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(大阪編)三つ揃いにも一工夫
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街にはジングルベルの鐘の音もチラホラと聞こえ、いよいよ余すところ今年もあとひと月。 暖冬傾向とは言え、朝夕の冷え込みも一段と厳しくなってきました。 そのせいかここへ来て秋冬注目アイテムの三つ揃いが、寒さ対策(?)も兼ねてかかどうか、著しくご注文が増えてきましたので、今回はそんな三つ揃いを思いもかけなくご注文に至ったお客さまの一人をご紹介してみたいと思います。 それでは、まずは一番最初に頂いたメールをご紹介します。 |
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そして、お返事を差し上げた2〜3日経ったある日の夕方、営業の途中を抜け出してヤンエグ風(←いい方が古い!?)のNさんがご来店されました。 生地の方は、割合すんなり決まりましたので現物の生地を前に色々とデザインを含めたご相談が進みます。 その最中、ふと目に留まったのが店舗に入ってすぐのディスプレイ。 大阪店にご来店頂いた方にはお馴染みですが、そこには生地や靴、本などと共に三つ揃いの紺のスーツがディスプレイされています。 『これカッコイイですね〜』とのNさんの感想から、話は三つ揃いの話題となりました。 そして『既製品にはあまり三つ揃いは見かけないですよね??』とのNさんの問いかけから、なぜ既製品には三つ揃いが少ないのかという理由をご紹介しました。 それは >>> ■□■ 既製品に三つ揃いが少ない理由 ■□■ ・ベスト分のコストを価格に上乗せ出来ない >>>仮にスーツで50,000円の場合、ベスト付で53,000円には設定しにくいのが今の販売状況です。 ・ベストの生産工場が少ない >>>既製品は上着とパンツを別々の工場で作りますので、更にベストのような季節アイテムにはおいそれと生産体制の対応が出来にくいのです。 ・ベスト付は販売に手間が掛かる >>>上着とパンツがピッタリでも、ベストが合わないというケースが結構多いため、(特にお腹がせり出し気味の方)機会ロスとなる場合がある。(結果接客にも時間が掛かります) ・ベスト付のスーツは欲しいが、若い人達にとっては偉そうに見られるのではとの懸念も。。。 >>>よってトレンドとして仕掛けずらい。 ・ベスト付きという理由だけで売れない場合が出てくる。 >>>せっかく色や柄や価格が気に入ってもベスト付きは要らないというお客に対して対応に手間を取られる。 ・ベスト分の値引き(?) >>>↑のような場合、時として出てくるのが『ベストは要らないからその分値引きしてくれ』と言うお客のご要望。 結局売りたいがため値引きしてベストだけがバックヤードに山積みとの結果に。 ・トレンドが過ぎ去った場合の対応 >>>結局はベストを抜いて販売するハメに。 ...とこのような理由もあり、現在のような売れ筋のみ狙い打ちの既製品業界ではベストの販売は何かとリスクが多いため、三つ揃いがなかなか普及しずらいのです。 そのお陰か昔から三つ揃いはオーダーアイテムと言われてきた所以です。 (オーダーではこういった無駄が省けますので比較的安価にご提供できるのもそのせいですね。) (話が少しそれてしまいましたが...) Nさんは当初はまったく頭の片隅にもなかった三つ揃いをディスプレイのお陰かいたく気に入って頂いたのですが、やはりNさんとしては↑のように偉そうに見えるのではないか?と言う点に悩まれていました。 そこで、ひとまずデザインはスーツから変更して三つ揃いにすると言う前提で、最後生地を決め直すことになりました。 つまりNさんが懸念されている、あまり偉そうに見えないためにはどうするか?という点ですが、これって難しそうに思えて意外と簡単なんです。 ◆ポイントその1・・・目立つ色や柄はパスする。 >>>Nさん当初のスーツの候補生地はREDAやCANONICOのストライプが結構目立つ素材でしたが、ここは穏便に無地に近い方がよりベターとご提案しました。 ◆ポイントその2・・・デザインもシンプル is ベスト >>>三つ揃い自体がデザインを主張していますので、出来るだけ溶け込むような雰囲気にする。 ◆ポイントその3・・・サイズも当初の希望より、マイルドな数値で。 >>>Nさんは全体に細身でウエストシェイプもハッキリとがお好みのようでしたが、ここでもベストが強調されすぎないよう今回はやや押さえ気味にして頂きました。 ...とこのようなご提案も交えながら最終的にこのように決まりました。 |
■生地・・・G7104 DORMEUIL社グレー地にヘリンボーンの織り柄 >>>打って代わってオーセンティックな杉綾のグレー地です。 これだと生地もさほど主張せずどのデザインとも相性も良く、上品さにも溢れています。 ■基本デザイン・・・シングル2つ釦 ■ベスト前釦は6ボタン5掛け、尾錠付きで >>>Nさんのご希望でせめて若やいだテイストということで衿付きになりました。 >>>これからのトレンドとしてはやはり二つ釦!ベスト付の場合はなおさらです。 ・ハイゴージB ・サイドベンツ ・ハッキングポケット >>>チェンジポケットも!とのご意見もありましたが、押さえ目のこだわりでこのスタイルに。 >>>パンツ ワンタック >>>細身ながらもあえてタックを入れ、渡り巾にも余裕を持たせたシルエットです。 >>>グレーベースの生地にあえて茶色の艶なし釦を付けてみました。 そして、仕上がりはこのようになりました。 |
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出来上がりをご覧になりNさんも開口一番 『これなら会社で着ても問題なさそうですね、サイズもいままでの既製服と違いピッタリとしてる気がします』 『ただ、ベストはちょっと肩が凝りそう...』と三つ揃い初体験の感想を頂きました。 |
★☆★大阪SHOPMASTERより一言・・・★☆★ | |
今回のNさんのご注文で、気付かされたのはやはりビジネススーツ故、周りとの兼ね合いということでした。 そういえば前回ご紹介したTさんも、ビジネスシーンにボンタンパンツでは。。。と少しお悩みでした。 得意先などでの印象もさることながら、社内での立場などたかがスーツとはいえ案外デリケートなものだと、どんなスーツを着てもまったく関知されない業界に身を置く者としては今さらながらですが思い知らされました。 (ただあの画像のお陰で別のボンタンパンツのご注文もありましたので、その後音沙汰がありませんが大丈夫でしょうか?) |
★☆★お・ま・け・・・ベストの一口メモ★☆★ | |
ベストは日本語でチョッキと言う呼び名もあります。 これは語源の由来としては諸説ありますが、そのひとつに「直着」つまり直に肌に着ると言う意味があります。 それが示すように、サイズとしても見た目としても上着に比べユトリ量も少なくピタッと密着したサイズが好まれます。 そのため、作る方としては気を使いますが案外気を付けないといけないのがベスト丈つまり前丈の長さです。 私は「オッチャンベスト」と勝手に呼んでいますが、ベストの下からベルトのバックルがコンニチハと顔を覗かせているのは頂けません。 股上のサイズにもよりますが最初はジャストサイズでも、ベストは密着している為着用していると必ずシワが寄り、その為ひどい時には1.5〜2.0センチ近く短くなってしまいます。 ベストを作る場合はそれを見越して長めで!が 合い言葉です。 『ベストはベストサイズで着用しましょう〜!』(下手なオチでスイマセン。。。) |