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(大阪編):思い入れのジャケット
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皆さん、エクセーヌという名前をご存じですか? きっと若い世代の方はあまりご存じないですよね〜。 このエクセーヌというのは、ナイロンやポリエステル、アクリル等の化学繊維では言わずと知れた大手メーカー東レが1970年に開発したスウェード調の人工皮革素材で、今もなお重宝されている素材の一つです。 エクセーヌは束上の極細繊維が緻密に絡み合ったまるで天然のスエードを思わすかのような構造で、品質や素材感、更には機能性までもが高く評価され、衣料はもとより靴に鞄、内装資材、車のシート、等幅広いジャンルで活躍しています。 開発当時は各繊維業界から脚光を浴び、その後他のメーカーも競ってよく似た素材を開発しあったものですが、文字通り一世を風靡しました。 さて、今回の『お客様いらっしゃい』は、そんなエクセーヌに魅せられたNさんのお話です。 師走のある日、Nさんより1本のお問い合せのお電話をいただきました。
という訳で、その数日後にはNさんがご来店されたのですが、Nさんが片手にぶら下げてこられたスーツバックの中から取り出されたのは、紛れもなく年代物のエクセーヌのジャケットです。
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確かにNさんの愛着を物語るように、肩はボロボロで裏地が透けて見えてしまっています。
正直なところ、これには私もビックリしました。 ...と、同時にNさんのこのジャケットにかける愛着が並々ならぬモノと感激しました。 (ホンマこれだけ使い込んでもろうたらジャケット冥利につきますわ) |
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...と、言いながらお見せしたのが、レディースの方で使用しているミクロフィブリックス(7390-1)という合皮のスウェード素材でした。 実はこの商品は、まさしく東レから仕入れたエクセーヌの一種だったのですが、東レの謳い文句通り、高熱発生と独特のハリ・コシ感や、皺や型崩れにならなくそれでいて軽くて軽快な着心地なのが特徴で、メンズのジャケット生地としても充分対応できる素材です。 こういう生地をすぐにご用意できるのも、当社が元々は生地屋さんだからなんです。 さてさて、生地を実際に手にしてみたNさんの反応はと言うと....
そんなこんなで、早速生地の方は決定です。 次にデザインはと言うと....
↓↓↓ 【ご注文内容】(特徴的なところだけ掲載します。)
飽きの来ないシンプルなデザインで、これなら10年先も全く心配なしですね〜。 当のNさんには、エクセーヌの生地があっただけでもたいそう喜んでいただけ、私からのデザインの提案にも 『はい、お任せします』の一点張りでした。 また、サイズ面での注意点と言うか、正直なところやはり20年ともなると体型的にも無理があるようで、肩幅や着丈のみ見本服通りにして、それ以外のサイズは新たに測り直しさせていただきました。 「さあ〜早速工場へ職出しだ〜」と、工場への仕様書をギッシリ書き込んで、エクセーヌの生地と共に工場への直行便へ乗せました。 さて、念願叶ってエクセーヌの生地を探し出すことが出来たNさんですが、いったい出来上がりはどんな感じに・・・!? 私もNさんの見本服に対する思い入れがひしひしと伝わってきただけに、少しプレッシャーを感じないでもありませんが、とりあえず3週間後が楽しみですわ〜。 【オマケの話】 Nさんがご来店された時、最初は小さな生地サンプルをご覧頂いていたのですが、生地を選んでいただき実際に生地の現物をご覧頂こうと思いきや、どうしても生地が見つからないのです。 慌てて女子社員に在庫を調べてもらうと、「在庫1.0M...ギョエ〜....」 当のNさんは3Fでまだかまだかと待ち構えてらっしゃるし、ありゃ〜こら弱ったな・・・。 仕入れ担当の亀本さんにも大至急現物を当たってもらい、待つこと10数分ようやく1着分のハギレを見つけることが出来ました。 実際に現物を測ってみると、何とそれはNさんのサイズにピッタリの1.8Mと匠もビックリ!ほんまかいなの展開です。 今となっては笑い話ですが、私もあの場の10分間がもの凄く長い時間に感じてなりませんでした。 |