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(大阪編)デザイナーのこだわり
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不況の影は長く伸び、景気の先行きの不透明さは増すばかりですが、ご多分に漏れずというより不況の主役を務めるに充分なのが、我が繊維業界です。 さてそんな中、逆風をものともせずファッションの世界で精一杯頑張っている業界人の一人が今回ご登場していただくOさんです。 0さんファイト!とばかりエールを込めてOさんのご注文を紹介させて頂きますので皆さん是非ご覧ください。 それでは、まず最初にOさんから頂いたメールからご紹介します。 |
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件名:スリーピースオーダーの件 | |
こんばんは。 '04年春夏物のサンプル素材をお願いしておりました芦屋の自由人ことOです。(掲示板に書き込みもしました。) 送っていただいた素材の中から、大変気に入った生地がありましたので、スリーピースのオーダーをお願いしようと思います。 ● 素材について >>> G6164 ロロピアーナ ZELANDER SUPER 110'sメリノウール100% *この素材をスリーピース1着分キープお願いします。 ● オーダーについて >>> 一度大阪店にお伺いしようと考えています。 3月2日の火午前10:00を予定していますが、ご都合はいかがでしょうか? その際に、スタイルのことやディテールの打ち合わせ等をお願いいたします。 ● 希望納期について >>> 当初4月24日の友人結婚式で着るつもりでしたが展示会にどうしても着ていきたいので4月5日まで仕上げていただきたいのですが可能でしょうか?(無理を言いますが・・・) ご連絡お願いいたします。 (芦屋 O) |
★☆★大阪SHOPMASTERより一言・・・★☆★ | |
このメールを頂き何気なく読んでいたのですが、気になる表現がありました。 それは、一着分キープという言葉と展示会と言う言葉です。 もちろんどちらも業界用語として糸ヘンではお馴染みの言葉です。 この時点では、ひょっとしてご同業かな?...との思いもありましたが、他業種でも同じように使われているかもと、さほど気にも留めることはありませんでした。 |
★☆★清水の一口メモ 繊維業界の俗語集★☆★ | ||||||||||||||||||||||||
上述のように各業界には業界用語というものが存在するのは皆さんもご存じかと思いますが、それでは私達糸へん業界にはどのような業界用語があるのでしょうか? 普段私達が使っている業界用語を少しご紹介したいと思います。 | ||||||||||||||||||||||||
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...などなどが業界独特の言い回しです。 (話をOさんに戻しまして)そしてOさんには「ご来店お待ちしています」とご返事したところ、次のようなメールを頂きました。 |
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件名:Reご連絡ありがとうございます | |
清水さん ご丁寧なメール、どうもありがとうございました。 来週の火曜日午前10時頃にお伺いしますのでその際には、よろしくお願いいたします。 私は芦屋市内でオリジナルウェアのお店をいたしております。 カジュアル中心なのですが、着物素材でオーダーシャツやオーダードレスなども作っております。 今回のスリーピースで、今までにないアイデアを考えておりますので、ご相談の程お願いいたします。 恥ずかしながら、ホームページもございますので一度ご覧になってくだされば、幸いです。 (芦屋 O) |
★☆★大阪SHOPMASTERより一言・・・★☆★ | ||||||||
やはり、ご同業と判明です。 これは油断ならずと、早速ホームページを拝見。なるほど、こだわり満点のカジュアルショップのようです。 OさんのWebサイトはこちら 当社もスーツのホームページでは負けじといささか自信もありますが、カジュアルではあまりこのようなホームページはお目に掛かりませんね。 特にスニーカーは興味のある人が見れば、結構食指をそそられるのではと思います。 とりあえず予備知識も仕込んで、Oさんのご来店をお待ちしました。 そして、ご来店された0さんは、なにやら片手に巻物が。 「実はこれをスーツに利用してもらおうと、持ってきました」と取り出されたのは鮮やかなグリーンの着物地一反です。 そういえば、先日のメールでも着物地で色々とデザインされているとおっしゃっておられましたが、どうやらそれをスーツにも、とのお話のようです。 早速、Oさんに着物地のご要望を伺ってみると以下ようなことを希望されていることが分かりました。
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なるほど!過去に着物地でスーツを作ったことや、裏地に着物地を張った事は有りますが、付属(ポケット地や腰裏の事)に着物地を使う事など、初めてです。 さすが、デザイナーのアイデアとこだわりに感心です。 ただし、作る方としてはこれからが問題です。 いったいどのような問題があるかと言うと。。。 ■ 問題その1 ■ カラークロスは通常ウールで作られ、その役目は衿腰をなじませる為と衿の補強の為使われます。 その為、ある程度のぶ厚さが要求されるものですが、はたして着物地のような繊細な素材が役目を果たすのか?と言う懸念。 腰裏も丈夫なコットンが標準仕様ゆえ、着物地で破れないか?と憂慮します。 ■ 問題その2 ■ 着物地で胸ポケットの袋地を付けると言うのは良しとして、袋の底を止めないというのは、引っ張り出せばポケットチーフにも見えるというマジックさながらのアイデアグッズ物ゆえ、果たして工場の現場サイドが受けてくれるのか? あるいは使用時に物性的に保つのか? ...と、このような懸念もあり「ハイわかりました」と二つ返事でお受けできない事なので、ひとまずはお預かりと言う形でご希望を承りました。 私もかってマジシャンの方の服のご注文を横で聞いていたことがありますが、袖や裏のあちらこちらに、ポケットや仕掛けなどを施したご注文で、担当者が閉口していたのを思い出しました。 もちろん、Oさんのご注文は、とてもそこまではなく、遊び心とお洒落心のミックスのなせるワザです。 多少の機能性を犠牲にしても、デザイナーとしてのアイデンティティーにこだわる、Oさんのお考えには業界人のはしくれとして、私も共感を覚えます。 さてさて、オプションばかりに目を奪われてしまいしたが、Oさんの3ピースのご注文の生地とデザインは次の通りです。 ■生地は・・・ ロロピアーナZELANDERグレー地カラードピンストライプ(G6164) >>> スーパー120Sの風合いにトラディショナルなピンストですが、カラーストライプにすることでヨーロピアンなテイストも表現できる素材です。 ■ デザインは・・・ 基本デザイン 3×1の段返り ● ハイゴージB ●サイドベンツ ● 腰ポケット チェンジ付き ●フラワーホール&袖切羽グリーン色 ● クラシコ仕立てにベスト付き ●裏地はワインで袖はエンジベースのストライプ(Z509ー1) ● シルエットはウエストシェイプで細身のパンツ ...とこのような内容でひとまずはお受けしてみましたが(頼まれたらイヤとはいえない私の性格が恨めしい・・・)簡単なようで凝ったオプションをどうやって工場へ頼もうかと思うと、正直 ちと頭が痛い。 『お願いします工場殿、何とかしてお願い聞いて〜』 はてさて、この願いは聞き入れられたでしょうか? それは次回のお楽しみです。 |