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ちょいこだわりの見せ所
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梅雨が明ければ早くもミンミンゼミの大合唱です。 うだるような灼熱の毎日にも関わらず、我々の業界では夏物セールが一段落すれば次の秋冬物の展開へと、さっさと話題は切り替わります。 (とは言えこの時期に冬物の肉厚フラノ地に触るのは、ホンマ商売柄とはいえキツイものがありますわ...) そして、お盆を過ぎますと店頭は徐々に秋物に彩られますが、肝心の着用となりますとまだまだ夏物の出番が続くのが現状です。 そんな春夏シーズンも終盤を迎え、セールも残すところあと3日となったある日「セールの案内をもらったので...」とご来店されたのは、リピーターでお馴染みのAさんです。 まずはこんな感じのやりとりでAさんとのお話が始まりました。 それではまず最初はこんな問いかけから... |
Aさん:
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いや暑いですね〜、この暑さもあってさすがにもうスーツは要らないんですけど... |
私: | そうですよねぇ〜、確かに夏物スーツは今年の3着で十分ですよね。 (Aさんはこの春3着既にご注文いただきました。) |
Aさん: | だけど、仕事兼用と言うことで何かオススメはないですか? |
私: | それではご存じのクールビズをイメージにおいて...と。 そうだ!ちょうど良い素材がありますのでジャケット主体で考えてみましょう! |
...というところで、おもむろに生地棚から引っ張り出してお勧めしたのが、こちらの2タイプです。 ■ ゼニア ピュアシルク・・・BL9250 >>> ご存じ今年のサンプルのTOPを飾っている特選素材です。 シルク100%の杉綾織りにビビッドなグリーンの色使いでも話題の人気商品です。 |
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■ ロロピアーナSPORTS FABRICS コットンベージュ・・・G9218 >>> 滑らかな表面感がコットン100%とは思えない程ハリに優れ、ドライ感も加わった贅沢な逸品です。 それもそのはずコットンの中では最高級ランクのエジプト綿使用です。 生地をご覧になったAさん曰く、「このZegnaの色使いが綺麗ですね〜グリーン系の生地ってなかなか見つからないから探していたんですよ。これがいいかな?」 「ついでにこちらのLoroも以前から気になっていたので...」と、嬉しいことに2着を奮発していただきました。 そして、続いてはデザインのご相談へと移ります。 |
Aさん:
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大まかには今まで通りで良いのですけど、、、 ただ今回は...自分の仕事は女性相手の仕事なので女性受けが良いように可愛さを出すようにして...え〜っと、後はお任せします |
私: | はぁっ? お任せ? あっ、そうですか、ありがとうございます! |
★☆★大阪SHOPMASTERより一言・・・★☆★ | |||||||||||||||||||
実は一番プレッシャーなのはこのおまかせしますの一言です。 寿司屋のカウンターで一度は言ってみたいですね、板さんにおまかせと... さて、現実へ戻って私に「おまかせ」はそう珍しくはないのですが、そんな時でもいざオーダーシートを前にして、ボールペン片手に目が宙をさまよう事もしばしばで、結構悩みます。 だからこそ、これで仕上がりをお客様が喜ばれるとそれこそ仕立屋冥利に尽きるというものなんですけどね。 それにしても今回のAさんのコンセプトは可愛くか... う〜っ、私にはこれほど似合わない言葉はありませんが、そこは永年とった杵柄、大丈夫ですお任せください。 まず肝心の可愛くですが、これを具体的に表現するには?と考えてみました。 ●サイズ >>> これは無理です、Aさんの場合今のサイズが完成されていますのでこれ以上はほとんどイジれません。 ●デザイン ・襟をレディースのようなクローバー襟に。 これじゃ、ちょっと女性的すぎるのでNG。 ・アウトポケットは、、、 これはこれで色々とバージョンはありますが、表地との相性もあり可愛いという程でもないし... ・水牛ボタン 悪くはないけれどこれも決定打にはなりません。 ...とこのようになかなか思うように筆が進みません。 そこで役に立つのが我がWebのバックナンバー集、かれこれ5年の集積は決してばかになりません。 あれこれとマウスを引っ張り回しながらヒントを探し、イメージを作り上げていきます。 おっとっと...ここで忘れてはならないのがお客様であるAさんのプロフィールです。簡単にご紹介しますと、こんなお方です。 ◆年 齢 >>> 30歳代半ばでしょうか。 ◆ご職業 >>> 自営業詳細は言えませんがお金持ちマダムをお相手する仕事(夜の仕事ではありません!) ◆お好み >>> 関西系のノリでシックよりはゴージャス系 ◆スーツ履歴 >>> トレンドの黒系は苦手で、イタリアっぽい雰囲気を好まれます。 私の頭脳にこれらの要素がインプットされ、デザイナーセンスもふりかけ、カタカタと音を立てて仕様がついに完成し始めました。 まず最初の1着目、ゼニアのシルクウールのジャケットです。
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※:画像は左側が普通の本切羽、右側が逆本切羽。 逆切羽は留めたときボタンが内側に付くため、表から見るとボタンが見えない分スッキリ見えます。 |
そして2着目はロロピアーナのスポーツファブリックのスーツです。
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★☆★大阪SHOPMASTERより一言・・・★☆★ | |||
「オイオイ ええかげんにせえ!これのどこが可愛いねん!」 ...と外野から声が飛んできそうですが、 すいません!やっぱりメンズの表側で可愛さを打ち出すのは至難の技でした。 そこで...可愛さの表現として悩んだ末、ひらめいたのが今回は裏仕様のポケットの玉縁と裏地のバランスにアクセントをおいて、可愛さを表現することです。 内ポケットの玉縁別地はクラシコでお馴染みの人気オプションですが、たかが細い玉縁とは言え、普段webでご紹介しているようなオーソドックスなタイプから始まり、特に近頃では富みにバラエティ化してきています。 さてさて、いったいどんな玉縁に仕上げたらよいものか?ここが一番の思案どころ。 プリント系に花柄・水玉と可愛い雰囲気がする生地を目の前にズラ〜っと並べ、あ〜でもない、こ 〜でもないとセール期間中にもかかわらず試行錯誤をしばし。 (相方の藤本には何やってんの!(>_ <)>)> と怒られる始末...) ようやく「よっしゃ、コレや!!」という新たなコラボが誕生しました。 私の頭脳にこれらの要素がインプットされ、デザイナーセンスもふりかけ、カタカタと音を立てて仕様がついに完成し始めました。 |
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はたして、どんなコラボなんでしょうか?? それは次回までのお楽しみです。 それでは皆さん、次回のありがとうをどうぞお楽しみに〜 |
□■□ お・ま・け 手持ちのスーツって何月まで着られるの?? □■□ | |
特にこの時期に多く頂く質問の一つに「このスーツは一体いつ頃ぐらいまで着られるのですか?」という質問があります。 それに対してお答えする場合、ポイントとなるファクターとしては以下のようなことが挙げられます。 □ 生地の厚さ加減 □ >>> 同じ夏物でもシャーリックのような粗く透けている素材と、モヘアやトロピカルのようなしっかりとした質感を持つ織り方では、その差は歴然。 同じ夏物でも生地の選択で着用期間にも大きく差が付きます。 □ 仕立て方 □ >>> 単に裏を背抜きか半裏かによっても左右されます。 このあたりは軽快感に影響があり、また着用感も違っています。 □ 地域差 □ >>> 縦に長い日本はもちろんですが、西日本だけでも温暖な地方とそうでない地方では差があります。 特に初夏の気候に差があるようですので、ご相談の際の結構重要なポイントです。 □ 個人差 □ >>> 案外多いのが汗かきで暑がりの方です。こういう方は1着の肉厚の夏物でオールシーズンという着方をされる場合があります。 ただ、真夏は見た目にも辛そうでお勧めするのも気を使います。 □ お仕事やオフィス環境 □ >>> 外回りの営業はスーツにとってもつらいもの。 上着を手に持つ場合はスーパー100'S系の素材はベトつき感が否めませんので、ドライ感のあるモヘアやざっくり感のある素材をお勧めしています。 □ 手持ちのワードローブとのバランス □ >>> 肉薄の秋物をお持ちでしたら、夏から秋へのバトンタッチはスムースにゆきます。 ....等々をお伺いした上でご案内させていただいております。 ただ、その年の気温など細かく上げればキリがありませんので、大ざっぱな結論としては私は『9月一杯は夏物で!』とお答えしています。 ご安心下さいね、ご購入頂いた夏物スーツの出番はまだまだ続きます。 |