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〜大阪編〜 こんなコートも素敵かな?
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今年の12月はいずこも例年にない厳しい寒さのようで、比較的穏やかな関西も一足早く厳寒モード、寝床を離れるのがつらい毎日です。 例年ですと、関西では本格的なコートの出番は年明けで、年内はコートは着ないと誇らしげにおっしゃる方もいる位なのに今年はどうしてしまったんでしょうね。
それでは、ご登場いただくのはのお客さまは関西にお住まいのHさん。 リピーター歴3年にして、スーツ、ジャケットはもとよりカシミアのコートまで網羅していただいているお客さまです。 Hさんは最近はメールでご注文が完結するケースが多く、今回もメールでのご注文でしたので、メール担当の一野君の力量を問われる出番となりました。 それではまず最初に、Hさんのメールからご紹介を... |
(※作者注:先に別途スーツのご注文を頂いており その際のオーダーシートパターン表の連絡事項欄へお書き添え頂きました。今回のコートの内容からは少しそれるため、本文はあえて省略させて頂きました。)
う〜ん、、、これを簡単なご質問と捉えるかどうかですが、結構奥深いお問い合せです。 今や巷にはスーツの上に着るコートとカジュアルに着るコートが混在しています。 本来ならカジュアルの代表とも言えるダッフルなども、スーツの上へ羽織るコートとしてすっかり市民権を得ている始末、TPOもなんのその、文字通りなんでもありの有様です。 デザインではなく、素材でコートを分類してみても ●ウール ● コットン ●皮 ●ダウン ● 新合繊 ・・・と、このように分類され、そこから更にウールですと、カシミア、アンゴラやあるいはデザインでチェスターありダッフルありとそれぞれへと枝分かれしてゆきます。 ドレスとカジュアルの分類さえ意味をなさない現状をどう憂うべきか? この辺りを頭に叩き込んで一野君もご返事に悩みました。 そして、Hさんへは一野君からこのようなご案内をしました。
・・・と、このように至極簡単なご案内(Hさんスイマセンでした...)の後、ハリスツイードのサンプルをご覧頂いたHさんより早速ご返事を頂きました。 ここはやはりコンサルティングセールスの腕の見せ所! 一野君もかなりお客さまのお好みとデザインとのバランスもアドバイス出来るようになり、早速Hさんへこのようなご連絡をしました。 ※以下、お送りしたメールより、ポイント部分のみを抜粋してご紹介いたします。 ●基本デザインについて
●着丈について ・・・着丈に関しては、3/4丈の長さをご希望とのこと。 Hさんのご身長から推測いたしますとちょうど着丈97cmぐらいが膝上ぐらいの長さになろうかと思いますがいかがでしょうか? もしお手持ちのコートで丁度良い長さのコートがありましたらそのコートを長さをお計りいただきご連絡いただくか、お手数ですがお送りいただきましたら私どもで採寸させていただきます。 (もしご自分でお計りになられる場合はコートをハンガーに掛けていただき、コートの後ろの衿元からそのまま下へお計り下さい。)
前回の新着レポートコートについてにもそうありますように、まずは一番大切なのはコート丈です。 コート丈によって全体のイメージが作られると言っても過言ではありませんので、決しておろそかには出来ません。 3/4丈が話題のようにトレンドは短くてスリムで、このあたりは常にスーツ動向と連動しています。 ただ、スーツですと裾口が22cmでとか、股下が76cmとかご自身のサイズがお分かりの方が多いのですが、さすがにコートは何cmでと予めご指定頂く事は希です。 ●お台場仕立てについて ・・・ハリスという厚手の生地ですので、お台場をつけますとモコモコ感があり、またコートの中に着られるインナーとの摩擦が懸念されます。 ここは、お台場を付けない方が無難かと思いますが、いかがでしょうか?
そして、最終的にHさんはこのように決められたようです。 |
えっ??セットインスリーブ(付け袖)に袖口がタブ?...と少々驚いてしまいました。 ...と言うのも、通常セットインスリーブのコートの場合、その形状からスーツと同じように袖口にはボタンが付きます。 つまり、2枚の生地が筒状に縫い合わされていますので袖の後ろ側に縫い目があり、それに添いボタンで留まっているのはスーツでもお馴染みの仕立て方法です。 それに対してラグランスリーブは、同じ2枚袖でも袖を斜めに付け、袖の真ん中に縫い目が走っていますのでそれに挟み込むようにタブが付きます。 つまり袖の真ん中に縫い目がないとタブは付かない、付けられない形状になっています。 余談ですが、150年ほど前にラグランという将軍が、クリミア戦争の戦場でこの袖を発明した為にこの名前が付いたようです。 そう言えば、同じくカーディガン伯爵がカーディガンを発明したのも同じクリミア戦争の戦場でした。 同じ戦場で2つのファッションが生まれるとはなかなか面白いですね〜。 さあ〜、どうする一野君?お客さまの要望と技術的な難問にどう折り合いをつけるか? そして、一野君からHさんへのご返事はというと....
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おやおや一野君、結構ストレートにお断りっぽい内容となってしまっていましたね。 ただ、Hさんもこのあたりはこだわりのポイントのようで、その後頂いたメールでは |
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...とのご意向です。 なるほどHさんのおっしゃるのももっともです。 この素材ゆえ ここは徹底してカジュアルにこだわるのは私も賛成。 そこで、この上は一野君に代わって私がお相手をと、(実は彼は休みでした) 『見た目と技術的な面とを併せてベルトタイプのデザインなどで私なりに頭を捻ってみたいと思いますので、よろしければお任せいただけないでしょうか?』 と申し出てみたところ、Hさんにも快くOKいただけました。
ふ〜っ、ようやくこれでHさんのご注文が確定いたしました。 コートというのはスーツと違い、お客様もオーダーされる機会も少ないためか、漠然とした全体のイメージはお持ちでも、ひとつひとつのディテールまでは普段余り目にしない物なだけに分かりにくいものですね。 それ故、私達ご注文を受ける側もお客さまの要望を聞きつつ、うまくリードするのはなかなか難しいです。 一野君もお客さまに揉まれ育てられ、いつの日か「オーダーするならぜひ一野さんに相談を」とのお客さまが増えるよう、ねじりはち巻きで切磋琢磨の毎日です。 是非頑張って貰いたい物ですね。 ...というところで、今月のいらっしゃ〜いはオシマイです。 皆さんも、次回の出来上がりをどうぞお楽しみに〜 |