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オーダースーツのヨシムラ
お客様!ありがとう!
 大阪編 古風なスーツ 
晩夏と言う言葉にはロマンチックな響きがありますが、さすがに9月ともなりますと、あれほど猛威を振るった熱波も治まり(慣れたのかな?)、朝晩はやや凌ぎやすくなってきましたね。

また、陽が落ちるのが早くなり、歩道にはセミの死骸がと、そこかしこに小さな秋の訪れも感じさせる頃となりました。

そんな季節に呼応するかのように、秋冬物のサンプル帳も出来上がり、今や遅しと東西とも万全の体制でご注文お待ちしております!
<<<ご希望の方には無料で生地サンプルをお貸し出ししていますのでお気軽にお申し込み下さい。

そこで今月は夏物仕上がり紹介のラストと言うことで、夏を締めくくる最後のお客様Sさんの仕上がりをご紹介いたします。
Sさんとのご注文までのやりとりは
 >>>こちら:エドワード7世って誰?
で紹介していますので、まだご覧になられていない方はこちらを先にご覧下さい。

■ どんなお客様? ■
webでもご案内していますが、現在のトレンドは何と言っても英国調スタイルですね。
ただ、同じ英国調でもスーツの源流とも言うべきスタイルを求めて当店を訪れていただいたSさんが、そのお客様でした。

細かなディティールはこちらをご覧いただくとして、ふと目に留まった100年前のエドワード7世(英国)のスーツスタイルに惹かれ、なんとか復刻して欲しいとのSさんの情熱に打たれお引き受けしました。

クラシカルなスーツの仕上がりは
>>> 麻の少しシワの出る素材感と相まって、沈んだ色目の黒地のスーツとなりました。
ウエストラインの絞りはダーツが無いだけにダボッとした寸胴で、シャープさには縁遠くても当時の雰囲気を表しているのではと、自信の仕上がりです。
もちろんSさんにもご満足頂き、お気に入りの1着となりそうです。

ポイントは3点
☆☆ 素材・・・黒の麻
>>>20世紀の初めを描いた映画のワンシーンには黒のスーツ姿がよく登場します。
当時は道路も舗装もされていませんので、黒服に汚れが付いて白っぽくなり、そのホコリをパンパンと叩いてホコリが舞うシーンなどお馴染みですね。

染色技術が発達していなかった?あるいは当時のトレンドが黒だった?か、いずれかはわかりません。
ただ、同じ黒でも当時の黒地は光沢感のまったく無い、今でいうところのタキシードクロスのような礼服地素材が中心だったようです。

というところで、今回は季節感もありクラシカルさも感じさせる麻素材でのお仕立てとなりました。

☆☆ 前ボタン・・・4つ
>>>ボタンの数は文明と共に進化する!かどうかはアテにならないのですが、今や1ツボタンも珍しくはありませんので、このズラッと並んだ4ツボタンはいかにもクラシックですね。
首もとが詰まったような、、、とのSさんのイメージを具現化出来ました。

☆☆ 衿のゴージライン・・・(最近としては低めの)ハイゴージA
>>>持ち込んで頂いた画像は余り鮮明ではなく、その為ゴージラインの角度の判定に苦労しました。

  ゴージの起点:かなり高めが起点のようです。
  ゴージの角度:右下へ約140度の角度で落ち込んでいます。

ただ、Sさんはその形状をなんとか復元して欲しいとの事でしたので、画像と首っ引きでご相談させて頂きました。

その結果、当社でいうところのハイゴージのAが酷似していましたので、そちらでお仕立てする事になりました。
ただ、この画像をよ〜くご覧下さい。
フラワーホールのカタチが変だと思いませんか?
そうです、このあたりもSさんのこだわりなのですが、このフラワーホール、ホールの端が丸くなっていてボタンホールと同じ形状になっています。

恐らくSさんはこのあたりをどこかの古い資料で発見されたんでしょうね。
元はと言えば、フラワーホールはボタンホールの名残ですから、言わばこのスタイルは先祖返りと言うべきオプションになりました。

パンツにもこだわりました
昔風と言えば何と言っても、サスペンダーボタン仕様ですね。
今やお洒落アイテムですが、当時は無くてはならない必需品。

また、忘れずに右横には時計ポケットも付いています。
もちろんSさんは当時を偲んで実際に懐中時計を入れて使用されています。

■ Sさんからのご感想を頂きました ■
「今回仕立てて頂いた黒麻背広について」と題したリポートを頂戴しました。
A4版4枚にビッシリと書き込まれた内容は、デザインのみならずサイズについても、今回のオーダーの感想と次回に向けての改善点などで満載でした。

予め、感想を頂くとなっていましたが、このような内容と量にはビックリ、頂いた我々は感激でした。
A4×4ページですので全部掲載しますと凄いことになりますから、出だしの所をちょっとだけご紹介します。(固有名詞等を除いてそのまま掲載します。)
平成19年8月 S
今回仕立てていただいた黒麻背広について

一.注文との関係での満足度
 上着・ズボンとも、当方が注文の際にお願いしたことには完全に応えていただけたと思っており、非常に満足しています。

二.今後に向けての再検討点
 1.前回背広をオーダーした(他店で、ですが)のは約10年前であり、それ以来長らく服装のことを考えずに手持ちの物や既製品を適当に来ていたので、今回の注文に際しても今ひとつ考えがまとまり切らず、今回仕立てていただいたものをここ二週間ばかり毎日着て歩き、他人の背広と見比べたり、物の本を色々読み返したりしているうちに、改めて「こういう風にお願いしておけば良かったかな」と思い始めた点がいくつかあります。

 ただし、これは今回の背広へのクレームということではありません。
今回の背広については。注文通りの素晴らしい出来映えであったと
満足し、感謝しています。
ただ、当方としては、この機会にできれば自分なりの「
仕事用標準服」のイメージについてある程度はっきりと考えをまとめてしまって貴店にお伝えし、「仕事用標準服」の安定供給ルートを確保して、服装のことを一々心配せずに毎日出勤できるようにしたいので、この機会に考えるべきことはまとめて考えてしまおうと思っている次第です。
↑筆者注:その通りです。初めはお互いに気持ちを伝えるのに苦労しますが一度良い物が出来ればあとはお任せいただければ後々悩む心配もありません。)
 ただ、現時点ではまだ充分に頭の整理がついていないところも多く、以下はとりあえず中間報告的な感想のご報告といった線にとどまっています。

2.まずズボンですが、ズボン本体の着心地については全く満足なのですが、見た目の全体の寸法バランスと、あと細かい装備の点で、次のような点に気付きました。

1)サスペンダー釦の位置
サスペンダー釦の位置についてはお任せした訳ですが、結果論としていえば、前の4つはもう少し中央ヨリに付けていただいた方が穿きやすかったように思います。
現状の位置ですと体の前面のサスペンダーがハの字型に末広がりになってしまい、腰帯の前の部分が開き過ぎて、穿いているうちに段々下がってきてしまいます。下がるとサスペンダーの帯の先端がループの外側へ滑って行ってハの字がますますきつくなるようです。

理屈上は帯の先端=ループの中心がセンタークリースの真上にくるようにサスペンダー釦を付けていただくと最も穿きやすいはずですが、それでは見た目が内側に寄り過ぎてネクタイの両脇がゴチャゴチャする気がするので、2センチ半か3センチほど外より位が無難な位置かと思います。

2)懐中時計用のポケットの寸法とループの位置
    (以下:省略)
Sさん、わざわざこんなに長いご感想メールをお書き下さり本当にありがとうございました。
読者の皆さんには最後までご紹介しきれませんが、A4×4枚のご感想の最後にパンツとシャツの追加オーダーまでいただきました。
オーダーは1回でパーフェクトということはありえませんので、今回の反省も生かしつつ次回のご注文に役立てたいと思います。
☆★☆ オーダー担当清水より一言・ ・ ・ ☆★☆

スーツを表現する言葉に古風 という言葉は用いられる事は少ないのですが、さながらセピア色にくすんだような古風 なスーツの出来映えとなりました。

これでSさんにボーラーハットにステッキなどの小道具が備われば、100年前にタイムスリップした装いになること、請け合いです。

地下でお休みになられているエドワード7世さま、コピーさせて頂きましたが、いかがですかな出来映えは?