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オーダースーツのヨシムラ
お客様!いらっしゃ〜い!
 オリジナル仕様の考え方 
楽しかったGWも終わり、あとはお盆休みまで長い休みがなくなってしまいましたが皆さんはGWいかがお過ごしでしたか?
そろそろ日差しが強くなったり蒸し暑くなったりと夏服への衣替えも近づいてきましたね。

さて、そんなスーツの新調を意識する季節になりましたが今回は当社がこれまで色んな仕様を開発(?)してきたやり方と言いますか、考え方をご紹介したいと思います。
本稿後半では只今チャレンジ中の新仕様についても紹介していますのでぜひご覧下さい。
当店ではこれまで他のオーダー店には見られない
色んな仕様をご提供してきました。
例えば・・・
D管留め・ポイントステッチ・内ポケット玉縁別生地使用
>>> D管留めという技術そのものは高級仕様のスーツには昔からありましたがこの糸色をカラフルに展開することでスーツの内側に色気を出せるようにしました。

裏地をカラフルにして、ステッチの色を色合わせして内ポケット玉縁も別生地にすれば同じ表地のスーツでも全く別のスーツに変身します。
キュプラ裏地
>>> 昔のキュプラというと実はキュプラ100%というのは少なく、縦横糸どちらかが100%(残りがポリ)というのが多かったですが当社では積極的にキュプラ100%を使用しました。
その結果、他店にはあまり見られない柔らかい触感の裏地を提供しています。(その分多少耐久性は劣ります。)
バルカポケット
>>> 真偽は別として今では既製服でも多くなったバルカポケット。
胸ポケットを船底型にカーブさせたものですがマシーンメイドの縫製工場の中で敢えて一旦縫製ラインから外し手作業の工程を加えました。
その他にも
. ゴージラインの変更
セットバックショルダーライン
袖のカブラ
巻ぶせ襟
ボタンフライ前立て
懐中時計用フック穴 etc
...と、これまでも色んな事にチャレンジして時としてボツとなり失敗しお客さまと一緒に嘆き悲しみ 、時としては成功してお客さまに喜んで頂きました。

そんな他に類を見ないこと(悪い言い方をすると「面倒なこと」)を率先してやってきた当社ですが、それには次のような考えに基づいて行動しています。
前提
前提ですから当たり前のことですが『やってみる価値のあることに挑戦しています。
何をもって「やってみる価値がある」かどうかというのは難しいのですが
それは例えば 「実用性や利便性を向上させる物」であったり時としては「お客さまの熱意」であったりはたまた「自社の技術力向上への探求心」であったりします。
ですから、単なるご自身だけのわがままな事を言われる方のオーダーはお引き受けしていません。
(生意気な言い方ですがお客さまと熱意の共有ができないとダメなんです。)

当社の考えと実践
 そしてこうした熱意に突き動かされ色んな事にチャレンジしてきましたがそのやり方は大きく分けて次の3つがあります。

1. 自分が実験台
<<<これはお客様のご意見という訳ではなくファッショントレンド等を鑑みて当社スタッフが実験台になってそれをご紹介したもの。
例えば、部分部分で別生地を使用したりする試みやセットバックショルダーラインゴージライン変更などがこれに該当します。

2.お客様からの意見を反映
<<<当社の特徴的な部分ですがお客様からの声で会社(仕様)が大きく変化してきました。
私達はプロですが、とはいっても目は一人に2つしかありませんから、外部からの情報が重要なのです。
そこでお客様からのアイデアを借りたり、お客様と一緒になって「時には失敗し成功する」そんな姿勢で試行錯誤を繰り返して共同開発(?)するんです。
例えばそれが1930年代風のスーツであったり、極度に絞りを加えたグラマラススーツだったりします。

3.自社の技術向上の成果
<<<当店で提供するオーダーはフルオーダーと違い縫製工場である一定の制約の中で行っているいわゆるイージーオーダーです。
このためフルオーダーでは出来ることでもコストの制約や技術力の差で出来ないことは多々あります。
ですがこれを「マシーンメイドの限界」と諦めずに自社の技術力向上に力を注ぐのが当社の仕事だと思っています。
卑近な例ではクラシコ2でフルハンドを意識した仕様を紹介したのが良い例ですがマシーンメイドのスーツを販売しているにもかかわらずスタッフの中にフルオーダー経験者がいるためか、型紙起こしや手作業の味を出したくてしょうがないのです。

以上がこだわりスーツを支えた当社の基本的考え方です。


そして!!只今私が奮闘しているのが、ちょっと袖にこだわった仕様。
袖というと本切羽、額縁仕上げ、セミフレアのライン等今となっては当たり前となってしまいましたが実は結構目に付くところ。
それだけに私も力を入れたいのですが最近こんなご相談がありました。
ご相談1
あるファッションプロデューサーUさんから・・・(TVにも出ている方です!)

Uさん: 『吉村さ〜ん、こんなの出来ない?』
私: 「本切羽の内側がタブになっているんですか〜珍しいですね。」「ウチでのお仕立て?う〜ん、難しいですね〜・・・」
Uさん: 『そうか〜、残念。いいわ。』


皆さんご覧になられて如何ですか?
値段次第ですが是非試してみたい、話題性の高いアイテムですよね〜。
ウン、3,000円位までのオプション料なら僕もやってみたい

Uさんの場合は、特段このパーツにこだわっている訳ではなかったので他の部分のこだわりを伺って今回のご注文には反映しませんでした。
が!...ここから先が当社らしいところ。
時間を見て自分のスーツでこの仕様をパクって見ました。(これが上述した自分のスーツで試すということなんですが...)
職人白崎にお願いして、工場を説得すべく絵型で表現するとこんな感じです。

> 出来上がりは次回のお楽しみ

ご相談2
こちらは某IT企業社長Bさんからのご相談。(←実は上場予備軍!)
私も懇意にしているのですが、今回は職人白崎が外販時に伺ってきました。

B社長: 『白崎さん、袖ボタンが表から見えないで本切羽って出来る?』
白崎: 「???(何ですかそれ?)」
B社長: 『だから、ここがこうなっていて、ここにボタンがあれば見た目にスッキリでもお洒落でしょ。』
白崎: 「面白いですね。技術的にはここがこうならないと難しいですけど、アレンジを加え型紙を起こせば出来ると思います。約束は出来ませんけど出来るだけやってみますね。。。」
 ※:直接のお話は私は居合わせませんでしたので多少脚色があるかも知れません。

そして、社に戻り翌日白崎がこそこそ絵を描いているのを発見!

白崎: 『社長、面白いアイデアをお客さんに教えてもらいましたよ。早速やってみたいと思って型を書いてみました。』
私: 「へ〜っ、面白いね、やってみようよ。お客さん実験台にして良いの?」
白崎: 『お客様のご理解は頂いていますのでOKです。またもし縫製工場の方がダメなら自分が***すれば済みますから失敗することはないです。』
私: 「それなら、やってみよう!僕も次の自分のスーツに反映してみたいな。」

 ・・・と、こんな流れで次の絵型が完成!

これなら皆さんも分かりますよね。ご自身のスーツの袖を見ながらご覧下さい。
簡単にいうと、通常の本切羽でボタンホールが開いている部分を開けずにその裏側にボタンを付ける。
そして通常ボタンが付いている所にボタンホールを開ける。
ボタンを留めたとき、ボタンが袖の内側に出るような仕様です。

白崎が「もし縫製工場がダメなら自分が***すれば...」と言ったのは、今回はボタンホールをどこに開けるか、ボタンをどこに付けるかだけの問題なのでいざとなったら自分でボタンホールを手付けでやれば大丈夫という意味です。
(厳密に言うと、もうちょっと深い問題もありますが...)

そしてB社長の袖が完成!
今回は非常にうまく行きました!



左側が普通の袖、右がB社長の袖です。
比べてみるとボタンホールの穴とボタンの縫いつけた位置が普通の物と違うのが一目瞭然。
どうですか、ボタンを留めてもボタンが表から見えない。
スッキリしていますよね。

・・・と、こんな流れで時には自分のアイデアで、時にはお客様からアイデアを頂き背中を押して貰い、新しい仕様が完成していくのです。

上述2仕様は只今自分用のスーツでも試していますので近々実店舗に登場予定です。
もし量産化できたらオプション料いくらにしようかな?(←ちょっと意地悪?)