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-大阪編- ショートな上着丈はどれくらい?
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今年も残すところひと月足らずとなりました。 いつもながらの年賀ハガキの用意やら、クリスマス用の飾り付けなど相変わらずの気ぜわしい年の瀬となりそうです。 ここでメンズスーツの今年を振り返ってみますと、、、ひと言で済ませば全体として「スリム&ショート」の流れが加速されつつある1年といったところでしょうか。 そこで今月は、この流れを代表するようなサイズでお仕立てされたHさんのスーツを元に、今や旬のショートな上着丈はどれくらい?という検証も交えてご案内していこうと思います。 それでは、まずはHさんがご希望された中で特徴的なスタイルを抜粋してご紹介します。 |
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...と、このような内容ですが、その中から今回はショート丈という点について注目してご案内いたします。 さて、 ここでご質問ですが、皆さんは上着のショート丈って一体どれくらいを連想しますか? 人それぞれ体型や感覚が違うため、多少のばらつきがあるとは思いますが、いったいどこまでがショートで、どこからがショートでないか検証する方法として、ひとまず業界での採寸の目安をご案内します。 まず最初に、ここから先何度となく使われている「総丈」についてご説明しておきますと... オーダー業界では上着丈に対しては総丈というものをひとつの目安にしています。 ちなみに、総丈とは業界用語ですが、分かりやすく説明するとこのような測り方です。 首の後ろのグリグリ(大体がワイシャツやスーツの後ろ衿元になります)から地面に向かってメジャーを垂らし、足の踵までの長さがいわゆる総丈です。 |
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◆ これに対し上着丈は総丈の半分が目安です。 ・・・ 総丈とは全ての寸法の目安となる基準値と言っても差し支えないでしょう。 当社でもまず採寸の際に、メジャーを当てて最初に大きな声で「総丈○○○センチ」とやりますので、お馴染みですね。 つまりどこのお店へ行かれても採寸の際、まず最初に計られるのが総丈と言っても過言ではないでしょう。
ということで、単純に言えばこの数式(総丈/2)から算出された数値より短い着丈がショート丈と言うことになります。 また、総丈から算出される標準の上着丈ですが、下記のような理由が絡んで短く、あるいは長く変える場合もあります。 |
○ トレンド >>> 今の流れはショート丈がトレンドですので、ご希望の場合は標準値より2〜3センチ程短く仕上げます。 もちろんそれに合わせパンツの丈も短くはお約束です。 この流れはひもとけば、ちょうど25年前あたりが今のサイズと似通っていますね。 10年前のソフトスーツ全盛の頃は上着丈も袖丈も標準より4.5センチも長いロング丈が当たり前でした。(でも作る方は楽でしたね、大きければ喜ばれましたので) ○ お好み >>> 年配の方に多いのですが、短いとお尻が見えるようで落ち着かないとの理由から、あえて標準より長くお仕立てする場合も珍しくありません。 あるいはダブル好きの方はお好みとして長目の着丈を好まれます。 ○ 体型 >>> 当然ながら足の長い短いなどの体型的な個人差がありますので、足の長い方は着丈を短めにした方がスッキリ見えます。 また、身体が前屈みな屈伸体の方などはどうしても後ろの丈が跳ね上がり短くなりますので、標準よりあえて長くする場合もあります。 ○ 既製品サイズに慣れた方 >>> 特に肥満体型の方に多いのですが、既製品のサイズを合わせる際にゆったりとしたサイズでお求めになりますと、結果的に自然と上着丈が長くなります。 こういう場合は「こちらは既製品で上着丈が少々長めの丈ですね」とお客様に確認します。 そしてその上で、あくまで標準値はこれくらいですと説明の上、それでもやや標準値よりは長めにします。 この場合一気に短くしますと、比較上やはりお客様に違和感は残りますので... ちなみに既製品の場合は以下のようになっています。(某ブランドのサイズです) |
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さて、 ここでHさんに戻りますが、Hさんのショート丈ジャケットの仕上がりはこのようになりました。 着用画像があれば一目瞭然でショートとわかるのですがあいにくお送りでしたのでご着用の画像は撮れませんでした、、、 比較的身長が近い私が袖を通させて頂いても良かったのですが、如何せん中年太りが進む私の身体ではタイトなHさんのジャケットを合わせることは無理でした。。。 という事で、やや分かりづらくて恐縮ですがコチラの画像をご覧下さい。 |
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まず、どれほどショートなのか? 同じ総丈を持つお客様の上着と比較してみました。 ちなみに左側の画像がHさんの仕上がりで右側がHさんと同じ総丈の方のスーツです。 両者を比較しますと、同じ148センチの総丈の上着でもこれほど違いがあります。 具体的にはHさんのショート丈は67センチ、対して右側は標準サイズの74センチです。 これを上記の既製品のサイズに当てはめますと、身長が160センチ以下の方のサイズとなります。(Hさんは身長は170センチを超えています) おまけにHさんは釦位置も低めがご希望で、片や右側は釦位置も今の標準の高め設定です。 とても同じ総丈を持つ上着とは言えないような違いですが、Hさんは袖丈が上着の端まで届いていますね。それだけ上着丈が短いという証拠です。 いかがでしょうか?これで今回のHさんのショート丈はかなり短いのがお分かり頂けたかと思います。 |
昔、サイズの合わない着物を着ているを揶揄した言葉に「借り物を着てるみたい」との言葉がありました。 既製品の比率が高くなった事と、サイズの集約化が進んだ結果、現在では死語と化しているようです。 そう目くじらを立てる話ではありませんが、それでも余りにもお粗末なサイズを着ている(着させられている?)人も見かけます。 要は、タテヨコのバランスで、今回のHさんのようなショート丈ですと既製品だとかなり無理をしないと入らないので、そのためHさんはオーダーされたと言う訳です。 完成したスーツをお届けの後、Hさんからこのようなメールを頂きました。 |
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Hさんご感想ありがとうございました。 肝心のショートジャケットはほぼご満足頂いたのですが、ベストの方はHさんのイメージをくみ取れず、誠に申し訳ありませんでした。 ベストは今度は大丈夫ですので、ご安心下さい。 100点満点の仕上がりを目指してがんばりますので、今後とも宜しくお願いします。 |
こちらのボタンの画像をご覧下さい。 左側のボタンは通常メンズで使用の20ミリ、それに対して右は18ミリです。 わずか2ミリの差ですが、比較すればなるほど大きさはわかります。 今回Hさんは上着丈が短い上に釦位置も低いので、小さ目の釦はないですか?と問い合わせいただきました。 ボタン屋さんに問い合わせたところ、メンズでもモード系のブランドではわざとこのような小さめの釦を使用する事もあるとのこと。 そこで早速仕入れてお付けいたしました。 ただ、こちらは当社の標準仕様の水牛素材ではそのサイズはないとのことらしく、Hさんに了解を頂きプラスティック素材の釦となりました。 |