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スーツの裏側の色合わせ?
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鬱陶しい梅雨もそろそろ終盤に参りましたが、皆さんお元気に過ごしてますか? 6月は祝日のない月でしたし、7月も海の日まで休みナシですから今が夏休み前の一番の踏ん張りどころですね。 当店も7/4〜7/17日まで恒例の@セールを実施していることもあり、連日遅くまで皆頑張っています。 さて、 そんなこの夏最後の繁忙期を迎え、今月は@セールでお越しになったお客様からSさん他にご登場いただき、スーツと裏地、ステッチやパイピングの色をどのようにコーディネイトすると良いかご紹介したいと思います。 こういった部分はオーダーでしか決められないことですので皆さん是非参考にしてみて下さい。 それではまず最初はこんな問いかけから... |
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皆さんのスーツの裏側はどんな色合いですか?
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例えば、一番無難な紺のスーツで考えてみましょう。 紺のスーツだったら、基本はシンプルに同系色の紺ですよね。 既製服ですと余計なコストを掛けませんから、ちょうど画像のような感じでしょうか? 一方、 これに対して当店のオーダーでは折角のオーダーと言うこともあり、ここの部分にいくつかのアレンジを施しています。 それはポイントステッチという方法と、パイピングという方法。(そして今回は紙面の関係でご紹介できませんがD管止め) 簡単にそれぞれ紹介するとこんな感じです。 |
● ポイントステッチ >>> 表地と裏地の境目にアクセントとして入れるステッチをポイントステッチといいます。 これがないと解れてバラバラになるという種の縫い目ではなく、あくまでもアクセントとしてのステッチです。 当店ではこのステッチの色を生地や裏地の色に合わせて変えることでスーツを個性的に仕上げていきます。 |
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● パイピング(へりとり) >>> 一方、同じように表地と裏地の境目を今度は裏地素材を使って1本のテープにして、それで縫い代をくるむ方法をパイピング(ヘリとり)といいます。 こちらは、お台場仕上げでしか出来ませんが見た目にかなり豪華さが出ます。(今回は話が長くなるのでパイピングの色合わせについては割愛します。) |
ご覧いただくと一発で分かると思いますが、このポイントステッチとパイピングは最初に掲載したシンプルなスーツと比べると、スーツの内側を飾るとても良いアクセントになっていて、これ自体でコーディネイトされています。 さて、前置きが長くなりました。ここでようやくお客様のご登場です!! 今回ご登場のSさんは今回が2着目のリピーターさんです。 初めて仕立てられたスーツで、このポイントステッチがアクセントになることをお知りになり、今回はご自分で色んな色をお決めになろうとしているようです。 今回はご来店され、生地やデザインを決めた後、その晩こんなメールを頂きました。(普通はご来店時に全て決められるのですがSさんの場合は一晩じっくり考えてから正式発注される方です。) |
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★☆★東京SHOPMASTERより一言・・・★☆★ | |
色合わせの方は、↑画像のように生地の下地がチャコールグレーでストライプが青紫。 そして希望される裏地が茶色で、ポイントステッチがサックスブルー(水色)ですか〜....う〜ん、う〜ん、 お客様がここの部分の色をご自身で決めるのもオーダーっぽくて良いのだけれど、正直コーディネートとして表地と裏地、そしてポイントステッチが上手く合う色とは思えない取り合わせでした。 そこで、オーダー内容の確認メールをお送りする際、次の一文を付け加えてやんわりとご再考を促しました。 |
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すると、翌日Sさんの方からこんなメールを頂きました。 |
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★☆★東京SHOPMASTERより一言・・・★☆★ | |
Sさん!ご自身で色糸を使って試し縫いされるとは... 色のバランスってやってみないと分からないことが多いですからね。(私も苦しむと良くやります。) こうしてSさんは、最終的には下地のグレーに若干のコントラストを加えた明るいグレーの裏地にすることを思いつかれたようです。 素晴らしい!! 私も、これが一番のベストマッチだと思っていました!! ホントはこれを直接ご提案したかったのですが、Sさんはご自身で決めたがっていましたから自分の口からは敢えてご提案しなかった組み合わせなのです。 これならバッチリです。そこで早速メールをお入れしました。 |
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★☆★東京SHOPMASTERより一言・・・★☆★ | |
よしよし、これでバランスの取れた色合わせになりそうだぞ。。。 Sさんこれで了解してくれるかな? すると早速Sさんからお返事が.... |
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ふ〜っ、これで1件落着です。出来上がりが楽しみですね。 今回は生地の色と裏地の色、そしてポイントステッチの色やパイピングをうまくまとめてコーディネートに役立てようとしたSさんを例に挙げましたが、実はこの色合わせ これ以外にも色んな組み合わせの方法があります。 表地と裏地、そしてポイントステッチの3つをどう色合わせしたら良いか以下にまとめてみましたので皆さんも参考にしてみて下さい。 (パイピングやD管止めを使った色合わせについてはSさんの出来上がりの時にご紹介しますね。) |
■ 表地と裏地、ポイントステッチの色合わせの上手な方法 ■ | |||
1.一番シンプル(地味)な方法 これは生地と全く同じ同系色の裏地、そして同系色のポイントステッチという組み合わせ。 当店のお客様にはこういった色使いをされる方は殆どいらっしゃいませんが、それでも控えめが良いと言われる方には無難な方法です。 私としては少々つまらないです。(-_-;) |
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2.比較的まとまりやすい方法 派手な裏地と使うことになれていない人にとってはこれが一番簡単なコーディネート。 裏地を生地に対して同系色にして、ポイントステッチをストライプなどの柄に使っている色に合わせる方法。 派手ではないけれども「ちょいお洒落」な雰囲気になります。 |
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3.ちょっと上級者な色合わせ ↑よりちょっと上級テクなのが、裏地そのものを生地の柄色に合わせる方法。 生地のベース色に合わせるよりもストライプなどの柄色に合わせることで柄色を引き立て、一方で裏地の色が浮くのを抑えます。 そしてこの場合は、ポイントステッチやD管止めもこの柄色に合わせまとめるのが良いです。 Sさんも「裏地を紫紺にして...」とこれを検討されていましたが、ストライプの柄色(青紫)にピッタリくる裏地色がなかったため断念されましたね。 |
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4.季節感を取り入れる 色合わせにはもちろん季節感も大切です。 例えば、紺系の生地はエンジ色などの赤系の色もよく似合いますがどうしても裏地が暖色になるため秋冬物でよく似合います。(画像:右) 一方で、紺系はブルーやシルバーもよく似合いますが、こちらは寒色ですから春夏物の方がBETTERといえます。(画像:左) ちなみに左の画像(ブルーやシルバーの裏地)は3.としても色合わせできていますね。 |
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またこういった場合、ポイントステッチの色はどうするかというと、表地と裏地のコントラストがコーディネートの主役になるためポイントステッチは黒子になってもらい、表地か裏地どちらかの色に合わせて目立たせないようにしてあげると、全体がまとまります。 反面、ポイントステッチに全く別の色を入れてしまうとウルサクなってしまいます。 (Sさんが当初提案されたグレーの生地+茶色の裏地+サックスブルーのステッチがこの典型例になります。) |
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5. レアなケース 上記1〜4でたいていの場合全て収まりますが、それ意外で時々とてもお洒落なケースがあります。 それは、例えば <ポイントステッチを強調するケース> ・礼服やブラックスーツなどの時に生地、裏地とも黒にして、ポイントステッチだけ白にしてアクセントとするケース (画像のケースでは内ポケットのフラップの柄まで変化を持たせまとめています。) |
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・一見すると賑やかすぎるけれど高級感が出るケース 紺系にワインカラーの裏地はとても派手です。普通はそこでPSは控えめに入れるのですが、それを派手な山吹色にすると...これが絶妙な高級感を醸し出すことに。 ・一部のインポートに見られる裏地等の色をハウスカラーにしているケース これは英オズワルドボティーングとかポールスミスなどが最たる例ですが、オレンジ色の裏地やヴィヴィッドなストライプの柄裏地をハウスカラーにしているブランドも稀にあります。 これをオーダースーツに直すなら、スーツの裏地は全て1色に統一することも1つのアイデアかも知れません。(私は昨年仕立てたスーツは全てパープル系の裏地に統一しました。) 画像は以前ご紹介したオズワルドのスーツ!ここまで派手だとポイントステッチなんて不要です。 ...と、まぁ、全てを計算式のように一律に定義付けすることはできませんが、代表的なものだけまとめてみました。 皆さんいかがでしょうか? たかが裏地、たかがポイントステッチですが意外とこだわってみると奥が深く、うまく色を合わせが出来た時の喜びは、オーダーならでは...といった感じですよ。 皆さんも、お店の人とよく相談してみてくださいね。 それでは次号仕上がりをお楽しみに!! |