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オーダースーツのヨシムラ
お客様!ありがとう!
 学習院風タキシードの仕上がりは?

春一番も吹きようやく少し暖かくなりましたが皆さんお元気でお過ごしですか?
花粉症の方には、これからの2〜3ヶ月は地獄の日々が続きますね。
私も花粉症のためお花見から縁が遠くなってからかれこれ10年以上になってしまいました。

さて、
季節はすっかり変わってしまいましたが、今月は12月にご紹介した学習院OBのYさんから頂いたご注文『学習院風タキシード』の仕上がりをご紹介いたします。

詳細は前編のお客様いらっしゃ〜いをご覧いただくとして、時間も少し経ちましたから簡単にご注文内容を再掲しますとこんな感じのご注文でした。
 >>><ご参考>お客様いらっしゃ〜い 学習院卒業生必見?

■ ご注文内容 ■

 □ どんなスーツ?(目的) □

Yさんからのご注文は学習院の制服をベースデザインとしたパーティー用タキシードのご依頼。
学習院卒業生以外はご存じないと思いますが同校の制服は元々帝國海軍 士官 第一種軍装に由来するデザインだそうで、さすが皇室御用達!といった感じです。
そして卒業生のYさんはその雰囲気そのままに、それをグッとタイトにグラマラスにして、かつパーティー用タキシードとして拝絹などを付けて仕立てたいとのことでした。

ちなみに『どちらで着用するの?』との伺ったところウィーンでオペラを見に行く時に...とのことで、凡人の私には『ふ〜っ...』といった所でした。

 □ デザインは・・・ □

画像はお借りした学習院時代の制服を私が着用した画像左画像
これをタキシードにチェンジ?。
想像しづらいですが、仮縫いはこんな感じ右画像に。
詰め襟のところからまぁ、何となく雰囲気が伝わります。

 □ ポイントは・・・ □

ポイントは、、、沢山ありますがこんなところがメインです。

とにかくグラマラス
>>> Yさん、オペラ鑑賞時は当然着座するはずなのに、座って苦しくても良いからタイトにして欲しいとのことでとにかく絞りました。
実のところ、パンツなどは仮縫い時には限界を超えて絞っています×××

もちろん上着もでして...内ポケットに物を入れないことを条件にギリギリまで絞り。
加えて、最近試行錯誤の末にやり始めるようになった背中に吸い付く仕様で背中がピタッと吸い付くように入念にクセ取りを行いました。

詰め襟も高く
>>> このタキシードのポイントはやはり学習院の制服を基にしていること、ということから詰め襟部分の高さや合わせ具合にはこだわりました。

パンツの裾は逆モーニングカット
>>> Yさんのユニークなこだわりの一つが、パンツの裾の逆モーニングカット
普通モーニングカットは、ズボンの裾、足の甲側に生地が溜まることを回避するため、前側を短く後ろ側を長く仕上げることをモーニングカットと言いますが、Yさんはこれを逆にして、足の甲側により生地が溜まることをお求めでした。
私達仕立てる側も初めは「えっ、なにそれ?」と思いましたがYさんの熱意に負けてこれにもチャレンジ
画像はフィッティング時の物ですが、逆モーニングカットはフィッティング後に最終調整を加えるということでこれから逆ハッキングを付けるところです。

この裾の溜まり具合、ちょっと普通では考えられませんが、Yさんはこれがお好みなのです!

・・・とこんな所が、お仕立のポイントだったのですが、さて、フィッティングの方はどうだったでしょうか?

実はYさんのフィッティングは逆モーニングカットの所でご案内いたしましたが初めから一発で行かないことが分かっていたため、2度に分けて行いました。
そこで、1度目のフィッティングをご紹介しますとこんな感じでした。

< 全体の雰囲気は・・・ >
タイトにグラマラスに...というご要望はこんな風になりました。
いかがでしょうか、横から見ると袖の細さが際だっているのがお分かりかと思います。

でもこれでは、Yさんご満足しません×××
(ホントに良いのかな...動きにくくなるんじゃないかな?と思いつつ...)

画像は詰めた場所が分かりやすいようフラッシュをたきました。
< 襟は・・・ >
ポイントの一つ襟はどうなったでしょうか?
最初のフィッティングでは実は襟は未完成のままでフィッティングに臨みました
...というのも襟の高さ、開き具合もまたYさんの超こだわりアイテムだったからです。
このため襟は芯だけを入れた状態で、高さ、合わせる場所などをこうやって確認しました。
フィッターが赤ペンを持って、どことどこを結ぶように襟を作るか書いています。
凄いね、、、ここまで普通やりますか?って感じです。

< パンツのフィッティングは ...? >
先述の『限界を超えたサイジング』のパンツは、こちらは裾を除いて仕上がっていますのでフィッティングです。
 どうでしょうか?
我々プロから見ると実はこれは落第点。
明らかにきつすぎます。(吉井工場長も横顔で少々困り顔。)
でも、Yさんこのフィット感にはご満悦で、このままOKとのことでした。
 (最終的にはお願いして少しサイズアップすることにしましたが、、、)

こんな感じでその後、微調整を加えたYさんのタキシード。
最終的にはこんな仕上がりになりました。
(Yさんがお忙しくご本人着用の画像撮影が間に合わずスミマセン...)

 □ 最終的な全体像は・・・ □

ボディーに着せてみました。いかがでしょうか?
グラマラスに、、、ということで絞りましたが、脇の隙間が広くその辺からも細さがお分かりになるかと思います。
またウエストのくびれからヒップのふくらみまでのラインが凄いですね...
 □ 背中に吸い付く具合は・・・ □

横から見るとこんな感じです。
袖の細さも特筆物ですが、何より凄いのが背中の吸い付き具合です。
皆さんお手持ちのスーツでここまで背中に吸い付くようなシルエットってあります?
これはクセ取りと言ってアイロンワークで生地を立体的にするからこそ出来る所作なのです。
単に型紙の問題ではなく技術力がないと出来ない仕事です。
 □ 逆モーニングカットは? □

読者の皆さんも???な逆モーニングカット
これはどうなったでしょうか?
見慣れる方にはちょっと分かりづらいですが、画像の右側がズボンの前側(足の甲側)
ご覧になって、甲側の方が股下が長いでしょう。
我々からみると不思議な逆モーニングカットです。

それはさておき、このシルエットも凄くないですか?
ヒザの強烈な絞り具合、そしてそこから裾までのフレアさ加減
これをグラマラスと言わずしてなんという?といった感じですね。
 □ 忘れちゃいけない詰め襟は □

このタキシードの一番の顔はやはり詰め襟詰め襟はこんな感じになりました。
ちょっと高め5.5cmの襟(オリジナルは4.0cm)と、その襟をくるむモール拝絹
う〜ん、これだけを見ると学習院だか何だか分かりませんが、それにしても何とも言えない圧倒感がありますね

さてさて、
こんな感じに仕上がった学習院風タキシード。
あとはYさんのご試着をお待ちするだけになりました。
Yさん、早くお越し下さいね〜。
(後日、Yさんのご試着姿の撮影が出来ましたら本稿末尾に掲載します。)

それでは来月をお楽しみに〜