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オーダースーツのヨシムラ
お客様!いらっしゃ〜い!
 本格的1930年代風スーツ(ノッチ衿) 
紳士服業界でのこの春夏トレンドはナロー(細身)な2Bスーツ
そろそろセレクトショップはじめ紳士服各店で春夏物スーツが出回るようになりましたが、実売ベースでは従来の3B(中掛け)とナロー2Bスーツが拮抗している状態です。
そんな業界状況ではありますが、ファッションはトレンドを上手に取り入れることもお洒落で大切ですが、時としてはトレンドに流されず自分の主義主張を通されることもまたファッションの楽しみ方。
今回ご登場のTさんは、トレンドも何のその、ご自身のスタイル(1930年代風)をかたくなに守り続けられている方です。
そこで今回は1930年代風スーツに的を絞ってWebでご紹介したいと思うのですが30年代風スーツは、当社でも以前お客様いらっしゃい・ありがとうのコラムでご紹介したことがあります。(画像参照)
ですが、当時はシングルのピーク衿(いわゆるダブルの衿)で一般的なビジネススーツには不向きなデザインでしたので読者の皆さんにとっては参考程度にしかならなかったと思いますが、今回はシングルスーツのノッチ衿(いわゆる普通のシングルの衿)ですから少し敷居が低くなりました。
是非スーツの楽しみ方の1つということでご覧ください。

以前ご紹介したもの
お客様いらっしゃ〜い どこかで見たぞ!?
お客様ありがとう 1930年代風スーツとは?

そして、今回のご注文は春夏物のサンプル帳をお送りした直後に頂いたこんなメールから始まります。
05.02.28 件名:オーダーシートパターン表
ヨシムラさん
お世話になります。以前1930年代風スーツをお願いしたTですが、過去に作っていただいた様なモノを希望しますが、新たにお願いしたい部分もございます。
メールにてアドバイス等を希望しますので、よろしくお願いします。体型変化はありません。(東京都大田区 T)
※:本メールはオーダーシートパターン表として送信された物で一部本文を省略・加筆しています。(文意は変えておりません)

★☆★東京SHOPMASTERより一言・・・★☆★
Tさんご無沙汰しています!その後30年代風スーツの調子はいかがですか?
※:Tさんは、前回Webでご紹介した札幌のMさんとは別人ですが、上述した過去のお客様いらっしゃい・ありがとうをご覧になり当店が1930年代風のスーツを仕立てられることをお知りになり、以前から30年代風スーツを当店にご注文されていたリピーターの方です。

でも、いきなりメールで仕様書と一緒にアドバイスを。。。と言われても困ってしまいます!!
私共もプロではありますが、歴史のピンポイントを絞ってそこのアドバイスを...と言われても。。。
・・・ということでこんなお返事を差し上げました。
05.02.28 件名:オーダーシートの送信ありがとうございました。
Tさん
こんにちは。オーダースーツのヨシムラ(吉村)です。
ここのところ気温の変化が激しい陽気が続きますがいかがお過ごしでしょうか?暫くご無沙汰しておりました。
さて、
先ほどはWebを通じてオーダーシートをお送りいただき有り難うございました。
サンプル帳が届いてから早速のオーダーシートを重ねてお礼申し上げます。
早速、ご依頼のお見積と仕様書のご確認をお送りいたします。
大切なご注文ですので念のためご確認ください。
  (以下一部省略)
仕様のご確認
4.生地番号 =G9210 >>> 素材はゼニア社のヘリテージ。
1930年代風の素材感を復元させるため同社が持つ1930年代当時の古文書に従って素材を選び、機織りしたもの。
ざっくりとした触感と、ノスタルジックな風合いが魅力の素材です。
30年代ファンのTさんにはお似合いの素材と思います。

5.基本デザイン = シングル3つボタン(中掛け)
>>> 選択肢がWebにはなかったため便宜的に中掛けにされているようですがこちらは前回同様第2ボタンを拝みボタンにしたピーク衿の3Bでよろしいですか?
※注釈:この時点ではもちろんノッチ衿とは思っておりませんでした...)
  (以下:ご注文の詳細は省略)
18.連絡事項 =お世話になります。過去に作っていただいた様なモノを希望しますが、新たにお願いしたい部分もございます。
メールにてアドバイス等を希望しますので、よろしくお願いします。体型変化はありません。

>>> う〜ん、う〜ん、、、 色々と考えてみたのですが、Tさんのお好みははっきりしていますのでこの分野においては私よりTさんの方が造詣が深いかと思います。
ですから、ご提案といわれましても私からはなかなか出てきません。
アレンジは考えますのでTさんのお考えからお聞かせいただけませんか?(質問を質問で返して申し訳ありません。)

その他:上述仕様書の中には反映させませんでしたが、前回やの他に脇尾錠×2ボタンフライ前立てコインポケットサスペンダーボタン腰Vカット懐中時計フック穴などを追加しています。
ご希望がございましたらお申し付けください。

以上
十分なご提案ができず申し訳ないのですが、まずは確認の方何卒よろしくお願いいたします。
また、ご不明の点は何なりとお申し付け頂ければ幸いです。ご相談有り難うございました。
オーダースーツのヨシムラ SHOPMASTER 吉村 雅隆

★☆★東京SHOPMASTERより一言・・・★☆★
・・・と、このような感じで最初はメールだけではよく分からなかったのですが、その後Tさんからイメージ画像()を頂いたり、数通のメールのやりとりをして、ようやく今回のご注文は次のような点がポイントであることが分かりました。

ポイント1:1930年代風スーツの特徴(デザイン面)■
>>> この時代は現代のスーツ文化の原型が作られた時代。
服飾評論家のアランフラッサー氏が「エレガンスの極致」と表したようにメンズファッションに大きな影響を及ぼした時代です。

外見的な特徴は、上着はタイトなシルエットと幅広の衿。トラウザーズは逆に深い股上とゆったりとしたシルエット。
昨今のナローなスーツと比べると全く正反対の位置付けです。

ポイント2:生地はゼニアのヘリテージ(素材面)■
>>> 今回のご注文はE ZEGNA社のヘリテージを使ったもの。
ヘリテージシリーズはゼニア社が1930年代当時に使っていた生地製造マニュアルをそのままに現代によみがえらせた物。
昨今の滑らかな柔らかい風合い中心の生地と比べると当時は紡績技術も今ほど高くありませんでしたから2プライ3プライの糸に代表されるように、太く、ザックリした重量感が特徴の生地が多く、今回のご注文の素材はまさに当時の時代背景さながらの素材です。

ポイント3:クラシコ2仕様(縫製面)■
>>> これは上述オーダーシート内にはなかったことですが、このご注文は最終的にはハンドメイド要素をふんだんに生かしたクラシコ2仕様にてお受けいたしました。
手縫いのボタンホールフラワーホールをはじめしっかりとした本バス毛芯etc...
1930年代のオーダースーツは、ハンドメイドが一般的でしたから縫製面でもクラシカルです。

上記が今回の大きなポイントですが、特筆すべきはスーツを仕立てる上で重要なポイント(素材・デザイン・縫製技術)その全てを1930年代風にまとめていることです。

『これで当時のスーツ風に出来なければ意味がない!!』といった感じですね。

そして、メールでのご相談は延々とお台場仕上げが良いか?それとも画像の雰囲気を出すため大見返しにした方が当時のイメージに近づくか?などと色々とやりとりをした結果、最終的には次のような内容になりました。

ディテールの詳細
1.生地は >>> 生地は予定通りのヘリテージ。ザックリとして涼しそう

2.基本デザイン >>> 衿幅の太〜い3つボタン(衿幅10.5センチ!
通常の衿幅はシングル3Bスーツですと8.5センチぐらいですから10.5は圧巻です。

3.シルエット >>> 1930年代風に上着は出来る限りタイト目に...ということでメールでご相談しながらTさんの体型としての限界ギリギリまで絞り込みました。
絞りすぎるとヒップ周りのベントが開きやすくなるのでヒップ周りはゆとりを持たせました。

4.クラシコ2仕様のディテール >>> ディテールはこんな感じです。
3-1:お台場仕立て ・・・ 最終的には重厚感の出る丸台場仕上げ
3-2:本バス芯 ・・・ 重厚感のある仕上がりに
3-3:手縫いのボタンホール ・・・ 機械縫いより美しい手縫い仕上げ
3-4:手縫いのフラワーホール・・・ 芯が入っているため一見して違いが分かります。
3-5:ネームタグ等 ・・・ この辺も全て手まつり
5.ベスト >>> ベストもご注文いただきました。
その際にはボタンホールの間に縦に懐中時計用のフック穴もお付けしました。懐中時計なんてこれまた1930年代風ですね。。。(画像は出来上がり時にご紹介します)

6.トラウザーズ >>> ボトムは全体にこれでもか!という位にゆったり目。一般的なサイズと比較するとこんな感じです。
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一般的なパンツ Tさんのご注文
 股上 25.0cm 28.0cm
 ワタリ幅  31.5cm 34.0cm
 ヒザ幅 25.0cm 31.0cm
 裾口幅 22.0cm 27.0cm
その他ボトムのディテールには
ボタンフライの前立て>>> ここまで手縫いで出来るか ただ今工場と交渉中!
サスペンダーボタン >>> ベルトループなしの仕様です。
腰部Vスリット入り >>> 腰の部分に切れ込みを入れます。


さてさて、
文章だけではなかなかイメージが付きにくいですが仕上がりはどんな風になるのでしょうか?
トレンドとは一線を画す1930年代風スーツ、次回楽しみですね!
それではまた !!