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オーダースーツのヨシムラ
お客様!いらっしゃ〜い!
 モッズなスーツです。 
梅雨の鬱陶しい天気が続きますが、いかがお過ごしでしょうか?
今回は、某私立大学4年生のTさんよりご注文いただきましたスーツのご紹介です。
Tさんが最初に当店にお越しになられたのは、リクルートスーツのご注文で去年の年末でした。
アパレル業界を志望しているTさんは、『 モッズ 』ファッション好きというのが印象的でした。
オーダースーツは初めてだから荒井さんにお任せいたします』とのことで、
まずは3ボタンのオーソドックスなスーツを、私なりにお見立てしました。

★☆★接客担当荒井より一言・・・★☆★
皆さんは、タイトルにもある「モッズ」ってどんなイメージですか?
・・・ちょっとマイナーなファッションですが、スーツでいえばデビュー当時のビートルズのイメージが一番分かりやすいカナ?
ビートルズ世代と言えばVゾーンが狭く、細身な感じと言った印象をお持ちの方は多いのではないでしょうか?

参考までに、「モッズ」とは何?という人のために、もう少しご説明いたしますと、
1960年代のロンドンで、服装に極度に神経を遣う少年達Modsと呼んだことからこの名が付きましたが、当時のヒッピーや、フラワームーブメントなどの若者を中心としたサブカルチャーの一つになっています。

モッズのバイブル本「Mods!」によると、彼らは、モダンジャズやR&Bなどの音楽を聴き、「クール」なスタイルを追求しているとのこと。
自分の服装や、立ち振る舞いに細心の注意を払い、女の子に見せることよりも男同士で着こなしを張り合うような美学があるとのこと。

モッズブームのピークの頃は、一日に何回も着替えたり一週間で流行が変わったりとかなりの盛り上がりだったようです。


そしてTさんからは、ファーストスーツのご注文は「お任せ」でしたが、お話を伺うと服装には人一倍気を遣うタイプでしたし、何よりモッズ好きでしたので、寸法上はTさんの体に合わせた細いシルエットでお仕立しました。

スーツをお渡ししてしばらく経った今年の3月
2着目のスーツをこんな感じで作りたい...』と
の資料を手にTさんがご来店されました。

お話を伺うと、『モッズ』仲間が集まるパーティーに出掛ける為のスーツを、周りとちょっと違った感じで仕立てたいとのこと。
...と同時に、継続している「就職活動」にも使いたいようでした。
★☆★接客担当荒井より一言・・・★☆★
「遊び着」と「就職活動」の両方に使いたいという、ちょっとわがままなご注文ですが、もともとモッズスタイルはスマートな感じのファッションですので極端にならなければいいかな?と思い直し、ご要望をお伺いすることにしました。
いくらお客様の好みとは言え、あまりに場違いな物は勧められませんし、やっぱり作り手である私たちがある程度納得できないとオーダーってうまくいかないこともあります。

で頂いた画像もどうやら、デザイナーブランドのコレクション画像のようです。
Tさんも、アパレル業界希望だけに好きな洋服の情報収集は労を厭わないといった感じです。

そして、画像を見てのポイントとしてTさんとご相談したことはこんな感じでした。
〜〜補足〜〜
Tさんのような資料を片手に「こんなイメージで...」というお客様にはお店としては
100%同じ物は出来ませんが・・・
ポイントを決めて、そのイメージを再現する ということでご注文頂いております。


そこでTさんの場合のポイントがどこかというと...
右のモデルさんの例では>>>

・・・コンケープドショルダーで、角張った肩廻りでシャープな印象に
ラペル巾
・・・細めのラペルは、低いボタン位置と相まってより強調され、細いネクタイとのVゾーンのバランスが新鮮です。
フロントカット
・・・レギュラーより少し角張ったカット。
個人的にはこのカッティングの落ち着いた感じが好きで、何着かこの形で仕立てております。(下図では「COS」に近い感じです。)
一方、左のモデルさんの場合は>>>
フロントカット
・・・大きく広がっているようなカット。カッタウェイフロントとも言われ、最近人気のカットです。上図の「LG」に近いですね。
パンツ
・・・丈の短いかなりタイトなシルエットと、光沢ハリ・腰のある生地の相性がとても新鮮。
また、スリッポンタイプの靴から覗くソックスも新鮮。

このような資料を基に分析したり、Tさんの細かな好みの指定を加えた2着目のスーツは、こんなデザイン・こんな仕上がりになりました。

生地は、G3057(三星毛糸濃紺ストライプ) シングル上下 39,800円
>>>光沢と張りが特徴で、夏の高級素材モヘアをブレンドした生地です。
ちょうど左側のモデルさんが着用している素材が光沢感生地のハリがあったためコレに決定!
そのバリッとした仕上がり映えは、モッズライクなスーツにも相応しいです。

基本デザイン
・・・ボタン間の広い2つボタン。第一ボタンと第2ボタンの距離は通常10.5センチのところを、12.5センチに広げたところが特徴的。左の画像に近いかな?
>>>2ツ釦ですから下のボタンは留めませんが、このボタンのバランス感覚は、意外に重要な要素を占めてます。
ラペル巾
・・・6.5cmの細め>>>資料の2着に共通のポイントです。

・・・コンケープド風ショルダー
>>>ビジネスですから、Tさんの資料(一番最初の画像)右の写真のようなあそこまでせり上がったような肩ではなく、少し肩先が盛り上がる程度のお仕立にしました。
上着腰ポケット
・・・ハッキングにして、フラップの巾を5cmにする。(通常は5.5cm位)
わずか5mmの違いかもしれませんが、この微妙な高さを指定するとは細かいです!
画像ではここまで分かりませんね。
袖の太さ
・・・全体にスリムにして、袖口の口巾を細くする。
>>>モデルさんは概して細いので袖の細さが際だってました。
Tさんも全体に細い方でしたからここは袖まで絞ってイメージに近づけよう!ということになりました。
袖の太さをコメントされる方は、概してお洒落上級者が多いです。

袖ボタン
・・・5つボタンで本切羽
>>>今年の「グッチ」のデザインでも取り上げられていて斬新かつ新鮮です。
パンツ
・・・膝巾、裾巾が同じ寸法22cmと、 >>>膝を絞った感じのややブーツカット風シルエット。完璧な膝下ストレートです!
細いモッズ体型のTさんだけに決まってますね。
★☆★接客担当荒井より一言・・・★☆★
縫製においては、数字の調節だけが多かったため意外に苦労は少なかったのですが、この微妙なこだわりはさすが『モッズ』ですね!
意外と疲れました・・・

二着目の渾身のスーツをお渡ししてから、またしばらく経ったある日、3着目のスーツを仕立てたいとTさんより、メールが届きました。
03.05.30 荒井さん こんにちは
荒井さん。去年のリクルートスーツのお仕立てからお世話になっておりますTという者です。(覚えていらっしゃいますでしょうか?アパレル業界志望中のリクルーターで、モッズうんぬんと言っていた者です。)

現在、私の就職活動状況は非常に厳しくまだまだ続く様子です。
そのため今回は
真夏も戦えるスーツ!をお願いしたくてメールいたしました。

前回まで二着のスーツのアドバイザーとしてお世話になり、お気に入りのスーツができましたので、今回もぜひ荒井さんにお願いしたいのですがよろしいでしょうか?
前回の紺ストライプスーツのモッズシーンでの評価の報告や、よろしければ就職のアドバイスなども合わせてお話しさせていただきたいと思います。
それではよろしくお願いします。(埼玉県 T)
★☆★接客担当荒井より一言・・・★☆★
Tさんご指名頂きありがとうございます!!
前回のスーツの評判が良かったようでひとまずホッとしましたが、就活のことを聞いてしまうとどこか喜びきれない複雑な心境にもなりました。 新聞等で、新卒の就業率は随分低下してきていると報じられていましたが、正に厳しい就職活動をお察しいたします。時代が悪すぎる!と思うところはあるのですが・・・
そこでこんなお返事をしました。
03.5.30
件名:ご来店お待ちしております
Tさん
オーダースーツのヨシムラ(荒井)です。
いよいよ、蒸し暑い陽気になってきましたが、いかがお過ごしでしょうか?
さて、新たに「真夏も戦えるスーツ!」をご検討いただけるとのことで、ご指名まで頂きまして嬉しい限りです。
それでは、ご来店の際には私からのお薦め商品を幾つかご紹介いたしましょう。
ご来店予定が決まりましたら、予めご一報下さいましたら幸いです。
また、就職活動は、益々厳しい時代になっているようですが、大切なことですから、焦らずにじっくりと攻めていきましょう!私でよろしければ、どうぞお気軽にご相談下さい。
お問い合わせ有り難うございました。取り急ぎご連絡まで

オーダースーツのヨシムラ
MAIL担当   荒井
★☆★接客担当荒井より一言・・・★☆★
スーツの評判をお聞きするのも楽しみですが、そろそろ就職活動も本番です。
3着目は気合いも入れながらお仕立てしたいところですね。
ただ、そこはあくまで、クールなスタイルのTさんなのでしょうね。

そして6月上旬、更なるマイナーチェンジを加えた3着目のスーツのご注文と相成りました。
今度は、社会人になっても着られるようにとのご要望でした。
さて、次なる真夏のクールなスーツはどんな仕上がりになったでしょうか?お楽しみに!