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オーダースーツのヨシムラ
お客様!いらっしゃ〜い!
 真夜中のラブレター 
師走も25日も過ぎると街はクリスマスからお正月へめまぐるしく変わりますが、年の瀬の一番忙しい時期、皆さんいかがお過ごしでしょうか?
今年も一年大変お世話になりました。 <(_ _)>

さて、今月は2005年最後のお客様として仙台のEさんをご紹介したいと思います。
Eさんは当店では初めてのオーダーですが、何でも当サイトはほぼ全て読み尽くしてしまったと豪語するほどの当店のファンの方でしたが、何分にも初めてのオーダーということでのご期待と実際のご対応で色々と困惑させてしまいました。
今回はその辺の失敗談を含めご紹介したいと思います。

それではまずはEさんからのメールのご紹介(あまりに長いので一部省略します。)

05.11.17 件名:サービス企画当選番号0053
 はじめまして。仙台市在住のEと申します。

サービス企画当選のご連絡ありがとうございます。
2年前にヨシムラさんのHPを見つけて以来オーダー服に興味が湧いて、ほとんどのコンテンツを読み尽くし楽しませていただきました。
昨年のサービス企画のロロピアーナに応募しそびれたことを心底後悔しながら当選した方々の記事を涎を流しつつ拝見し、自分だったら・・とイメージを膨らませること丸一年、満を持して今回応募した次第です。

が、いざとなると
『あぁした方が・・、こんなのもイイな、できたらいいな♪』と。お忙しいところ何かとご面倒をお掛けするとは思いますが、色々と相談に乗っていただければうれしいです。

まず採寸についてですが、残念ながらヨシムラさんの店舗に行くことはできませんので、仙台の提携店での採寸でお願いします。
勤務場所が市内中心部なので、もし提携店が仙台中心街であれば平日でも都合がつくため比較的楽ですが、出来れば過去にヨシムラさんからの採寸依頼を受けた実績があり信頼できる店舗がいいなと思っていますので、隣市くらいなら出向くつもりでいます。
(以下一部省略)

さて、本題ですが、
デザインについて、、、アドバイスをお願いします!

1.基本的なデザインは『シングルトレンチ』 イメージはコレです。注:画像は著作権の関係で掲載できません。イラストで代替します。)
アクアスキュータムのウールのシングルトレンチです。
特に襟のデザインが気に入りました。
コージ位置、立ち上がりのロール感を含めた美しい形。
襟台が高めと言うのでしょうか?立体的な感じが最高です。
この通りにならないのは百も承知ですが、何とか近づけるようにお願いできますでしょうか。

で、なぜシングルトレンチかといいますと、 まず、この1年思い描いていたイメージのベースが昨年のロロピアーナの記事05.11寒くなりましたコートの季節ですにあった横浜市 Kさんのアルスターコートなのです。
元々、仕官コートのようなキリリとした男らしい格好良さが大好きです。
しかし、さすがに人様のデザインをそのままというのもどうかと・・・。

トレンチコートのダンディズム的雰囲気や凝ったデザインに憧れがありバーバリーで何年にも渡り何度も試着したのですが、その度に『似合わねぇ〜』と断念していました。

また、ここ数年さまざまなコートを試着した結果、自分に最も似合うのは『かっちりしたシングルチェスターコート』だということも分かってきました。

そんなこんなで、何か参考になるものをネットで探していたところイラストのコートを見つけたのです。
仕官コートの凛々しさ、トレンチのデティール的な面白さ、チェスターのスタンダード感、これらを併せ持つ感じがして気に入ったのでしょうね。

2.形(身体のライン、肩、胸、ウエスト)はチェスターライクに。
   肩 肩幅狭すぎず広すぎずカッチリと(気持ち広めになる?)
   胸 胸の厚さを美しく見せるブリテッシュなライン
  ウエスト 絞って、同じくブリテッシュなライン

もはや写真のコートそのものを作っていただきたい位の気持ちでいたのですが、(繰り返しますが、忠実に再現できないことは勿論承知しています)自分の中で何かが引っかかっていました。
イラストのコート、格好いいことはいいのですがどうにもユニセックス調。
『これ、たぶんスタイルのいい細身の人に似合うデザイン(ライン)だよな』

居ても立ってもいられません。確認しましょう。
この原稿を書いている途中ですが、徒歩圏内に三越があるので行ってきます!

〜 しばし外出... 〜

行ってきました。アクアスキュータム、少しですが取り扱ってました。
三越(デパート)なんて普段ぜんぜん行かないので知りませんでした。

例のコートの同デザインで素材違いのものが本日入荷したばかり!とのことで早速試着!!
・・・思ったとおり、ドラえもんにコートを着せたが如く見るも無残なむちむちプリンぶりで全く雰囲気が掴めず参考になりません。

ついでなので、あらためてシングルチェスターも着てみました。
・・似合います。胸からウエストのラインがキレイです。
店員さん曰く、
『胸の厚い方が着ると映えるブリティシュな〜。ウエストの絞り具合がブリテッシュ〜。』
ということで、ブリティッシュなラインを指定した訳ですが、確かに胸板を強調するようなラインは美しく、絞ったウエストはデブさ加減を緩和してくれるので自分に合っているようでした。

さらにバーバリーのトレンチコートを着てみました。
まぁ、相変わらず似合わないことは似合わないのですが、一つ気付いたことがあります。
それは『ずん胴な人がベルトでウエストを縛っても、あくまでずん胴である』ということ。
身体のラインにメリハリが無いとダメなんですね、トレンチって。
なぜ自分に似合わなかったのか、長年の謎が解けました。

でも、ちょっと致命的です。
1.基本的なデザインは『シングルトレンチ』としましたが、
ウエスト周りに余裕を持たせてベルトで縛って絞り感を出すというデザインでは、多分これと同じことが起こるのではないかと。
ということで、ウエストを最初から絞ってしまうチェスター的ラインを指定してみました。

そこでアドバイスをいただきたいのですが、ここまでのイメージをまとめますと

イラストのシングルトレンチをスタイリッシュな
シングルチェスターのボディにしたコート

となるのですが、これはデザイン的にどうでしょう。破綻していませんか?
特にウエストをベルトが意味ないくらい最初から絞ってしまうことが気がかりです。

あとは、
『襟、肩章、袖ベルト、??(肩から上胸にかけての布)などのデティールはなるべく再現、または、おまかせ。』です。
襟については、前述したように非常に気に入ったデザインなので何とかお願いします。
袖ベルトはステッチによると思われる凸凹感がありますが、これも素敵です。

オプションについては、
お台場仕様  キュプラ裏地 をつけようと思っています。
デザインがOKだとすると、トレンチですから装飾がつきますよね。
腰ベルトがオプションなのは分かるのですが、肩章や袖ベルトなどその他がどういう扱いになるのかお知らせください。

ボタン、ステッチ、裏地の色は思案中です。
定番や外しワザなどありましたらアドバイスしてください。

真夜中のラブレターのように長々と書きました。
仕事柄、仕様書のように書こうとも思いましたが、
感情的な方がニュアンスが伝わって面白いかな・・と。

良い物が出来ることを楽しみに。何卒、よろしくお願い致します。(仙台市 E)

★☆★ 東京SHOPMASTERより一言 ・ ・ ・ ★☆★
Eさん、楽しんでいますね〜。
わくわくしながらメールを書かれている姿、手に取るように分かります。
しっかし、メール長いな〜、これじゃお客さまいらっしゃ〜いコーナーの規定量(原稿ベースでA45〜6枚)にまとまらない!!
とはいえ、とても嬉しく、楽しく、メール対応している吉村でした。
そしてこんなお返事をいたしました。

05.11.17 件名:真夜中のラブレターありがとうございます。
Eさん
こんばんは、オーダースーツのヨシムラ(吉村)です。
今し方はご連絡をありがとうございました。
頂いたURLの画像やメール内容をざっと拝見しました。

う〜ん、なかなか格好いいですね。良いデザインの見本を見つけられたと思います。
私もついつい欲しくなってしまいました。

さて、ご懸念されているこのデザインで出来るか否か?
ですが、スミマセン、ちょっとお時間頂けますでしょうか?

ご指摘になられたように袖のベルト肩章肩当て等については正直、今回の工場で当社自身が依頼したことがないため多分出来るのでしょうけれど確認しないと何とも申し上げられないのです。
こちらの点ではご回答までもう数日お時間を下さい。

また、
Eさんは遠地にお住まいですので、採寸の点で提携店さんをご利用になるのが良いかと思いますが、こちらの情報については明日、改めてご案内いたします。

いずれにしても遠地からの初めてオーダーと言うことで色々不安な点などもあろうかと思いますが、お気軽にお問い合わせいただければ幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。

オーダースーツのヨシムラ
吉村株式会社 東京SHOPMASTER 吉 村 雅 隆

★☆★ 東京SHOPMASTERより一言 ・ ・ ・ ★☆★
う〜ん、、、肩章・肩当てですか...
こういった英国調のバーバリーやアクアスキュータムのトレンチコートって従来のイージーオーダーの工場では無理なんですよね...
もともと、こういったデザインのコートはバーバリーコットンをはじめとする綿素材が多いですから毛織物のコートではあまりないデザインでしたから...

・・・なんていうのがこれまでの逃げ口上でしたが、今回はフルオーダーの工場でお仕立てすると言うこともあり念のため工場に聞いてみたところ、
吉井工場長から甲高い声で『良いですよ!やってみましょう』とのお返事が----

ただし、工場も画像だけではなかなかイメージが沸かないらしく、何か参考になる現物がないか?との問い合わせが。
何か参考になる現物といわれても、ないから注文なんだよ!...と思い悩んでいたところ、
肩章・肩当て >>> トレンチコート >>> バーバリートレンチ
       >>> ンン?!我が家にあるじゃないですか!!

そうです!もうかれこれ20年前のものですが私が高校生時代に来ていたバーバリートレンチが !!
バーバリートレンチなら20年前でもデザイン的にはあまり変わっていないですし、何よりどんぴしゃのデザイン見本です。
(それにしても、高校時代にこんなのを着ている私って、やはり慶応ボーイ?)

いかがですか?
生地の質感は別にすれば、肩章・肩当ての雰囲気としてはバッチリですね。

こうして肩章・肩当てなどの型紙はバーバリートレンチを参考に作り、ようやく縫製ベースのバックボーンが整いました。

そこでEさんに「今度は採寸」ということで提携店での採寸をご案内し(メール通数が多いので割愛します)提携店に訪問していただいたところこんなメールが...
05.11.24 件名:仙台のEです。採寸に行って来ました。
吉村さん
 こんばんは、仙台のEです。
先程、提携店さんで採寸をしてきたのですが、ちょっと気になったことがあったので質問させていただいてよろしいでしょうか?

それは、、、 『コート用の寸法はスーツ用の採寸値から計算して設定するもの?
ということです。

採寸の際、ヨシムラさんから提携店さんに宛てたFAXを見たのですが、それには
『コートの丈と胴回りのゆとりについて聞いておいてください。
チェスターくらいで良いと思うのですが。。。』とありました。

でも、コート用の採寸は丈についてだけやって他は一切やらなかったんですよね。

見本のチェスターコートを着て行ったのですが、そのシルエットは胴回りにかなりゆとりのある、とても一般的(オッチャン的?)なものでした。

見本服を絞ってみたりして絞り具合と着心地のバランスの妥協点を探ったりするのかな〜なんて想像してましたのでちょっと拍子抜けだったのですが、こういうものなんだろうと思い店を後にしました。

とはいえ、帰り道テクテク歩きながら考えているうちに『あの見本服に添ったデータを送られたら、それはそれはイメージとかけ離れたものが出来上がってくるよなぁ〜〜??
と不安になってしまいまして。

ん?そういえば、過去のメールで

< デザイン一般について >
頂いた画像にもう少し絞りを加え、イメージとしては胴回りはチェスターコート位の絞りとのこと、了解しました。
生地の風合いでも変わりますし、実際のEさんのサイズで出来るか出来ないか、どこまで絞れるかが変わりますが出来るだけ最初からウエストを絞ったパターンにしたいと思いますので採寸の際にはできるだけお腹周りをタイトにしたサイズでお計りするよう提携店に申し伝えます。

・・・と吉村さんは言われていましたが...すみませんが、迷える子羊の不安を取り除いてやっていただけますでしょうか。
よろしくお願いいたします。

★☆★ 東京SHOPMASTERより一言 ・ ・ ・ ★☆★
ふ〜っ、一難去ってまた一難か、、、
どんな仕事もそんな簡単には出来ませんよね。コツコツした地道な活動が一番です。

さて、Eさんのお持ちになった不安ですが、簡単に言うとこんなことでしょう。

当店へは自分のイメージを伝えた。吉村(個人)は理解した。
しかし、提携店(他の店員)は理解していないようだ。
念のため(吉村へ)確認した方が良さそうだ。

...確かにこういったことは、仮に当店の実店舗であっても、メール対応をした私と直接ご注文をお受けする者とが違う場合、時としてこういった齟齬(くいちがい)は起こり得ます。

今回はそれが、メール相談者(私:吉村) 提携店担当(司茂) 提携店となってしまい、更にワンクッション多くなってしまったため、微妙なニュアンスが伝わらなかったのです。
Eさん、本当に申し訳ありません。

そこでEさんへはお詫びをすると共にこのままではオーダースーツのヨシムラとしてのサービスが出来ない!ということで、大変申し訳ないのですが再度日程を調整して提携店へ再訪問していただけないか、Eさんに打診しました。
もちろん、不安になっていた所をクリアにするためです。

そしてこれにはEさんもご快諾頂けてこれでようやく不安が払拭できました。
オーダー物は何でもそうだと思いますが初めてですと特にこういった不安がつきまといますから、私としても出来る限りこういった物は取り除きたいのです。

さて、ようやくこれでクリアとなったコート、さてどんな仕上がりになったでしょうか?
次回コートの仕上がりをご紹介します!
肩章・肩当て等々楽しみにしていて下さい。

それでは皆さん、良いお年をお迎え下さい。今年一年大変お世話になりました。