまだ夏の余韻を感じずにはいられないこの頃ですが、目の前に秋冬物もど〜んと勢揃ったところで、フレッシュな素材たちを見てはどんな仕上がりになるかな?と思いを巡らす今日この頃です。 そこで、秋冬物第1回目の今月は前回のいらっしゃ〜いでご紹介した、KさんとSさんこと私めのいずれも初めてのフルオーダーの仕上がりをご紹介したいと思います。 それでは、まずは当社ではまったく初めてのオーダーとなるKさんのオーダーからご覧下さい。 ちなみに、Kさんのデザインをおさらいしますとざっとこんな感じでした。 |
||
|
...このように、当店では初のオーダーということであくまで当社のお手並み拝見とばかり、奇をてらわないシンプルなデザインです。 つまりは、デザインではなく技術力で勝負ということですね。これは何としても頑張らねば! そこでKさんのご体型をじっくりと観察し、仮縫いに当たって私と吉井工場長とでじっくりと打ち合わせした結果、お仕立てのポイントは特にこの2つに絞られました。 ● 反身体の補正 >>> 身体が反り身になっている体型を言いますが、姿勢の良すぎる方に多い体型です。 特徴として、こういった体型の方は標準体のスーツを着ると、前身頃が重なりやすく(拝んだ状態といいます)また背中にはツキジワが出やすくなります。 そして、一番分かりやすいのが身体が後ろに反り返った状態で標準体の洋服を着ると、後ろ丈が長くなってしまうというところ。 Kさんの場合は、背中のツキやフロントの拝みはそう大したこともなかったのですが、ここが一番大きく表れていました。 ですので、それを解消する為、画像のように仮縫いの際に背中部分をつまんで縮め、そのつまんだ分だけ前部分の丈を長くするような補正を取り入れました。 |
|
● 首が抜けるのをどう克服するか? >>> 上着の衿周りが首筋に沿っておらず宙に浮いている状態を言います。 (俗に芸者襟とも良い、芸者さんの襟は後ろ側が浮いているためこのように言われます。) 画像はKさんの当店での仕上がり写真のため、衿は浮いていませんが、衿の浮く人はちょうど青丸印の所に隙間が出来ます。 こういった場合は衿部分の円周を少なくし、首筋に添わせるように仕立てます。 |
この他にもKさんの体型の特徴はありましたが、誌面の都合で割愛させていただきました。 そして、本縫いを経て、いざフィッティングの瞬間です。 とても楽しみにされたご様子でのご試着でしたので私も少々緊張しましたが、肝心のフィッティング姿はこのような感じでした。 いかがでしょうか? 本バス芯使用による、バストラインのドレープ感など全体に滑らかな仕上がりが特徴のスーツに仕上がりました。 果たしてKさんの当初のご希望のような 『 ここ一番の勝負服。高級感に溢れ、奇を衒わないデザインの中に遊び心を入れる 』のコンセプト通りになったでしょうか? そして、ご試着の後Kさんからはこのようなメールを頂戴しました。 |
|
Kさんご感想ありがとうございました。 今回は当初から仮縫い日に合わせられるかどうかなど幾多の難関があり私も気を揉みましたが、なんとか当社でフルオーダーをとのKさんの熱意(?)のお陰で無事仕上がりに至りました。 おまけにこのような感想までいただき感激いたしております。(グシュん。。。) 仕上がりのスーツはゼニアで、おまけにスペアパンツ付きでしかもウエストのアジャスター付きですから、サイズ対応もばっちりで本当に末永くご愛用いただけそうですね。 |
さ〜て、続いてのご紹介は、、、 お待たせしました!私のスーツです! (...えっ?別に興味ない!?そんなつれない事は言わないで、特に中高年の方々是非見てやって下さい。) 私の基本コンセプトはずばりオーソドックスなスーツです。 全てを極めた者が最後に辿り着く...とは恐れ多いですが、釣りも「鮒に始まり鮒に終わる」と言われているが如く、最高の技術にはあえてKさん同様シンプルさを以て臨みました。 出来上がりをご覧になる前に、まずは仮縫い時の1シーンからご覧下さい。 吉井さんの問いに、「いやぁ〜そんなはずは。。。」と私が首を捻っているのは、ウエストサイズについてです。 「紺屋の白袴」と言うことわざがありますが、自分のウエストサイズぐらいは分かっているつもりだったのですが、残念!想像以上に増えてました。(サイズは内緒です) 俗に言う、メタボリックシンドロームに近づきつつある腹周りには情けなや、トホホ... そこで、そんなおっさん体型に悩む私よりフルオーダーのちょっとした豆知識をご紹介... 誰しも中年になりますと、男女とも多かれ少なかれお腹のみポッコリの体型が多くなります。 さて、そんな体型の方のスーツをフルオーダーで仕立てる場合はどう工夫するか? 少々専門的になりますが、「 前幅 」のサイズを多く取ります。 つまり全周は同じでも、前身頃と後ろ身頃の比率を変えるのです。 作業としては、袖から前半分のお腹周りに多く生地を集め、袖から後ろの背中部分の生地を少なくします。 これによりウエストを絞ってもフロントに余計なシワが出ず、かつ背中が余らずとフィット感がより高まります。 具体的には、こちらの画像をご覧下さい。 左のスーツが今回仕立てたフルオーダーのスーツ、そして右のスーツが普段愛用しているイージーオーダーで仕立てたスーツです。 2つの画像は上着のウエスト周りのサイズはまったく同じですが、よ〜く見比べてみて下さい。 明らかに今回のフルオーダー仕様と右の従来のイージーオーダー仕様では、お腹周りのスッキリ感に加え背中もスッキリしていて、より身体にフィットしている様子が良くわかります。 これがフルオーダーのテクのひとつで、前幅出しの補正の効果です。 |
|
...そんな風な仮縫いを経て、仕上がってきたスーツがコチラです。 「 着た感じはいかがですか?」とよくぞ聞いてくださったものです。 肩が軽いです。ハイ、身内を誉めますが肩の軽さは特筆モノ!肩にふんわりと乗っている感じです。 (すいません専門家らしくないコメントで。。。しかし素直な感想を言えばそうなります。) これでリピーターになられるお客様の気持ちがよ〜く分かりました。 こうして、第2回目のフルオーダー受注会も無事幕を閉じたのですが、今回は2日間にわたっての受注会。 先日の晩から前乗り&この私めの仮縫いと、吉井工場長もさぞかしお疲れになったと思いきや、昼休憩の間は、馴染みのお客様から差し入れ頂いた「大阪グルメ本」読みながら随分とリラックスされたご様子でした。 さすがはバイタリティ溢れる吉井工場長、その体力は是非私も見習いたいものです。 |
私もこの年になるまで他人からサイズを計って貰った事は1度あるかどうか。 今までは殆ど自分で前寸を元に推定サイズで作っていました。 それが初めて上から下までじっくりと専門家の手でサイズを計ってもらい改めて納得しました。 計るのは慣れていますが、計られるのは緊張するものですね、お客さまの気持ちがちょっぴりわかりました。 これで私もより自信を持ってフルオーダーの着心地をお勧め出来ます。 また今回は期せずして秋冬物の第一弾のご紹介となりました。 これから来年の春まで秋冬物はロングランスタート、豊富な品揃えでお待ちしていますのでどちらさまもどうぞよろしくお願いいたします。 |