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オーダースーツのヨシムラ
お客様!いらっしゃ〜い!
 アナウンサーのスーツって? 
いや〜、連日暑い日が続きますね×××。
こう 暑いと仕事をする気にもなれないし、ここぞとばかりに鳴く蝉がうっとうしくてたまりません。

さて、そんな暑い最中ですが、今月は内勤仕事の中で暑さならどんな仕事より一番暑いと思われるTVアナウンサーからのご注文を紹介したいと思います。
ご登場いただくのは、とある地方都市の放送局に勤務しているKアナウンサー
最初のご注文は4月だったのですが、ご年齢が私に近いことや遠くからわざわざ東京店までお越しいただいたということもあり、急速に親しくなったお客さまです。

アナウンサーならではの暑さ対策や肉眼ではなくTVを通した見栄えの良いスーツとはどんなスーツか試行錯誤しましたのでぜひご覧下さい。
さて、突然ですが...
皆さんがもしご自身の身に仕事等で
TV取材を受けることがあったとしたら...
どんな準備をしますか?
取材内容のこともさることながら、いかに印象良く(TV受け良く)映るかを意識されるんじゃないでしょうか?一生にそう何度もあることではないですしね。

今回のご注文者であるアナウンサーのKさんから最初ご注文をいただいた時に、私は自分に置き換えのように考えてこんな提案しました。

1. 印象が命! 色は濃紺ベースで力強い印象を。
>>> 有名な逸話ですが、ジョンFケネディー(JFK)がニクソン大統領と大統領選を闘い、勝利した時に言われた勝因の一つに、ニクソン氏がグレーのスーツでTVに登場したのに対し、JFKは濃紺のスーツに赤のネクタイで力強さを印象づけることが出来たため、勝利したと言われています。
(時代は白黒TVが出だした頃で、TV演説が大統領選で戦略的に初めて行われたときです。濃紺が黒っぽくシャープに映ったのに対し、グレーは白黒モニターの色に近く印象が低く映りました。)
この逸話が脳裏にあったため、TVで力強く映るためには濃紺のスーツベスト!と思っていました。
(グレーも知的な印象が出ますので悪いと言っているわけではありません。)

2. 印象が命!! トレンド柄の生地で
>>> この夏で言えば、ちょっとキツメのストライプ柄でしょうか?
後ほど紹介するKさんの例で言えば、英アーサーハリソンのかなりキツメのストライプ柄をお勧めしました。
やはりTVに出るような人はトレンドはきちんとおさえお洒落でなくちゃ!

3. 暑さ対策も万全に
>>> 結婚式で主役をやられた方ならお分かりかと思いますが、照明ってかなり暑いですよね。。。
TVの仕事だと影を作ってはいけませんから色んな角度からたくさんの光源で照らします。
それ故、暑さ対策は大変です。TVに映っているとき汗を拭くわけにいきませんから。
だからこそ通気性の良い素材を。

etc...ということで、4月のファーストオーダーではこんなご提案をして、ご注文された内容はこんな感じでお伺いしました。
■ 1着目 ■ (特徴的なところだけ案内します。)
素 材 ・・・G6002(英Arthur Harrison社製)
2つ杢ミディアムグレーストライプ柄
画像のように生地としてはかなりはっきりとしたストライプが入った、この春夏のトレンド柄の素材です。
素材は2つ杢といってやや太めの糸でザックリと織った生地でこのため通気性が良く涼しいです。
(マニアの方が好む「3つ杢」は、2つ杢と比べ生地が厚くなりすぎゴロンゴロンします。)

基本デザイン・・・3つボタン上2つ掛け(ハイゴージB)
>>>今のトレンドだけで言えばやや流行に後れていますが、そこはKさんの真面目な性分のせいか...やや保守的です。
Vゾーンの深さは最近は狭いVゾーンは流行りませんので少し低めにしました。

腰ポケット・・・チェンジハッキング
>>>この辺は素材感(=英国製)とデザインを上手くマッチさせていますね。
スーツを正面からみてハッキリと強い印象を出せるのはハッキングポケットやチェンジポケットの良いところです。
ですが、果たしてアナウンサーとしてこれは画像に映るのかしら?
(立ってアナウンスするのかな?)

裏 地
>>>通気性による着心地UPも意識して裏地はキュプラです。
色目はココアベージュ(Z494-1)私はちょっと控え目すぎるかな?と思ったのですが。。。
...と、いった感じ。
■ 2着目 ■
素 材 ・・・英仏ドーメル社製濃紺地ウインドペーン柄
>>>2着目は紺の良さをアピールしようと言うことで濃紺ベースにしました。
ウインドペーンという格子柄ですが、若さがアピールできると思います。

基本デザイン・・・3つボタン中掛け(ハイゴージA)
>>>こちらはチェック柄(=若さをアピール)ということでちょっとトレンド色を強めにしました。
また仕立ての良さをアピールしたいため、襟のロール感はプレスを甘く掛けて、ふわっと襟を立たせるようにしました。
(仕上がりをお送りするときにペチャンコにならなければ良いのですが。。。)

裏 地
>>>こちらもやはりキュプラで。発色の綺麗なキュプラのブルー裏地にしました。...とはいっても、これがTVに出ることはないと思いますが。。。

その他:2着共通した問題
実はKさん、体型的に非常に仕立てが難しい方でした。
我々オーダースーツではお客さま毎に身体に合った体型補正を入れていますがKさんの場合は次の補正を加えました。

補正は無理して入れる必要はありませんので普通は下表ほど入れる必要はありませんが、Kさんの場合はちょっとお仕立てが難しい体型でたくさんの補正を要しました。
なで肩 これは言わずと知れた肩が下がっているなで肩の補正
反身(はんしん) 身体が後に反っている体型を反身といいます。ツキジワが出やすい体型です。
前肩 日本人に多い肩が前に向いている体型。
この体型の人が既製服を着るとスーツを肩の1点で支えてしまい肩こりの原因になったり、スーツを正面から見ると胸の上に変な皺が寄り易くなります。
胸厚体 胸囲のある人にはこういった補正をしないと苦しくなります。
ゴージカット 説明が難しいので割愛しますが、胸の厚い人は襟が浮き易いのでその補正です。
O脚  ご存じの通り
平尻 座り仕事がメインの30代以降の人に多い。簡単に言えばお尻の肉が薄くなってしまった人。
...といった感じでした。
珍しく専門的な体型補正についても書きましたが、アナウンサーとして、たとえ上半身だけ しかも正面だけしか画像に映らないとしてもの表内朱書き部分は補正を入れないと見た目に変なシワ不自然な凹凸が出てスーツが既製服ぽく見えてしまいます。
そこで敢えて表組してご紹介してみました。

さて、
初回のご注文は前述の通りでしたが、そんなKさんのスーツ出来上がりはどうだったでしょうか?
いつもなら、これで出来上がりを後編の「ありがとう」コーナーへ持ち越すのですが、実はは4月のご注文でして、スーツの方はとっくにお納めしています。
そこで早速出来上がりのご紹介!!

皆さん、どんな画像を期待しますか・・・?
>>> ま・さ・か...TVに映った画像?

実はKさんからはご丁寧にご自身がキャスターをしている番組(もちろん当社スーツを着ている姿で)を録画したDVDを頂いておりました。
ですから、物理的にはWebに出すことは可能なのですが、、、

う〜ん・・・、やっぱりダメでした×××
Kさんとしては顔を隠せば良いというような当初お話だったのですが、さすがに局の方に事前に相談したところ著作権の2次使用の問題があり、残念ながらWebでの画像使用は出来ませんでした。
(以前これでNステに登場したお客さまをWeb画像に出来なかったことがあります。)
今の時代いたしかたないですね。

そこで、Kさんから頂いた画像でご紹介します。
テレビ映りについては検証できませんが、雰囲気だけでもお分かりいただければと思います。
(上述のように画像使用がNGとなってしまい、困り果ててしまった私のため、Kさん自ら撮影していただきました。ありがとうございます。)
1着目:G6002
2着目:G6132

ご覧いただいていかがでしょうか?
左側が生地画像で見るとストライプがとてもキツク見える英国製の生地
右側がやや薄目の色合いですが格子柄のスーツ

そして、実際テレビを通じて見た私の感想はこんな感じでした。
「えっ、左のストライプがハッキリしたストライプ〜?右側は無地のスーツじゃないの〜?」
そうなんです。
私もビックリしたのですが、TVに柄としてハッキリ映るためには余程激しい柄でないと映らないのです。
う〜ん、これには私も勉強不足で反省です。
(逆に、当のKさんはもちろんこういったTV映りと実際の違いはよくご存じのようで、頂いたDVDも勉強不足の私のために下さったような物です。)

ですから、皆さんも、もしTVに出る機会があったら、是非『柄物は思いっきりハデに!!』お試し下さい。
私もまだ十分自信があるわけではありませんが、左のような生地の色柄は肉眼ではとても綺麗ですがTVでは無地に見えてしまい良くなくて、逆に右画像のような色柄が良いのではないでしょうか?
ところで、
話は大きく変わりますが、最近TVも通常の放送の他、ハイビジョンがありますよね。
走査線がずっと多くなり、よりクリアに見えるアレです。

そのことが話題になったときKさんがこんなことを言われていました。

Kさん
ハイビジョンは確かに凄いけれど、あれはアナウンサー泣かせというか、ハイビジョンの影響で色んな違いが出ているんですよ。
例えば、TVに出演する人は通常放送ならドウランといって白粉(おしろい)を塗りたくるけれど、ハイビジョンだとクリアー過ぎて、白粉を付けると塗った色の境目がハッキリ見えてかえって変になるんです。
だから、ハイビジョン用のドウランはきめが細かく、通常放送のものとは違うんですよ。寝不足の時だと、顔色の悪さが思いっきり出てしまい辛いんです×××。
」とか
他にも、ハイビジョンは映像が鮮明で細かな部分までよく見えて、迫ってくるような迫力があるので、アナウンサーのコメントも工夫が必要なんです。特に野球中継とか、アナウンサーが説明をしすぎると、画面から伝わってくるその場のいい雰囲気をぶちこわしてしまったりします。
画面で見える事は言わない、でもコメントしなくてはより伝わらない、そういう事を探すのはすごく難しいです。
」などなど...
ふ〜ん、全然知りませんでした。そんな裏事情があるとは。。。

いずれにしてもテレビに映るというのは微妙に肉眼とも違うし、また映すTVの種類によっても色々と特徴が違うんですね。
それぞれの業界にはそれぞれの常識があり、とても勉強になりました。

さて、
本稿はこれでお終いですが、実はスーツの仕上がりを既にご案内してしまったので次回はKさんの今回のご注文(紺ブレ)をご紹介したいと思います。

どんな内容かというと・・・(長くなるのでポイントだけ)

●アナウンサーと言っても結構地味な仕事が多いんです。
>>> Newsというのは突然飛び込んでくるものですし、現場から来るものです。ですから、アナウンサーの普段着は意外とラフな物も多いそうで、そんな環境下ではカジュアルにも合わせられる紺ブレはあると便利で助かるのだそうです。

●でもフォーマル感も欲しい
>>> とはいっても、急遽議員さんと会うとき上着はきちんとしていないと...ということでやはり紺ブレが良いようです。

アクセントが欲しい
>>> 30過ぎて紺ブレというと誰でも1着はありますよね。
そしてわざわざ当社で注文されるのだから。。。Something Specialを...ということでアウトポケットとコントラストを付けた水牛ボタンにこだわってみました。

こんな感じで次回お客さまありがと〜うをご用意したいと思います。
皆さんどうぞお楽しみに〜


後 記
こんなことを書くのは大変公私混同なのですが、本稿で紹介した放送界の仕事、特にハイビジョンに関し私には特別の思いがあります。
それは、私の義父(昨年他界)が以前NHKの技術畑でその開発に携わっていたからです。
家内に聞けば、義父は、若かりし頃はつくば学研都市の宇宙開発事業団へ出向し、衛星放送の開発に携わり、その後はNY支局に出向きハイビジョンを世界標準にするために腐心したとのこと。
現在のNHKの技術的バックボーンを作ったメンバーでした。
今回の原稿は、放送界で裏方に徹しながらも現在の我々に多大な貢献をした義父の足跡を何かの機会にご紹介できればと思い、1周忌の意図も込め作成しました。

Kさんには私個人のこういった事情もご理解いただき、色々と私に現場としてのアドバイスをして下さいました。
色々とお世話になりありがとうございました。