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オーダースーツのヨシムラ
お客様!いらっしゃ〜い!
 〜大阪編〜 裏地と刺繍のコラボです! 
梅雨の間はジメジメと鬱陶しいし、ワールドカップは日本抜きで盛り上がってるしとイマイチ気分も晴れませんね×××。
とは言え、恒例の夏のセールも間近に迫り、否応無しにスタッフのテンションも上がってきている今日この頃です。

それはさておき、今まで「お客さまいらっしゃ〜いコーナー」ではたくさんのお客さまからの色々なご要望にお応えしてきました。
例えばデザインや素材系、あるいは近頃のクールビズを始めとするスタイルのご提案・・・etc等々お役に立てたのは数限りないと自負いたしております!
(偉そうに言うな!って? もちろんこれも一重にお客様のご協力と感謝致しております)

ただ、久しく個性的なデザインのご相談はご紹介していなかったのですが、そんなところへ今回は久し振りにかつての原点とも呼べるようなこんなの出来るかな?スタイルのご注文が舞い込んできました。
よっしゃ!腕の奮いどころが来たようで!

...と言うところで、今回はリピーターのIさんのオーダーをご紹介したいと思います。
残された最後の聖域とも呼べるような、外注加工を含んだご注文になりました。

そもそもご注文を頂いた時期というのが今から約1ヶ月半ほど前で、ご来店された際にIさんからは以下のような内容でご依頼頂きました。


生地はロロピアーナのしっとりした光沢感溢れる、黒地シャドウストライプ(品番:G3158)

>>>春夏物にしては肉感も豊かですので、今回はベストを付けて三つ揃いとなりました。

基本デザインはトレンドを意識して2ツボタンで

>>>ついでに衿巾も細めの8センチです。

袖口は逆本切羽で

>>>WEBでの初登場が2年前とあって近頃はやや陰が薄くなりましたが、「ヨシムラらしいこだわり」との声も高い、立派なオリジナル仕様のひとつです。
...と、ここまでのオーダー内容を見ると、ほんの少し遊び心も取り入れたスーツ程度の感覚でしたが、ここから先になかなか手強いハードルが待ちかまえていました。
いったいどんなハードルだったのか?早速ご案内いたしますと...

■ 柄裏でもこんなのありますか? ・・・■
スーツへのこだわりの1つとして裏地を挙げられる方が多いですが、Iさんのご希望はなんとパープルのペイズリー柄!

お〜っなんとカッコイイですね〜とは言ったものの、そんな裏地はあいにく持ち合わせていません。
そこはないとは言えないのが生地屋の意地です、ひとまずお時間を頂きお待ち頂く事に。
...とは言え、確たる自信があった訳ではありませんでしたので、ここはIさんにも心当たりを探して下さいとお願いする羽目になりました。

多分皆さんもご存じかと思いますが、ペーズリーとは本来インドのカシミール地方原産の柄で、日本では勾玉模様と呼ばれるオリエンタルムード溢れる柄行です。
「エトロ」ブランドのバッグなどでも結構お馴染みですね。

ちなみに、レディースのファッションでも、数年前このペーズリー柄の洋服や小物が爆発的にヒットしたことが記憶にまだ新しいですが、どうもこの柄がアメーバなどの微生物に見えてしまうのは私だけでしょうか??

★☆★ 大阪SHOPMASTERより一言・・・ ★☆★

裏地のバラエティさでは同業の中でも秀でている方と自負していますが、さすがに紫のペーズリーの裏地となりますと在庫はおろか、果たして存在さえするのやら。
心当たりの得意先にも色々と照会しましたが、色好い返事はもらえず、万事休す。
「そうや!レディースの生地にならペイズリーも色々とあるかも!」と、表地での代案が思い浮かんだのも束の間。
あいにく紫色のペーズリー柄というドンピシャな物は見つからず、仕入先も含めこちらも望み薄で八方ふさがりでした。

そんな中、「裏地が手に入りました!」とIさんからTELを頂いたのが約2週間後。
早速ご持参いただいた裏地は、なるほど〜見た目にも鮮やかな紫色のペーズリー模様でした。
入手の経路をお尋ねしてみると、ご友人がアパレル関係におられ、そのツテでとのこと。
本来は表地、つまり某レディスブランド用のプリントで、よ〜く見ればブランドロゴが見え隠れしています。
ギャルブランドとしてはその名も知れ渡るEがつくブランドで、「さすがにEらしい色使いやなぁ〜」とはレディース担当藤本の見立てです。

ふぅ〜、裏地も無事手に入りIさんと最終の打ち合わせを...
と、ここでIさんから更なる「こんなの出来るかな?」とばかり難問?のお願いが...
■ こんな仕様とか、って出来ますか???■
Iさんがおっしゃるには、右側のラペルに刺繍を入れたいとのこと。
しかも、柄はわざわざご持参頂いたこちらのネクタイの柄でとのことです。

こちらも某ブランドのネクタイですが、この柄をしかも黒糸でスーツの方のラペル(襟)に刺繍して欲しいとのご希望には私も少々動揺しました。
黒地に黒糸ですから別段目立つわけではないのですが、角度の具合で鮮やかに浮き上がる効果を狙っての作戦なんだそうです。

こういった仕様というのはレディスファッションの世界では希に見られるようなイメージなんでしょうが、なぜかスペインの闘牛士のボレロジャケットのイメージを思い出してしまいました。

ただ、衿に刺繍など後にも先にもないでしょうから、出来るかどうかこちらも努力目標と言うことで、Iさんにご納得(??)頂きました。

★☆★ 大阪SHOPMASTERより一言・・・ ★☆★

先回は裏地屋さんでしたが、今回は刺繍屋さんです。(トホホ...)
手当たり次第にWebから電話帳からと当たり、ようやく紹介の紹介で一軒の刺繍屋さんに辿り着きました。
「本来は100枚単位からのご注文なんですけど〜」と渋る刺繍屋さんをなんとか口説き落とし、ようやく1着のみ限定で作業して貰うこととなりました。
(今現在は工場で裁断作業中ですので衿は持ち込んではいませんが、果たして大丈夫かな...)

それにしてもクールビズの余波か、今やドレスコードも様々ですね。
今回のIさんもビジネスシーンでの着用だそうですよ。

ちなみに、刺繍を入れる具体的な作業としては・・・

生地の裁断

衿部分を持ち込む

刺繍を入れる

縫製仕上げ
...と、このようになります。
工場と外注先とで作業が分かれますので日数も掛かりますが、幸いなことに生地も肉厚。
おまけにIさんも秋までにとのご希望なので、ここはじっくりとお仕立てに取り組みたいと思います。

久し振りにどんな仕上がりになるのか?ちょっと忘れた頃の仕立て上がりとなりそうですが楽しみです。

★☆ 一口メモ・・・ ☆★

スーツに入れるネームも一種の刺繍ですが、こちらはネーム入れ専用のミシンで入れます。
ネーム入れは日本独特の職人芸で(欧米にはありません)、着る物に名前を入れるのは紋付きの家紋が転用したのではとも言われています。
元々はオーダーの職人の手慰みで入れたようですが、漢字の曲線や流れるような書体など、細かな指先の動きひとつで見る見るうちに字体が完成してゆくのは、熟練した職人技そのもので一見の価値ありです。
ただ、ご多分に漏れず、いまや熟練した職人さんは年々稀少で、誰にでも簡単に操作出来るコンピューターミシンにその座をとって代わられようとしています。
....とは言え、ローマ字はともかく、コンピューターの漢字は画一的で味気なく、業界でも決して評判も良くはないのですが、なにぶん取って代わるべきものがないだけに、ゆくゆくはどちら様もご辛抱されるしかないようです。

こちらはちなみに職人さんの手仕事です。
流れるような字体はいかがですか...