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仕立屋泣かせのコーデュロイ!
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師走も押し迫まって参りましたが皆さんいかがお過ごしですか? こんな時期はパーティーシーンやクリスマスのデートなど意外とスーツと言うよりお洒落着の需要が高まる季節ですね。 今月はそんな消費者の需要を先取りしていつもとはちょっと違った素材のスーツ(ジャケット)のご注文をご紹介したいと思います。 どんなものかというと >>> タイトルの通りコーデュロイ 独特な畝(ウネ)と起毛感が秋冬のカジュアルシーンに好まれる素材ですが、カジュアルに見えるのは実は(言い方は悪いのですが...)廉価なコーデュロイで、シルク素材や超長綿の高級コーデュロイなどはもの凄くフォーマル感も出てちょっとしたパーティーなどには最適です。 |
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★☆★ちょっと一言・・・コーデュロイとは?・・・★☆★ | |
コールテンともいう縦方向に畝(うね)があるベルベット状の織物。 丈夫で保温力があり、冬物カジュアルには欠かせないアイテム。 素材としては綿が一般的ですがレーヨンやシルクなどのコーデュロイもある。 |
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< ちょっと通ごのみの雑学・・・ > | |
コーデュロイはわずかながら起毛していますが、仕立てる際には逆毛で仕立てるケースもあります。(どちらにするかは仕立屋の考え方次第)。 逆毛で仕立たものは、製品を上からなぞるとザラザラしますが、これは逆毛の方が光沢感が出るからで、こういった素材はそのほかベルベットなどもそうです。 |
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..で、ご登場いただくのはリピーターのAさん。 今回はこんなメールから始まります。 |
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貴社でコーデュロイのスーツを仕立てることは可能でしょうか? | |
ヨシムラさん 10月に貴社にてスーツをオーダーしましたAです。 オーダーしたスーツの仕上がりには満足しております。 そこで、表題の件、貴社でお仕立て可能のようでしたら是非オーダーしたいと思いメールさせていただきました。 カジュアルに着られる、コーデュロイのスーツを欲しております。 コーデュロイ生地は、色は濃い茶色で、縦の縞模様が細いものが希望です。 お仕立て可能の場合は、目安となる金額(オプション等の金額は不要です)と合わせて、ご回答いただけると幸いです。宜しくお願い申し上げます。 |
★☆★東京SHOPMASTERより一言・・・★☆★ | |
Aさんリピートのご注文(検討)有り難うございます。 コーデュロイですか・・・サンプル帳には掲載していないんですが、当社はもともとが生地屋ですから商品はありますよ〜。 でも、、、ご注文までには幾多の障壁(←これが今回のポイント!)が・・・ 早速担当の北君より(私の入れ知恵のもと)こんなお返事を差し上げました。 |
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件名:ご相談有難うございました。 | |
Aさん こんにちは。オーダースーツのヨシムラ(北)です。 今日から12月に入り、今年も残すところあと1ヶ月になりましたがAさんもお忙しい年の瀬をお迎えではないでしょうか。 さて、先日はスーツの引き取りにご来店頂きありがとうございました。 その際には、お見かけしたにも関わらずご挨拶出来ず失礼いたしました。 今回はコーデュロイスーツをオーダーご検討いただけるとの事、ありがとうございます。お仕立ての方承っております。 お値段は49,800円(税抜き)でお仕立て可能です。 なお、お仕立てに当たりましては、コーデュロイは素材の特性柄お仕立てした後のお直しが利かないといった難点(※)がありますのでこの点はどうかお含み置き下さい。 ※:コーデュロイはウールと違い、縫った後を解くと針跡が残りますのでお直しが利かないのです。 また、サイズを絞る場合にも縫い代がポロポロと解れる関係で安易にお直しができない難しい素材です。 |
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何かありましたらどうぞ遠慮なくご質問下さい。 よろしくお願いします。取り急ぎご連絡まで オーダースーツのヨシムラ MAIL担当 北 朋 広 |
★☆★東京SHOPMASTERより一言・・・★☆★ | |
皆さん、スーツのお直しってどう お考えになりますか? 『何かあったらウエストでも裾でも出したり詰めたり出来る。。。』 男性は日頃あまりお直しについて意識されていないから、皆さん↑のように思われていないでしょうか? ...でも↑は概ねアタリですが、実はそれはウール素材に限ってのことなのです。 つまりウールというのは素材の特徴として高い復元性があるために、一度穴を開けて糸を通した後でも適切な湿度を与えればそれが消えてしまうといった「とても便利な特徴」があるのです。 でも、これはコットンやシルクなど他の素材では全く当てはまらず、コットン素材などは縫い直しをすると必ず跡が残ってしまい、日頃ウール素材に慣れている男性の皆さんには実は意外な盲点なのです。 既製服なら服に自分の身体を合わせるため問題ないことでも、オーダースーツの場合は自分の身体に合ってナンボですから、合わない時のお直しが利かないコットンコーデュロイなどは結構命取りになる危険性があるのです。 ・・・と、本当ならこれ位の説明(お客様への牽制?)をしなければならなかったのですが、そこまで十分説明できなかったためその後Fさんからこんなご注文(案)を頂き、担当の北君、愕然となってしまいました。 |
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件名:Aより | |
北さん お世話になっております。Aです。 ご送付いただいた生地見本の ・「T−7000広幅中コール天」No.11 ・「T−1000コール天」No.5 あたりが良いかな、と考えております(変わる可能性もありますが)。 そこで、お願いがあります。 それぞれ下記のような仕様及びオプションにした場合金額はどのくらいになるか、お知らせいただけますでしょうか。 かなり細かく仕様及びオプションの指示させていただいてしまいました。 |
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★☆★東京SHOPMASTERより一言・・・★☆★ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ちょっと話は変わりますが、皆さんからのご注文はおおよそ次の流れで作業しています。
当社の仕事: 1〜3、および8 工場の仕事: 4〜7 つまりこういう事です。 ここまで細かい仕様となると当社で行う最終的な確認作業3まできちんと出来ていても工場の4から5に移る過程で連絡ミスや誤解などが生じてミスが起きることがあるのです。 (もちろんこういった物も対外的・最終的には私達の責任になることですが。。。) 私が北君に指摘したのは、Aさんの仕様は1つ1つは大したことなくてもそれが五月雨的にたくさんあればどこかでミスをしてしまう。 もちろん、ミスがあるからこそ人の手で仕立てた味が出る面もあるのですがそれを許容して下さる方というのはそう多くはありませんから、きちんと説明しなくてはいけないよ。ということです。 ご参考:過去に工場視察に入った際のレポート(2002年夏) そこで北君は悩んだ挙げ句こんなお返事を出しました。 (本当は↓のメールまでにもう1通メールのやりとりがあるのですが割愛しました。文脈が少々ズレますが、ご了承下さい。) |
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件名:RE: ご連絡ありがとうございました。 | |
Aさん おはようございます。オーダースーツのヨシムラ(北)です。 今日も昨日同様、爽やかな冬晴れとなりそうですがいかがお過ごしでしょうか。 さて、昨晩はコーデュロイスーツにつきましてご連絡をありがとうございました。 ご注文の内容について縫製の難易度をお伝えすればそれに添って許容範囲をご指示いただけるとのこと。 色々と私どものためにお考え下さり、ありがとうございました。 その上でご回答差し上げたいのですが、今回のFさんのご注文では次の2点がポイントで実のところ個々別の縫製難易度の問題はさほど影響ありません。 1.指定項目が多いこと >>> これは縫製の難易度の問題ではありません。数が多いことが問題なのです。 たとえて言えば、木から果物が落ちてくるとすると3、4個だったら確実にキャッチできます。 でもそれが30個ですと必ず落とす物が出てきてしまいます。 その場合、一個は一個でおいしそうか、まずそうかは関係ないのです。 (ですからここまでの指定項目となると袖ボタンの数を間違えることも十分あり得ることです。) こういったご注文は私の方では通常より厳しいチェックを経てから工場へ職出ししますが、工場の現場(女工さんレベル)ですとあまりにも難解で仕様書を理解できなくなってしまうのです。 だから、難易度でいえばほぼ全て仕立ては可能なのですが、まとまって集まるとお約束は出来ないと言うことになるのです。 どうかご理解下さい。 2.物理的な面(直しが利かない素材) >>> これは難易度にも関係してきますが、のちのち「縫い直し」が必要になるところは全て素材の関係で直しが利きません。 (プレス程度の問題なら大丈夫なのですが...) ですからコーデュロイの場合は全てが物理的に難しいのです。 ウールでしたら、特性として復元力がありますので何ともないことでもコーデュロイとなるとそれがないため出来ないのです。 以上の通りですので 率直に申し上げ、指定項目の数を減らし、かつ、お直しが利かないということ事前にご理解いただかないと私どもとしても怖くてお仕立てが出来ないのです。 どうかご理解いただきたくお願いいたします。 オーダースーツのヨシムラ MAIL担当 北 朋広 |
★☆★東京SHOPMASTERより一言・・・★☆★ | |
北君ももともと文化服装学院の出身だけあって、当社内でのキャリアはまだまだですが、きちんと説明が出来ていますね。よしよし。。。 ↑彼の説明の通りです。 私達も人間ですから、いっぺんに何個も受けられないのです。 簡単に直せるなら良いのですけどね。。。 それで 最終的にどうなったかというと、↑のメールからですとオール(ご注文がくる)orナッシング(ご注文キャンセル)のどちらかですね。 結果は >>> 北君の涙ぐましいメールの努力の甲斐がありました。Aさんご来店されてのご注文です。 でも、その時は当社も厳戒態勢で。。。 それ故、接客はSHOPMASTERの私がご担当させていただきました。(実はこんな事情だったんです。Aさんゴメンナサイ!) さて、Aさんのコーデュロイスーツどんな仕上がりになったでしょうか? 次号をどうぞお楽しみに・・・ 落ちてくる30個の果物、果たして何個落としてしまうのでしょうか? |