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-大阪編- ボタンにもこだわります
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今年の秋はいつまでも涼しくならないな〜と感じますが、振り返って見れば去年の今頃もちょうどこんな時候でした。 一年も経つとすっかりと忘れてしまいますが、その挙げ句が真冬のあの寒さ.... 油断は大敵です。 さて、そんな秋から冬へと気候の変わり目を迎えるこの時期にご紹介するのは、トレンドの紺ブレブームに一石を投じた(?)薩摩ボタンをあしらった紺ブレの仕上がりです。 もちろん、最も注目すべき点は薩摩ボタンですが、併せてその他のデザインもおさらいでご紹介いたしますので、是非ご覧下さい。 |
■ ベースのデザインは3ツ釦の段返りで ■ >>>Tさんのようなミドル世代には、紺ブレと言えばコレ!とお約束のデザインです。 最近巷では段返りも数パターン氾濫していますが、本来の段返りは画像のような第一ボタンが完全に衿裏に隠れる、こういうものを言うのです。 ・センターベント >>>センターは苦節十ン年、今や見事に復活でトレンドとして注目を集める存在です。 |
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・衿には7ミリのミシンステッチ >>>こちらも定番ですが、AMFピックよりはしっかりと押さえ込みますので、耐久性にも優れています。 ・裏地は柄物で >>>本来紺ブレの裏地はありきたりの紺無地が王道です。 が、表地がゼニアときていますので、ここは裏地も負けずと華やかなストライプ柄を付けてみました。 ・ネームは漢字で名字 >>>今までは「Y.T○○○」とローマ字でご本人専用(当たり前)だったのですが、「 数年先は息子が着るかも 」との事で、ご名字だけお入れしました。 親子2代で着て頂ければ紺ブレ冥利に尽きるというもの、ぜひ末永くご愛用ください。 そして、メインとなる薩摩ボタンは袖先で使用。 色目も表地と合わせた控えめ目のインディゴブルー、それとは言われなければ目立たぬ程です。 その為、アクセントとしてボタンホールの糸色もブルーにしてみました。 |
さて....こうして出来上がったTさんの薩摩ボタンをあしらった紺ブレです。 早速Yさんご本人に仕上がりを確認いただくと、「このちょい見せがいいんですよ〜」と、もの凄く喜んでいただきました。 これでもか!とばかりの装いはいささか野暮というもの。 袖口のボタンひとつと秘かなお洒落、さほど目立たぬのはTさんにも予め計算済みです。 西欧のテイストに東洋の味付けを加えた、和洋折衷、遊び心満点の大人のジャケットとTさんにもご満足いただけたようです。 ■ ボタンにちなんだオマケ話・・・ ■ せっかくの機会ですので、もう少しボタン関連の話題をご紹介しますと... 実は今回のTさんのオーダーに関しては、縫製工場内でもこのような苦労話がありました。 破損など取り扱いにはかなり気を配ったのはもちろんのことですが、裏面の糸穴が小さくて通常の針巾が通らない×××という予想外のハプニングもあったようです。 何とか細い針を探し出してきて針を通したそうですが、他にも裏への力ボタンの取り付けは袖先で引っかかる危険もあるのであえて付けないでいたりと、イレギュラーの連続でした。 ちなみにこの薩摩ボタン、販売元にお問い合せしたところ、色目も朱色や金地等華やかなタイプの方が多く、もっぱらアロハシャツなどに多用されているようです。 従ってこのような紺ブレへの使用は初めてとのことで、販売元もどうなんでしょうか?と半信半疑の面持ちでした。 でも、その心配もよそにこうして立派に馴染んでいますのでどうぞご安心ください。 そしてもう1つ ボタンにちなんだ裏話ですが、実は当初Tさんはご自身でボタンを作成しようと目論んでいたのです。 Tさんは機械技術系の会社にお勤めで、そこに持って生まれた血が騒いだというべきか、環境がそうさせたと言うべきか、メールの中でこんなやりとりがありました。 |
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そうか!そういう手があったか! それにしても、ボタンへのこわだりもここまでくると凄いですね。 結局さすがにいくらなんでもと、ご自身でボタン製作のお話しは立ち消えとなりました。 しかしながら、この業界広しと言えど、自分でイメージに合ったボタンを自分で作ろうなどと考える人間は聞いた事がありません。 技術者魂の根性を見た!とはいささか大袈裟すぎるかも知れませんが、なんでもやったろうやないかの精神には頭が下がるばかりでした。 今でこそ、たかがボタンひとつと安価な代名詞の如く扱われているボタンですが、エッヘン、そもそもボタンの歴史をひも解けば、紀元前4,000年に遡るといいますから、こりゃビックリ。 元々は実用品というよりは装飾品として珍重され、素材も稀少な純金、純銀、貝や宝石類などが用いられました。 加工にも手間が掛かるだけに、富の象徴として高貴な地位の人だけの物という時代が長く続きました。 それでは当時の庶民はと言うと、ダッフルコートなどでお馴染みのトッグルと呼ばれる動物の角や木などに加工を加えて使用する方法なども工夫していたようです。 やがて一般の人々が加工技術の発展と共に同じように身につけられる時代になったのはそう遠い話ではありません。 我が国にはポルトガルを通じて江戸時代に輸入され、一般に用いられるのは明治の洋服の時代になってからです。 戦後のプラスチックの発明、普及と共に安定的かつ安価なボタンが大量供給され、現在に至っているのはご存知の通りです。 また、日本では明治から戦前まで貝ボタン用の高級貝を求めて、遠くオーストラリア近海の南洋の島にまで移住し、現地で採取加工しました。 その苦闘の歴史は司馬遼太郎の小説「木曜島の夜会」にも詳しいので、興味のある方はぜひどうぞご覧ください。 |
...と言うことで今回はスタイルを彩ってくれる小道具のひとつ、ボタンにスポットを当ててみました。 たかがボタン、されどボタンですが、ボタンって案外こだわりだすとなかなか面白いものですから、皆さんもお気に入りのボタンや思い入れのボタンなどお持ちでしたら是非ご相談下さいね〜。 ただし、万が一の破損や紛失に備えて、できればスペア分もご用意できるボタンでお願いします。 |