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オーダースーツのヨシムラ
お客様!いらっしゃ〜い!

 7月の「お客さまいらっしゃ〜い」コーナー:またまた登場!!コンボイさん 
 今回で3回目になりますがエンターテイメント集団コンボイさんからステージ衣装のご注文を頂きました。
今回はズバリ!「オズワルドボーティング風!」

7月の新着情報「オズワルドボーテングのスーツ!」でご紹介しましたが、実はあの時のスーツはコンボイさんのステージ衣装の為にお預かりしたものでした。
(あの時は検索エンジンに引っかかるのを怖れ、敢えて『コンボイ』さんのお名前は出しませんでした。名前を明らかにすることができずファンの皆さんごめんなさい。m(_ _)m )

 さて、毎回ステージ衣装は何かしら問題が出るのですが、今回はというとこんな所に問題がありました。

プロダクションからのご依頼は『オズワルドのボディーコンシャスでビビッドなスーツをステージ衣装にしたい!!』といわれるのですが、プロダクションのコンボイハウスさんがこのスーツをオズワルドでなく当社へ依頼するには実は訳があるのです。
というのは『ステージ衣装』は普通のスーツとは全く違う部分を意識しなければならずオズワルドに発注したくても出来ない点が多々あるからです。
それは例えばこんな点が挙げられます。
(1)生地選びとデザイン・・・ステージは何といっても見た目が第一!ビビットな色合いの生地はステージでは重要です。
(2)耐久性 ・・・動きの激しいステージでは耐久性も大切!後で説明しますが意外と@の生地選びと耐久性は両立しない物です。
(3)機能性 ・・・ただでさえも激しいステージなだけに機能性も重視します。
(4)微妙な変化・・・各メンバー毎に個性を生かした微妙な変化を持たせたいというのもプロダクションの願いです。
詳細を説明しますと・・・
(1)生地選びとデザイン
 これはプロダクションサイドや衣装部のスタッフが一番気にする所です。
デザインが格好良くなければ問題外ですし、生地もデザインが映えるような物でなければNGです。 この点、今回デザインはオズワルド風に真似させていただきましたので問題なかったのですが、問題は生地でした。
オリジナルの物はモヘヤが入っているため汗に弱いですし、裏地もかなり肉厚な物を使用していたためステージの熱に耐えられないと思われ、素材から変更しなければなりませんでした。
本当はステージ衣装という高級感のあるものにはシルクのような風合いが良いのですが、最終的にはシルク調のポリエステル素材のシャンタンという素材を使用することにしました。
ちょっと一言・・・(シルク)シャンタン
 シルクシャンタンとは中国山東半島付近で昔から良く取れたシルク織物の一種。
横糸の太さが均一でなく所々太い所(スラブ)があり、これが逆にシルクの光沢と相まって独特の風合いを持たせ、昔から婦人服のパーティードレスなどで人気のある素材です。
ただしシルクは汗に弱く、変色し易いため身体を動かすようなステージ衣装には不向き。
最近はポリエステルの品質が格段と向上したためこのシルクシャンタンに似せたポリエステルシャンタンがあり、今回はシルクの弱点(汗に弱点)を克服したポリエステル素材を使用しました。
(2)耐久性
 ステージ衣装の場合耐久性と言っても2種類あります。
1つは縫製面での耐久性、2つめは生地の耐久性。

1つ目の縫製面の耐久性は前2回がそうだったのですが2重縫いで補強しようとしていたのですが、後述しますが今回の生地はポリエステル製で2重縫いするとかえって縫い目から避けやすくなってしまう特性があったため、二重縫いは止めて、接着テープという特殊なテープで補強して太めの糸で縫うことにしました。 (う〜ん、文章だけでは想像しにくいですね。ではちょっと画像を挿入しますね。)
画像は縫い合わせ部分ですが、黒っぽいのが接着テープです。皆さんのズボンのお尻の部分を見てみてください!普通はここまでの処理は絶対しないですから。

2つ目の生地の耐久性は、特にステージでは汗による変色が起こると大変なことですので、上記の通りシルクは初めから対象外にしましたが、それ以外の候補についても検査協会にて生地を全てチェックしました。
 裏話ですが、今回ご注文のスーツ2種類のうち1つは当初プロダクションさんが他の生地屋さんで仕入れて持ち込みをされたのですが、検査をした結果その生地が汗による変色が大きいと言うことでボツになりました。(生地屋の当社としては他店の生地を入れるのは恥ずかしい限りなので((つまり自社で適当な物を見つけられなかったと言うことで))正直ほっとしました。)

ちょっと一言・・・汗による変色が起こりやすい生地
変色しやすい素材・・・
素材としてはシルクがダントツです。よく女性のブラウスで「シルクブラウスが変色した!」「クリーニングが悪い!」とか「高い物だったのに何故?」とデパート等にクレームを言われる方がいますが、シルクは失礼な言い方かもしれませんがそういう物なのです。何とぞご理解下さい。
変色が目立つ色合い・・・
薄い色合いやパステル系の色合いの生地は汗による変色があると疑ってかかる方が良いですね。 今回のプロダクションからご提供頂いた生地も淡いパープルでしたので、実は初めから「ちょっとヤバいかも?」と考え早めに検査に出していたため助かりました。
 
(3)機能性
これも結構苦しみました。
特に「裏地の厚さ」で悩みましたね。
というのもオリジナルのオズワルドはレーヨン素材でかなり肉厚だったのでこれをそのまま使えばステージではムレてしまい、暑くてたまらないのは必至ですが、逆に薄手の物を使用すると確実に耐久性が劣ってしまいます。
そこで本来は2着とも高級素材であるキュプラなどを使いたかったのですが、最終的には2着の内1着はキュプラ、もう一つはレーヨン素材の薄手の物を使用することにしました。

機能面ではもう一つ、是非ファンの方にアピールしたい事があります。
実は袖の本切羽・・・普通は写真のようにボタンを外せるようになっているのですが、実はコンボイ仕様の場合はここをスナップにしました。
通常の本切羽ですとボタンを全て外すのに少なくとも20〜30秒位かかりますが、これだったらバッと引っ張ればすぐ袖が開きます。
ステージで踊りながらバッと袖を広げて鮮やかな裏地が顔を見せたら、ここが特注仕様なのだと思い出してみてくださいね。

コンボイさん仕様
通常の本切羽

(4) 微妙な変化
「各メンバー毎に個性を打ち出し微妙に変化を持たせる」という点では、これはコンボイさんならずとも複数メンバーを持つグループ全ての悩みですね。(モ−娘でもそうだと思いますよ)
オズワルドのような超こだわりテーラーに仕立てを依頼すると、多分(あくまで多分ですよ!)「この生地にはこの裏地の色!」といったデザイナーのこだわりが強いため、なかなかプロダクションの要望通りのコントラストを出すことは出来ないかと思いますが、当店の場合はこういう点でのこだわりは余りありませんので基本的にはお客様のご要望通りにいたします。
 今回はブルーパープルの生地にはオレンジの裏地とレッドパープルの裏地この2種を用意しました。
これはステージでは7人のメンバーそれぞれ当然立つ位置が違いますから、例えば裏地の色を交互に変えてひらりと踊ったときに裏地が一斉に映えるようにするためのものです。


 皆さんどうです。
ファンならずともコンボイさんのステージ衣装に興味を持っていただけましたか?

 ところで今回のコンボイさんのステージ衣装は8月25日以降の「コンボイ祭り」で使用する予定です。
機会がありましたら是非皆さん一度行ってみてください。
もちろん私も行ってきます!